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医療安全調は責任追及の役割を持つのか

 シンポジウム「日本の医療をよりよくするために〜医療の責任・患者の責任・国の責任」が7月5日、東京都千代田区で開かれた。日本の医療の現状とあるべき姿について、医師や法律家、ジャーナリストなど多様なメンバーが、5時間にわたって議論を戦わせた。

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 基調講演T「よりよい医療のために」は、主催の特定非営利活動法人(NPO法人)「医療と法律研究協会」協会長で日本心臓血圧研究振興会理事長の細田瑳一氏。続いて東京医科歯科大名誉教授の岡嶋道夫氏が基調講演U「ドイツ審判制度についての医療論理」、弁護士の平沼高明氏が基調講演V「医の論理と法の論理」を行った。

 休憩を挟んで行われた討論はまず、厚生労働省の死因究明制度に関する第三次試案がテーマとなった。
日本医師会常任理事の今村定臣氏は次のように賛意を示す。
 「基本的には第三次試案に賛成。不幸にして患者さんがお亡くなりになったとき、医療提供者として医療の内容についてどれだけ透明性のある説明をできるかが大切。医師・患者間の信頼関係を最後まで保つためには、死因究明制度は必要なもの。今回の試案では、医療安全調査委員会には患者の立場を代表する方も参加されることになっている。医療の側に置かれた中立的な機関としての調査委員会からご遺族に説明ができるという意味で、医療と患者・患者家族との信頼関係をより強いものにするはず」
 日本病院会副会長の大井利夫氏は、「治療が不幸な結果に終わったとき、医療者は医療的な責任は取らなければならない。しかし、その多くは技術の限界に起因する超法規的なものであって、結果責任のみを取り上げて法的な責任を問う最近の風潮には強い違和感を覚える」と主張。その上で、「医学的に死亡原因を究明するという第三次試案には原則賛成」と述べた。さらに「ただし、あくまでも医学的、科学的に究明するためということが前提。専門家以外が調査チームに加わることはふさわしくない。個人の責任追及を目的としていない以上、法曹界の委員を加えることは適切ではない」とクギを刺した。

 全日本病院協会常任理事の飯田修平氏は、「目的には賛成だが枠組みには反対」。「目的の条文と、そこで示される枠組みが全然違っている。枠組みには責任追及の要素が大きく含まれており、そうであればきちんとしたデータが出ないことは自明だ」
 大森医師会副会長の金子則彦氏は、「まだまだいろいろな問題が指摘されているのは知っているが、まずスタートさせることが肝要。その上で、『ミスがない』と確信しているのであれば、堂々とそれを主張する矜持(きょうじ)を持つべきだ」と訴えた。

 患者の立場から、ささえあい医療人権センター理事長の辻本好子氏は、「裁判で日本の医療が良くなるとは思えない。その意味で第三次試案には賛成。さらに、患者の自律を支援する仕組みとしても評価できる」との意見。
 一方、報道キャスターの町亞聖氏は、「第三次試案がつぶれてしまえば、これまでと同様、警察による捜査と、患者が裁判に訴えるという形が続くことになる。それでいいのか。前向きな、建設的な議論を期待している」と述べた。

 議論は、責任追及の要素が委員会にあるのかないのか、が一つの焦点となった。病院団体の関係者はおおむね、「医学的な原因究明が第一義で、責任追及は別の枠組みでやるべき」との意見。一方、日医や患者は「透明性、中立性を担保するために、専門家以外が加わるのは是認。まず始めることが重要」との立場だった。
 福島県立大野病院事件や都立広尾病院事件などで、病院関係者の捜査機関や司法に対する不信感は相当根強いようだ。そのことが、それぞれの立場に大きく影響しているように見えた。


更新:2008/07/07 21:04   キャリアブレイン


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