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【昭和正論座】東大教授・西義之 昭和48年8月10日掲載 (2/4ページ)

2008.7.6 10:14

 ≪私も「殺す側」に編入?≫

 ところが何カ月かして、本多勝一氏から雑誌が送られてきて、そのなかに私の右の短文がこっぴどくやっつけられてあった。私は本多氏の書いたものは全く読んでいなかったが、なんでもある外人牧師さんと氏は同じようなテーマで大論争をしたことがあるのを、あとでひとに教えられた。

 そしてこれもひとに教えられたが、私をやっつけた文章は、のち氏の『殺す側の論理』のなかにはいっているそうである。私もついに「殺す側」に編入させられてしまったものらしい。氏の論理は、要するに「こんなこと書くと喜ぶのはだれであろうか? ニクソンである」というわけで、アメリカ人の原爆使用の心理はベトナム皆殺しの心理と共通し、こんなことを書くことによってアメリカ帝国主義に加担するのはけしからんというふうな趣旨であった。

 この論理はいまでも死滅していない。つい数カ月前、インドのインディラ首相が「アメリカはアジアの国だから原爆を落したのだ」と、本多氏を欣喜(きんき)せしめるような発言をして、アメリカで大きな反響をよびおこしたと新聞は伝えた。どのような機会の、どんな真意での発言なのか判らないので批評はできないし、アメリカでの反響もどういう種類のものであったか、私には判らない。

 ≪帝国主義者と決めつけ≫

 一国の政策決定には、私たちの知ることのできないほどの量の要因が働く。その要因のなかでなにが決定的であったか、をきめるのは、さらにむずかしい。ベトナム和平にしてもアメリカ(また北ベトナム)がどうして平和にふみきったか、崇高なる平和への意志なのか、平和の大統領になりたかったのか、中ソの圧力があったのか、要因は無数だが、そのなかから一つだけを大きくとり出して、あたかもそれが決定的な条件であるかのごとく言うのは危険だし、とくに人種差別感情だけをクローズアップするのは、デマゴギー(民衆煽動(せんどう))に近くなる。第一次大戦でドイツが敗けた理由はたくさんあったが、ユダヤ商人や社民党員が背後で策謀したのだとする匕首(あいくち)伝説を徹底的に利用したナチスの例もある。

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