ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level10
- 1 :愛想が無い@ただのツンデレのようだ:2007/12/31(月) 19:50:41 ID:AKWpCn1h0
- DQツンデレスレへようこそ。
ここは職人方が書いてくれるDQ関連のツンデレなSSに萌えるスレです。
新しい職人さん大歓迎です。SS題材はDQであれば3以外でもおKです。
DQ3の攻略等に関する質問は専用スレでどうぞ。
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ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜
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ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜 Part2
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ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜 Level3
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ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level4
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ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level5
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ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 6
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ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 7
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ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level8
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まとめサイト (Level 4 までのログはこちら)
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CC氏まとめサイト (Level 5 からのログはこちら)
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- 429 :CC 35-1/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:38:25 ID:OU7TkNrn0
- 35. SHOCK-IT-TO-ME(仮)
あまり時間も残されていなかったので、酒蔵を後にした俺達はタタラやクシナと合流して、今回の生贄に選ばれたヤヨイという女の家に向かった。
リィナの突拍子もない提案のお蔭で予定が狂っちまって、かなり行き当たりばったりな作戦しか思いつかなかったが、これ以上揉めてる時間も無い。不本意だが仕方ねぇ。
「キミ、だいじょぶ?重くて疲れたんじゃないの?」
道すがら、空の酒壷を背負ったファングに、リィナはそんな声をかけた。
言葉の上では気遣いだが、完全に揶揄する口調だ。
「ふざけるな。たとえ中身が酒で満たされていたところで、何ほどの事もない」
「ホントにぃ〜?」
「くどい」
「あ、そう?じゃあ、こんなことしても平気だよね」
ファングの腰の辺りを足がかりにして、ひょーいと跳び上がったかと思うと、リィナはくるっと空中で一回転して、そのまま酒壷の縁に着地した。
相変わらず、軽業師顔負けの身軽さだな。
「おい、貴様!?なにをしている!?」
「へぇ〜、ホントだ。全然バランス崩れないね。すごいすごい」
「……貴様こそ、奇妙な体術を使うな。人ひとり乗っているようには感じんぞ……おい、いいから、さっさと下りろ!」
「いいじゃん、別に。全然へっちゃらなんでしょ?」
縁から両足を離した途端、リィナの体は全身の関節が外れたみたいに折り畳まれて、すとんと酒壷の中に消えた。
「楽ちんだから、このまま運んでってよ。これも修行だよ、修行」
酒壷から肩口まで覗かせて、リィナはファングの頭をぺしぺしと叩いた。
「貴様……あまり調子に乗るなと警告したぞ?」
あ、マズい。ファングのヤツ、本気でキレかけてやがる。
リィナを嗜めるのを一瞬躊躇っちまったのは、やっぱり昨夜のことが頭にあったからだろう。
俺よりも先に口を開いたのは、姫さんだった。
「おお、よいな。わらわも、乗りたいのじゃ」
「ん?いいよいいよ、おいでよ、エミリーちゃん。はい、お手をどうぞ」
ファングの意向を全く無視して、リィナは身を乗り出して手を差し伸べると、エミリーをぐいっと引っ張り上げた。
- 430 :CC 35-2/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:43:45 ID:OU7TkNrn0
- いくらエミリーが小柄とは言っても、さすがに二人がすっぽりと入れるほどの大きさじゃない。壷の中で立ち上がってエミリーに場所を空けたリィナは、目の上に手をかざして庇を作り、芝居じみた仕草で先を窺った。
「で、そろそろ、そのヤヨイって人のウチに着くのかな?」
「へぇ……んですだ」
リィナの馬鹿みたいな身軽さに唖然としたのか、振り返ったタタラは気の抜けた口調で答えた。もしかしたら、呆気に取られたのは、とりとめのない言動の方かも知れないが。
マグナ達が勇者様ご一行であることは、既に説明してある。勇者様のお供ともなれば、やっぱり普通の人間とは様子が違うんだな、とでも言いたげなタタラの顔つきだった。
一方のファングはといえば、背負った酒壷に姫さんまで乗っちまったので、渋々黙認することにしたらしい。こいつは案外、姫さんに甘いからな。
きっと苦虫を噛み潰したような顔をしてるに違いないが、二人分の重さ自体はまるで苦にしていないらしい。体力馬鹿の面目躍如ってトコですかね。
並んで歩くアメリアが、姫さんと会話をしながら、さりげなくファングの肩に手を置いていた。
ちなみに先頭に立って案内をしているのが、もちろんタタラとクシナで、その後ろにファング達が続き、やや遅れて言葉少なにシェラが足を動かしている。
その背中を見ながら歩いている俺の手を、身代わりの生贄役を務める決心をしたエフィが、思い詰めた顔をして握っていた。
さらにずっと遅れて、しんがりをダルそうに歩くマグナ――今も、ついてきてる筈だ。少なくとも、ついさっき確認した時は、ちゃんと居た。
景色を眺めるフリをして誤魔化しちゃいるが、俺がいちいち後ろを気にしてるのは、エフィにはバレバレだろうな。
この状況は、俺が望んで働きかけた結果なのは、もちろん承知してるんだが。
正直、ちょっと胃が痛くなってきたぜ。
- 431 :CC 35-3/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:52:13 ID:OU7TkNrn0
- 近付くにつれて、ヤヨイという女の家は、教えられなくてもそれと知れた。
家の中から、泣き喚く子供の声が聞こえたからだ。
タタラを先頭に中に入ると、今朝方見かけたヤヨイの恋人――サノオを含めて、家人の全員が葬式の真っ最中みたいな打ち沈んだ顔を突き合わせていて、異常に淀んだ空気をガキの泣き声が攪拌している。
大好きなヤヨイお姉ちゃんが生贄にされてしまうと知ったガキが、イヤだイヤだと駄々をこねているのだ。
黙って突っ立ってるだけで、こっちまで落ち込んじまいそうだったので、早速タタラに仲介してもらって、俺達に任せてもらえればヤヨイを生贄にしないで済むと話を持ちかける。
最初は半信半疑の顔をされたが、タタラが国外に助けを求めたことは周知だったし、さらにサノオからも今朝の話は聞かされていたらしく、最終的には縋る目をした家人全員に頭を下げられた。ガキだけは泣きっぱなしだったが。
悪い冗談としか思えないが、生贄の女はヤマタノオロチと添い遂げるという建前になっているらしい。まさしく、死が二人を別つまでって訳だ……うん、不謹慎だったな。
ともあれ、そんな理由もあって、生贄の女が嫁入り衣装で着飾る風習になっているのは好都合だった。頭にも被り物だか布切れだかを被せるそうだから、ぱっと見、入れ替わりが分からなくなる――かと期待したんだが。
「やっぱり、髪の色が問題ですね〜」
襖を開けたアメリアが、奥の部屋のエフィを振り返りながら、そうこぼした。ヤヨイが着る筈だった衣装の着付けを手伝っていたのだ。
首を傾けて覗き込むと、暑苦しく何枚も重ね着をしたエフィが、正座をして俯いているのが見えた。
馬子にも衣装、という言葉がある。
その上、エフィは元から見た目が悪くない。
だから、思わず見とれちまって、こっちの部屋の隅っこで壁に背中を預けて片膝を抱えてるマグナに睨まれる……なんて展開になるのを畏れてたんだが、幸い杞憂で済んだ。
ここの連中にとっちゃ上等な出で立ちなのかも知れないが、なんというか、センスが違うっていうのかね――端的に言えば、俺はもっと体のラインが出る薄手の衣装の方が好きだな、うん。
- 432 :CC 35-4/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:57:09 ID:OU7TkNrn0
- 「そうですね……ちょっと、怪しまれちゃうかも知れませんね」
ぺたんと床に腰をおろしてガキを抱きかかえたシェラの控えめな表現は、顔に浮かんだ困った表情で裏切られていた。
ちなみにガキは、ずっとシェラにあやされていた甲斐あって、ようやく泣き止んでいる。
「お姉ちゃん、綺麗!!」
目を丸くして叫んだガキに、エフィは「ありがとう」と呟いて、強張った笑顔を返した。
ひどく緊張した顔つきだ。これから化け物の生贄にされようってんだから、無理もない。ガキは空気を読めないからアレだが、綺麗かどうかはこの際関係ねぇしな。
結い上げられたエフィの金髪は、頭に被せた布の内側に押し込められていたが、どうしてもいくらかはみ出ちまってる。
「ね〜。お姉ちゃん、とっても綺麗だね〜」
ガキをあやしながら、シェラがぽつりと漏らす。
「カツラでもあれば、いいんでしょうけど……」
瞳の色や顔立ちは、悲しげな素振りで目を瞑って俯いてりゃ誤魔化せるだろうが、シェラの言う通り髪の色はカツラでもない限り無理だな、こりゃ――
「カツラがあれば、いいだか?」
嘴を挟んだのは、それまで大人しくタタラの陰に隠れていたクシナだった。
「え――あ、はい。あれば助かりますけど……お持ちなんですか?」
アメリアの問い掛けに答えず、クシナは足早に奥の部屋に踏み込んだ。
そして、長い黒髪を片手でまとめ上げると、木製の化粧台から大きな鋏を取り上げる。
正直、俺はクシナが何をするつもりなのか、まるで予期していなかった――
「お、おい、おめ、なにするつもりだ」
唯一、タタラだけが声をあげたが、その制止は間に合わなかった。
じょきり。
小気味のいい音を立てて、クシナの黒髪が鋏に切断されるのを、俺はただぼけっと見ていたのだった。
- 433 :CC 35-5/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:03:44 ID:OU7TkNrn0
- 「え――っ!?」
「なにを――?」
悲鳴を呑み込んだアメリアやシェラにしても、予想の外だったろう。
「これで、代わりになるだか?」
お嬢が両手で口を抑えて見上げる中、クシナは己の黒髪をアメリアに向かって差し出した。
ひとつ呼吸を置いて、表情を改めたアメリアが顎を引く。
「……はい。助かります」
「なんてこと……どうして――?」
エフィの声は震えていた。信じられないといった口振りは、自分が髪を大事にしてるからだろう。
「ん?なんでってこともねぇだけど、ヤヨイじゃちっと長さが足んねぇだろうし……」
「そうじゃないわ!そんな、なんの相談もなく、あっさり……貴女にとっても、髪は大切でしょう?」
「いんや。こんでヤマタノオロチさ退治してもらえっなら、オラの髪の毛くらい安いもんだ」
クシナは、なんでもないことのように言うのだった。
「だからって……ごめんなさい。私が深く考えもせずに、身代わりになるなんて言い出したせいだわ……」
「なしてお前ぇさんが謝るだ?ホントはオラ達でなんとかしなきゃなんねぇのに、無関係なお前ぇさん達さ巻き込んで、申し訳ねぇのはこっちだよ」
「でも……」
クシナがあっさりと自分の髪を差し出したことは、エフィにとって余程ショックのようだった。
そして、俺もまた、多分お嬢とは異なる意味で衝撃を受けていた。
クシナの行為、それ自体がショックだった訳じゃないんだが。
ひと言でいえば、意外――そう。まるで予想できなかったという事実が、俺にあることをハタと気付かせたのだ。
俺は、クシナやタタラのことを何も知らず――知ろうすらとしてなかった。
自分の髪を差し出すくらいなんでもない。女がそう考えてしまう程、この国の住人達がオロチに追い詰められている状況について、俺はほとんど実感を覚えちゃいなかったんだ。
俺の興味は、偶然この地で再会したマグナ達にすっかり奪われていて――だからこそ、クシナが何をするのかなんて、全く予見できなかった。興味の外だったから。
多少は手強い相手かも知れないが、基本的にはいつもの魔物退治と大して変わらない。無意識の内に、その程度のつもりで構えていた俺は、ここの連中にとってオロチの脅威が文字通りの死活問題だという視点に、全く欠けていたのだった。
- 434 :CC 35-6/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:15:57 ID:OU7TkNrn0
- こういう事って、きっと俺には山ほどあるんだ。
視角の盲点というか、目の前にあるのに気付かない、みたいなことがさ。
いや、こんな当たり前のことさえ分かってなかったくらいだ。
いくら注意深く振る舞ったところで、気付いてないことにすら気付けない――きっと、そんなケースがいっぱいあるに違いない。
俺は一体、これまでどれくらい、気付かなくちゃいけなかったことを、気付けないままにして過ごしてきたんだろう。
そんな思いに囚われて、どこかから唐突に現れた誰かに横っ面を引っ叩かれたみたいに、不意打ちじみたショックを、俺は覚えていたのだった。
考えてみりゃ、クシナは家族を殺されてるんだもんな。オロチ憎しの念は、人一倍だろう。クシナの顔を改めて正面から見直せば、その情念がもたらす覚悟というか、自分に出来ることがあるならなんでもするという決意みたいなものは窺える。
そんなことすら、今まで分からなかった訳で。
俺は別に、全ての不幸にひたすら同情を寄せるような博愛主義者じゃない。
けど、オロチ退治を請け負って来た分際で、肝心の仕事に本腰が入ってなかったのは認めざるを得なかった。
魔物に襲われて人が死ぬなんて、大して珍しい話でもない。
こんな商売をしてると、それに慣れちまって、感覚が麻痺してた部分もあったかも知れない。
でも、それって、ホントはやっぱり普通じゃねぇんだよな。
特に、俺達みたいにヤクザな商売をしてる訳でもなく、本来なら片田舎でのんびり畑を耕して暮らしてるような連中にとってはさ。
ちらりと視線を向けると、ファングも俺を見た。
こいつは最初っから、目的を見失ったりしてなかっただろう。
シャクに触るが、面構えでそれが分かった。
「気合入れてかからねぇとな」
そう声をかけると、やっと分かったか、と言うように、ファングは「当然だ」と答えてニヤリと笑った。
- 435 :CC 35-7/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:20:29 ID:OU7TkNrn0
- クシナの黒髪を被り物から垂らして目鼻立ちを見え難くすることで、どうにかエフィはそれっぽく見えるようになった。
ホントは髪を結い上げるのが作法らしいんだが、まぁ、すぐに喰われちまう生贄の髪型なんて、運び役の兵士だか役人だかも大して気にしやしないだろう。
一緒に運ばれる酒壷の中には、リィナが潜むことになった。
ファングは自分が入る気マンマンだったんだが、筋肉質の図体には小さくて、すっぽりと収まり切らなかったのだ。
酒壷に潜む役には、ある一定の時間、オロチと独りで渡り合って、致命傷を与えられないまでも、エフィを守ってもらう必要がある。
もちろん俺達もすぐに駆けつける予定だが、運び役の目を盗んで後を追うとなると、どうしたっていくらか時間差が生じるからだ――ったく、生贄役がエフィじゃなけりゃ、もうちょいマシな手も打てただろうにな。
ともあれ、竜種と独りでやり合うなんて非常識な役目がこなせそうなのは、ファング以外にはリィナを置いて他になかった。壷にすっぽり入れるのは、もう実証済みだしな。
「あなた……ちゃんと、自分の役割を果たしてくれるんでしょうね?」
ところが、エフィは疑り深げな視線を、リィナに投げかけるのだった。
守ってくれるんでしょうね?と、はっきり言わなかったのは、意地を張ってるんだろう。
「んん〜?さってねぇ、どうしよっかな〜」
酒壷の中に立って、その縁で頬杖をつきながら、リィナはにやにやとエフィに視線を返す。
昨夜の件で、この二人の間には妙な確執が生まれちまったらしい。
やれやれ。
お嬢は、ヴァイスぅ〜、と、当て付けるみたいな、妙に甘えた声で俺を呼んだ。
「ねぇ、この人選は、本当に間違いないの?私は、できたらヴァイスについてきてもらった方が、安心なんだけど……」
「いや、悪いけど、俺もその中にすっぽり入るのは、ちょっと無理だ」
あと、竜種と独りで渡り合うのもな。
- 436 :CC 35-8/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:25:19 ID:OU7TkNrn0
- 「……けれど、正直に言って不安だわ。本当に大丈夫なの、この人」
「さぁ〜?どうだろうねぇ――」
「ああ、大丈夫だ」
茶化すリィナを遮って、そう断言することに、迷いはなかった。
「リィナは、必ずエフィを守ってくれる。絶対だ。俺が保証する」
それまでさんざん反りが合わなかったリィナとエフィは、一転して示し合わせたみたいに、同時に揃ってきょとんとしてみせた。
なんなんだ、お前ら、その意外そうな顔は。そんなに俺らしくない台詞だったか?
「それに、リィナは俺なんかより、全然強くて頼りになるんだぜ。だから、心配すんな」
「ま、まぁ……ヴァイスが、そう言うなら……」
狐につままれたような顔をして、不承不承つぶやくエフィ。
「リィナも、頼んだぜ。エフィは、俺達みたいに年がら年中魔物とやり合ってる人種とは、訳が違うんだからさ。なるべく早く追いつくつもりだけど、それまで守ってやってくれよな」
「ふぅん……ホントに、いいのかなぁ〜?ボクに、そんなこと頼んじゃって。心配じゃないの、ヴァイスくん?」
リィナはニヤニヤとからかう表情を浮かべたが、悪いけど無意味だぜ。
「ああ。全然心配してねぇよ。よろしく頼んだぜ」
こんな風に言い切るのが俺らしくねぇのは、まぁ、自分でも認めるよ。
でも、これに限っちゃ本心だからなぁ。
「そりゃ……まぁ……その人に身代わりになってもらおうって言い出したのは、ボクだしね」
リィナは、バツが悪そうにぼりぼりと頭を掻いた。
リィナがエフィを守ってくれることについては、俺は一切の疑いを持ってない。
俺達が辿り着くまでの間、リィナ独りの手にオロチがおえない可能性はあるだろうが、リィナに無理なら、他の誰にも無理だ。もしそうなったら、誰が悪いかって、こんな杜撰な作戦を考えた俺の責任ってことになる。
とにかく、俺がついていくよりゃ、よっぽど安心なことは間違いない。
だから、俺が引っ掛かってるのは、それとは別の事柄だった。
- 437 :CC 35-9/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:29:23 ID:OU7TkNrn0
- 準備が整ってほどなく、昼前に俺達を呼びに来た連中と同じ格好をした二人の男が、生贄を迎えにやってきた。
既に沈んだ太陽が、山の上を微かにあかく染めている――もう、ほぼ夜だ。
「酒壷も、こっちで用意しときましただから」
あらかじめ、家の外で待ち構えていたタタラの言葉を特に訝る風もなく、「ほう、気が利くな」とかなんとか言いながら、兵士達は両端に棒を渡した板の上に、蓋をした酒壷を置き、生贄にも隣りに乗るように促した。
それはもちろん身代わりになったエフィであり、本来の生贄であるヤヨイは、余計な疑いを持たれるのを嫌って身を隠している俺達と一緒に、家の中から様子を窺っている。
ヤヨイの家族に軽く頭を下げて、終始俯いたエフィが板に乗ると、兵士達は前後から棒を握って持ち上げた。
「きゃっ!?」
板の上でバランスを崩しかけて、エフィが悲鳴をあげる。
ヤバい、馬鹿、顔を上げんな。ここの連中とは目鼻立ちがまるで違うから、しげしげと覗かれたら、さすがに怪しまれるぞ。
肝を冷やしていると、不意にヤヨイの母親がおいおいと声をあげて泣き崩れた。
続いて、おそらく事情を半分も理解していないガキがつられて泣きはじめると、兵士達はうんざりとした顔を見合わせた。
「気持ちは分かるが、お主の娘は大変名誉なお役目を仰せつかったのだ。笑って送り出せとは言わぬが、あまり未練を残すものではない。娘も困るであろうし、なによりこれは、お前達の為なのだから」
用意してあった台本を棒読みするような口調で、兵士のひとりがヤヨイの母親を諭した。思うに、生贄を運ぶ際に繰り広げられる別離の光景は、毎回こんな調子なんだろう。
ともあれ、兵士達の注意がエフィから逸れたことに、俺は胸を撫で下ろしていた。
- 438 :CC 35-10/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:32:18 ID:OU7TkNrn0
- 「ええ……ええ、承知しております」
旦那に肩を抱かれながら、ヤヨイの母親が小さく頷く。それにしても、咄嗟にこんな機転が利くとは思ってなかったぜ。助かったよ。
「娘――なにか言い残すことはあるか」
妙な仏心を出したのか、もう一方の兵士がエフィに尋ねた。
余計なことしなくていいから。
「……いいえ」
蚊のなくような声で答えて、俯いたままエフィは首を横に振る。
「そうか……では、行くぞ」
訳も分からず泣き続けるガキが、上手い具合にいたたまれない空気を醸し出していた。
兵士達にしても、死ぬと分かってる娘を家族から引き離すなんて、気分のいいモンじゃないのは明らかだ。逃げるようにして、そそくさと生贄と酒壷を洞窟に向かって運び去った。
考えてみりゃ、あいつらも憂鬱な役目だよな。
あの分なら、途中で余計な詮索をされて、エフィの正体がバレる心配は少なそうだ。
いちいち生贄に感情移入してたんじゃやってられないだろうし、意識的に距離を置いて、言われた仕事を淡々とこなす。そんな態度だった。
「そんじゃ、行くか」
こっそり後をつけるべく、ファング達に声をかける。
「あの……よろしくお願いいたします」
そう言って、ヤヨイは深々と頭を下げた。
言いたいことは山程あるけれども、それしか言葉にならなかった、みたいな口振りだった。
「任せておけ」
俺が口にしたくて出来なかった言葉で、ファングが答えた。
- 439 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 03:41:54 ID:BBE9lW0PO
- 仕事前の保守
- 440 :CC ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:49:17 ID:OU7TkNrn0
- ということで、第35話の一部をお届けしました。
今回はここまでです。す、すみません><
いつも一話単位で構成を考えるので、通常は前半に動きがなかったら
後半に動きを持たせようとか、その逆とか、そんな具合にしてるんですが、
ここまでだと、見事に前置きだけって感じですよね。
退屈なだけだったかも知れないと思うと、心苦しいです。
けど、大変個人的な事情で申し訳ないんですが、
5月の頭。。。いや、4月の下旬から、正直生きた心地がしない、
という日々が続いておりまして。。。すみませんが、今はこれが精一杯でした。
どうにか状況が持ち直しそうな気配がしてきましたので、
なるべく早く続きをお届けできるように頑張ります。
途中で投げ出す、という選択肢だけは無いつもりでいますので、
よろしければ今後ともお付き合いいただければと思います。
では、なるべく近い内に、続きでお会いしましょ〜ノシ
。。。そうなるといいなぁ。いや、もちろんそうなるように頑張りますけど(^^ゞ
- 441 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 04:19:28 ID:BBE9lW0PO
- 仕事中のほs……
ズコー(AA略
あ、いやあの、CC氏、まずは乙でした!!
まぁ、前半で各キャラの心理描写やら前置きやら入れてたら大変っすもんねぇ……
あと、髪を切るシーンがやたら印象的だったり。
うーん、ためになるSSだ。
次回までの保守は我等に任せて、まずは体調を整えて下さいな。
マジでお疲れ様でした!
- 442 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 06:45:18 ID:u7eHMhPa0
- 昨日早々に寝たので仕事前にチェックしていたら更新されてる!!!!
全然退屈じゃないですよ本当に!
- 443 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 10:46:04 ID:vKcNU2TuO
- ここから先は有料なんですね?
月3000円くらいまでなら払っちゃうぜ保守
- 444 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 00:24:10 ID:E1ELudN80
- ナニこの寸止め!!!!!!!!
だ が
そ れ が い い
- 445 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 01:46:52 ID:QU4f9aML0
- _、_
( ,_ノ` )y━~~~CC氏乙。何事もマイペースが一番
全裸になって待った甲斐があった。
面白い!ヴァイスがまた成長してるし!
- 446 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 18:49:05 ID:dGxBzLYOO
- 久しぶりにきたあああ。
さあ続きまでオナ禁するぜ!
- 447 :CC ◆GxR634B49A :2008/06/19(木) 00:55:42 ID:FU0BKoaW0
- ありがとうございます<(_ _)>
こんなペースにお付き合いいただき、本当に感謝です。
なんとかご期待にそえるように、続きを頑張ります。
うん。今の話、人数大杉ですよねーw
普通に書くとすんごい長くなっちゃいそうなので、ここは別に
書く必要ないよなぁ、っていう部分はざくざくカットしちゃってます。
必要な部分までカットしないように気をつけないと。。。
っていうか、クライマックスとか、もっと人数多くなりそうだしね!
('A`)
という保守w
- 448 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/21(土) 13:01:05 ID:9/R7n3qKO
- てすと
- 449 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/24(火) 02:35:13 ID:FWk1aCkXO
- CC氏の作品最初から読み直してるんだが面白過ぎるぜリィナ俺と結婚して下さい保守
- 450 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/24(火) 19:03:12 ID:Cm1Se/Mm0
- わっふるわっふる
- 451 :CC ◆GxR634B49A :2008/06/24(火) 22:20:03 ID:S3hGqeu80
- わっふるわっふる書こうと思って忘れてましたw
読み直していただけて嬉しいです。アホほど長くてすみません(^^ゞ
通読向けに手を入れるとか言って、そんな暇まったくねーw
リィナにも見せ場がまだまだあるので、乞うご期待です。
。。。ご期待を乞うたからには、さっさと投下しなくてはならないのに、
いつの間にやら、もう一週間経ってる。。。おそろしい。。。
が、がんばります><
- 452 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/25(水) 06:04:26 ID:gXXXkpKFO
- 内容の充実した長編小説には、長さを意識させないある種の“貫禄”がある。
CC氏の作品もその一つだ。
という事で保守
- 453 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/25(水) 23:16:24 ID:WBZAUWn90
- >リィナにも濡れ場がまだまだあるので
まで読んだ。
- 454 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/27(金) 11:19:52 ID:IIXKR9pH0
- 漸くCC氏の最新作まで追いついた・・・
やべえ、やべえっすよw
正直続きが楽しみで仕方がねぇw
最近ヴァイスとファングの距離が縮まってきてアッー
>>YANA氏
あの流れはあんたが悪いってわけでもない気がするんだぜ。
ゆっくり待ってるよ〜
- 455 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/01(火) 06:18:43 ID:Xn/kJPc3O
- ほしゅ
- 456 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 11:25:50 ID:G6102ChR0
- 今年も半分過ぎたのか保守
- 457 :CC ◆GxR634B49A :2008/07/04(金) 16:42:36 ID:SnMwqjiI0
- ジツは先週からずっと、また忙しかったりします\(^o^)/
毎回、「次に書き込む時は、投下予告が出来るくらい進めておくぞ!」と思いつつ、
なかなかままならず。。。なんとか少しづつ進めてはいるんですが。。。
ホントにすみません><
今回の投下を乗り切れば、もう少しなんとかなると思いますので、どうか平にご容赦を。。。orz
もう半年経っちゃいましたね。ホントに、どんだけ早いんだ、月日。
- 458 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 07:49:34 ID:kMS2BvO/O
- ごめん、CC氏の投下が待ち遠しくて俺がラナルータ使いまくったんだ。
- 459 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 14:40:58 ID:DltzG9oc0
- その調子でもう四日分くらいラナルータ使ってくれ
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