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強制わいせつの罪に問われ、この秋、もう一人の教諭が法廷に立った。姫路市立中学の英語教諭(32)。夏休みに入って間もない七月二十二日、部活動に関する会議を終えた後、同市内で女子中学生を尾行。マンションの踊り場で胸を触るなどし、駆け付けた飾磨署員に緊急逮捕された。 教諭も熱心な先生として知られていた。教科書に頼らず、人形など手作りの教材をふんだんに使い、生徒の人気者だった。兵教組の兵庫教育文化研究所の外国語研究員として活躍し、校内では生徒会担当を務めた。そして水泳部顧問。中学校体育連盟の中播地区理事でもあった。朝五時には起きて早朝練習に駆け付け、土日曜もなかったという。 裁判で弁護人は起訴事実を認めた上で、ふだんは温厚な教諭が犯行に至った理由として、こうした多忙によるストレスをあげた。 「土、日曜を含め仕事時間は一日平均十四時間四十八分。四月以降の休日は(犯行までに)わずか二日ほど」「これほど多忙な状況に置かれて、どんな場面に遭遇しても、自分を百パーセント律することができる人がどれくらいいるでしょうか」 だが、なぜ少女を―。 検察側の質問に教諭は「むしゃくしゃしていた。ガラスを割りたい、人を殴りたい、壁を殴りたい…そんな気持ちがあった」と犯行時の心境を述べた。しかし、少女を襲った動機は、教諭本人にもうまく説明できなかった。 十一月十八日。裁判長は「被告にどんな理由があれ、被害者には一切関係がない」とした上で、既に懲戒免職などの社会的制裁を受けているとして、教諭に懲役二年、執行猶予三年を言い渡した。十二月に入り、判決は確定した。 教師の性犯罪が問題になるとき、「多忙」「ストレス」が背景としてよくあげられる。伊丹市の社会科教諭の初公判では、検察側が冒頭陳述でこう述べている。 「被告人は野球部のほか生徒指導担当、行事担当、集団指導担当も務めたが、種々の職務に起因する時間の制約のため十分に生徒と接することができないとの思いを募らせ、疲労を感じ…(中略)…教諭の立場を離れ、若い女性と接したいと考えた」 しかしこうした多忙・ストレス説に、専門家の多くは否定的だ。 体罰や児童へのセクハラ、無断欠勤などで処分を受けた教師を対象に、再発防止研修に取り組む東京都教職員研修センターの担当者は明言する。「『疲れていた』『ストレスがたまっていた』を理由にする人はいません」。 学校共済組合近畿中央病院(伊丹市)の高石穣・心療内科部長も「(ストレスが性犯罪の)誘引の一つになることがあったとしても原因とはいえない」と断言する。 にもかかわらず法廷では、教師の犯罪に関し、多忙・ストレス原因説が度々登場する。確かに今年逮捕された教師たちは、いずれも「多忙」だったと周囲も認める。 それほど中学教師という仕事は忙しいのか。問題は、どこにあるのか。 |
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