【第34回】 2008年07月07日
インテルの格安CPU「Atom」はPCのあり方を変える
個人的には、「ついに来たか」という印象が強い。僕は、10年も前から「技術の果て」という理論を唱えてきた。ITが進化するのはよいが、人々のニーズを上回る進化は無意味だと言ってきた。高性能な製品を作り続けるのは、実は難しいことではない。よりハイパフォーマンスにして売れるなら、それほど楽なことはないだろう。だが、時速300キロで走れる自動車を誰もが求めないのと同じく、超高性能なパソコンを求めるユーザーは実はさほど多くないのだ。人々のニーズを超える進化の境目が、今なのかも知れない。
パソコンの進化が
停滞するのか
スタンドアローンでパソコンを使っている限り、リッチなソフトを高性能なハードで動作させてライバルに差を付けるという図式は問題なく成り立つ。だが、コミュニケーションの手段でもあるインターネットでは、汎用性が命だ。多くの人とやり取りできるシンプルなメールが意味を持ち、大勢が見てくれるWebページでなければ、メリットがない。
インターネットの進化がそろそろ頭打ちに近づいているのだろう。回線の速度ももう十分だ。
あと、1年半ほど経つと、新しいWindowsが登場する。だが、1世代前のOSである「Windows XP」の人気がいまだに高いことを見ても、パソコンの進化が停滞していることは明白だ。OSを乗り換えたとしても、結果としてできることがあまり変わらなくなっているのだ。
Atomを搭載した5万円パソコンでWindows Vistaを利用してみると、確かに快適とは言えない。だが、これで十分とも思えてしまう。車にたとえるなら、軽自動車やリッターカーである。一番台数が売れるジャンルなのだ。
OSやCPU、パソコンのハード、ソフトメーカーが、生き残りを賭けて勝負するときが来た。今できること以上の提案がないのなら、20年ほど続いたパソコンの進化は終演だ。いよいよコモディティ商品として、世界的に普及するであろう。逆に言うなら、もはや簡単に利益の出る商品ではなくなるのだ。
ユーザーにとっては、2つの側面が考えられる。もはや、パソコンに高いお金を払う必要がなくなる。これは良いことだ。だが、パソコンで仕事が楽になったり、体験したことのないようなAVが楽しめる可能性は低くなる。この点は、メリットとは言えない。IT市場が「コモディティ化」に向けてドラスティックに変化するか否か、この数ヵ月でひとつの答えが出てきそうだ。
第34回 | インテルの格安CPU「Atom」はPCのあり方を変える (2008年07月07日) |
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戸田覚
株式会社アバンギャルド/株式会社戸田覚事務所代表取締役。1963年生まれのビジネス書作家。IT、プレゼン、セールス、企画書、仕事術などが主なテーマで著書累計100冊。連載はWebと雑誌を合わせて24本。テレビ・ラジオの出演も数多い。また、執筆者になる人材を育てる「戸田覚塾」も運営。最新情報はブログにて。http://www.toda-j.com/weblog/
PC、携帯、家電、ウェブ、ITサービス、ITソリューションなど、デジモノ&IT全般にかかわる最新トレンドを、ビジネス作家・戸田覚が毎回鋭い視点でレポートしていくコラム。