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医師の過労防止「まず母親の安心を」(後編)―東京の医療を守る会

 「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会(阿真京子代表)が7月6日に東京都杉並区内で開いた「子どもの医療相談会」では、3人の小児科医が低年齢の子どもを持つ親を対象に、小児医療についての知識や、適切な救急医療機関への掛かり方などについて講義した。それぞれの講義では夫婦連れなどが熱心に耳を傾け、日常での子どもの病気や育児に関する心配事など活発な質問が出た。会場の後方では子どもたちが遊べる場も設けられ、賑わいを見せた。(熊田梨恵)

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■「観察時、『長い』と思ってもよく見て」
あわてないで!ママに知ってほしいけいれんの対処法―ダイアップはどう使う?
山王病院・小林真澄小児科副部長

 
小林さんはまず、「悪寒とけいれんを間違えて救急外来に来る人が多い」と指摘。悪寒はガタガタ震えている状態で、視点も合っていて呼びかけると反応があるが、けいれんは基本的に意識がなく、チアノーゼ状態であることなどを説明した。その上で、「けいれんを起こしているとき、お母さんたちは長いと感じると思うが、どれぐらい続いて、手足がどうなっているか、左右の違いなどをよく観察してほしい。観察内容を診察時の参考にする」と、呼び掛けた。けいれんが10分以上続いたり、一日に何度も起こしたり、嘔吐や意識障害がある場合には髄膜炎などの可能性があるのですぐに受診すべきとした。また、初めて熱性けいれんを起こした場合は、その後医療機関を受診してほしいと述べた。

 けいれん止めの坐薬のダイアップについては、「熱性けいれんは一生に1回しか起こさない子どもが半数以上なので、熱性けいれんを1回起こしただけなら、けいれんの予防としては使わないのが一般的」と説明し、熱性けいれんが長く続いたり、2−3回以上起こしたりした場合などに予防として使うとした。

<Q&A>
会場
「子どもが熱を出した時、何度ぐらいまでなら上がってもよいのか」
小林さん「熱は原因があって出るものなので、それが治れば下がる。小児科医の立場から言うと解熱剤は不要で、基本的に熱を下げる必要はない。子どもがぐずって寝付かないときや食事をしないときなど、目的をもって解熱剤を使用するのはよいが、『何度になったから飲ませる』という考え方はしない方がいい」

会場「子どもが日中頭を打って夜に一度吐いたが、どうしたらいいか」
小林さん「頭を打って症状が出るのは24時間以内なので、その間は注意して観察し、お風呂に入れないようにしたり、夜中も起こしたりして様子を見るようにする。24時間以内に何もなければ98%以上何もない。もしその間に吐いたり、急にぐったりしたりするようであれば、CTが撮れる脳外科のある外来を受診してほしい」

■「予防接種のリスクより、罹患時のリスク考えて」
知ろう!予防できる子どもの病気 守ろう!ワクチンで
埼玉県済生会栗橋病院・白髪宏司副院長(小児科部長)

 
白髪さんはワクチンについて講義。「生ワクチンの効果はとても良好で、接種していれば重症化することはない。しかし、ワクチンの有効性や安全性は100%というわけではなく、予防接種を受けても免疫がつかなかったり、副作用を起こしたりする小児もわずかながらいる」と説明し、まれにポリオ生ワクチンにより手や足の麻痺などの被害があることも述べた。その上で、「予防接種のリスクを考える際は、予防接種を受ければ防げる感染症について、罹患時のリスクの方がはるかに大きいことを思い起こす必要がある」とした。

 また、生ワクチンや不活化ワクチンなど、ワクチンの種類を解説し、経口ポリオワクチンやMRワクチン、DPTワクチンなどについての接種方法と接種間隔などを説明した。日本脳炎ワクチンについては、中国や東南アジアなどでは流行が続いているため、「お父さんの仕事などで行く場合があれば、ぜひ接種を」と呼び掛けた。

■「しっかりしたメモ書きほしい」
知ると安心!子どもに多い症状とおうちでできるケア
まつしま病院・佐山圭子医師(小児科、検診担当)

 
佐山さんは、小児科外来で多い子供の症状を、▽咳・鼻水▽嘔吐▽下痢▽腹痛・咽頭痛などの痛み▽発熱▽発疹・湿疹・かゆみ▽不機嫌▽けいれん▽便秘―と整理。自然に治るものが多いが、重症化させずに治せる可能性を考えると、薬を使うメリットもあると説明した。重い病気として、敗血症、髄膜炎、肺炎、尿路感染症、川崎病、中耳炎を挙げた。いずれも重症感があり、自然には治らないので、中耳炎以外は基本的に入院しての治療が必要とした。

 また、外来で医師が知りたい情報として、発熱などの症状の経過や食欲など日常生活への影響、脱水傾向、今までどんな薬を使ったか―などを示し、「普段子どもを見ている人が外来に付き添えない場合は、これらのことがよく分かる人が付き添うか、しっかりしたメモ書きがほしい」と述べた。

■「『ついで』の質問は昼間に」
知っておきたい!小児救急のかかり方
白髪宏司医師

 
白髪さんは、日本小児科学会が生後1か月から6歳の子どもを対象に、救急医療機関への掛かり方などをまとめた「こどもの救急」を基に、救急の掛かり方について解説した。発熱やけいれん、吐き気、頭痛、皮膚の湿疹、泣きやまない、誤飲などの状態ごとに、対応を▽救急車で医療機関に掛かる▽自家用車・タクシーで掛かる▽自宅で様子を見る―に分けて整理した。

 夜中でも受診が必要な場合は、▽3か月未満の発熱▽腸重積▽けいれんが止まらない▽意識障害がある▽呼吸が苦しそうで、「ぜいぜい」「ひゅーひゅー」「けんけん」と音がする▽口唇・口内が腫れ上がるようなじんましん▽風呂でおぼれた・ひどい熱傷▽様子を見たが、ぐったり・顔色不良・苦悶状―とした。

 また、日中に受診したが、夜間も受診が必要で、「これなら医者が納得する」状態としては、▽その後も吐き続けて元気がない▽午後からおしっこが出ていない▽呼吸苦が悪化▽腹痛が明らかに増強―とし、「まだ熱が下がらない、という状態は受診してもあまり意味がない」と述べた。

 白髪さんは「当院に救急車で来るほとんどの患者さんが入院の必要がなく、自家用車で来る人の方が入院になる場合が多い」と現状を説明した。夜間の救急外来を受診する際、その受診とは別の内容などの「ついで」の質問は、「医師を疲弊させるので昼間にしてほしい」と訴えた。また、「入院治療や点滴が必要な場合は行くべきだが、夜間の病院は省エネモードなので、本来は夜間には行くべきでない」とした。患者の理解者は医師より看護師であるとも述べた。

 白髪さんは最後に、「私たちも『自分が当直をしていてよかった』と思いたい。日本の小児医療は大変。必要な時に受診するよう協力してもらいたい。普段からかかりつけ医を持って相談していれば、手術や入院になることはそうない。その意味で、予防接種などをすることはお父さんやお母さんの義務」と語った。

<Q&A>
会場
「花見のときに子どもが間違ってお酒を飲んでしまった。どれぐらい飲むと急性アルコール中毒になったり、具合が悪くなったりするのか」
白髪さん「ウオツカやウイスキーをストレートで飲んだりするのは問題だが、缶チューハイなどを一口飲んだぐらいなら、点滴などは必要ない。飲ませたりするのはよくないが、子どもが自分で飲む場合、一口ぐらいしか飲まないので、水分をちゃんと取ればよい」

会場「子どもが大豆やティッシュ、パン屑などを鼻に詰めてしまった事があり、パン屑で救急外来を受診した時には怒られた。どう考えたらいいか」
白髪さん「気付かないと問題になるので、気付いてよかった。ピーナツや大豆などが肺に入ってヒューヒュー音がする時は要注意。片肺が広がって具合が悪くなっている場合があるので夜間でも処置するが、この場合全身麻酔でないと処置できない。鼻や耳に詰まった場合は、昼間の処置になる」


更新:2008/07/07 19:35   キャリアブレイン


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