2008年05月19日 (月)おはようコラム「始動するアフリカ軍」

(阿部キャスター)
アメリカ軍は、アフリカでの軍事作戦を専門的に行うアフリカ軍司令部を創設し、
本格的な活動を始めています。アフリカを重視するアメリカの狙いなどについて、
秋元千明解説委員に聞きます。

Q1:まず、アフリカ軍というのはどのようなものか?

k080519_01.jpg


A1:世界中で活動するアメリカ軍は、例えば、アジア太平洋地域を受け持つ太平洋軍、
中近東地域を受け持つ中央軍などと、世界を6つの担当地域に分けて活動している。
アフリカ軍司令部はエジプトを除くアフリカ全域を担当することになる。これに伴っ
て、これまで主にヨーロッパで活動していた部隊の一部が今後はアフリカで活動する
ことになる。

Q2:なぜ、アフリカ軍が創設されたのか?

A2:第一にテロとの戦いだ。国際テログループの拠点が、ソマリアを中心としたいわゆ
るアフリカの角と呼ばれる地域から、アフリカ内陸部に拡大する傾向がある。そのた
め、アメリカ軍が北アフリカ諸国の軍隊を訓練し、国境や沿岸の警備を強化する計画
が進んでいる。もう一つの狙いは、天然資源、特に石油の確保だ。アメリカは輸入す
る石油の15パーセントをすでにナイジェリアを中心としたギニア湾岸諸国に依存して
いて、2015年にはその依存率が25パーセントにまで拡大するとみられている。これは
現在のペルシャ湾岸諸国への依存率とほぼ同じだ。資源を安定的に確保しようという
狙いだ。つまり、アフリカ諸国を支援することによって、現地でのアメリカの影響力
を高め、アメリカの権益を確保することにアフリカ軍の活動の重点があると言える。

k080519_02.jpg


Q3:アフリカ諸国からは、歓迎されているのか?

A3:必ずしも歓迎されていない。今年中に司令部をアフリカに置く計画だが、多くの
国々が受け入れに消極的だ。その理由は、アフリカを舞台にした大国同士の資源の争
奪戦に巻き込まれることへの警戒心があるためだ。そして、その争奪戦の相手国の筆
頭は中国だ。中国は輸入する石油の4分の1をすでにアフリカに依存しているとも言
われ、アフリカ諸国に手厚い経済支援や復興支援を行って、影響力の拡大を進めてい
る。人権抑圧で国際社会から孤立しているスーダンやジンバブエに対してさえ、中国
は支援していると言われる。つまり、アフリカ軍の活動の背景には、アフリカに触手
を伸ばす中国を牽制する狙いがあることは間違いない。このような中東以外に石油資
源を求める大国同士の争いはいまやアフリカだけでなく、中南米や氷の融けた北極海
など世界中で始まっており、今後、ますます激しさを増すことになるだろう。  

投稿者:秋元 千明 | 投稿時間:08:23

ページの一番上へ▲