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【社説】

日米首脳会談 言行一致で拉致解決を

2008年7月7日

 米国側の配慮が目立つ会談だった。拉致置き去りへの日本の懸念を拭(ぬぐ)おうとした大統領のメッセージを行動につなげたい。首相はサミットの好機を生かせ。拉致解決へ各国の支援体制構築が急務だ。

 「拉致問題が日本にとっていかにデリケートな問題か十分承知している」「米国は日本を見捨て、置き去りにすることはない」

 北海道洞爺湖町での日米首脳会談後、福田康夫首相と共同会見に臨んだブッシュ大統領は冒頭に拉致問題を取り上げた。過去の首脳会談でも、被害者や家族への思いを口にしてきたが、今回は一段と気遣いを見せたようだ。

 北朝鮮の核計画申告を受け、米政府はテロ支援国家指定解除の手続きに踏み切った。日本にとっては、拉致解決に向けた有力なカードを失ったに等しく、与党内からも大統領の姿勢に疑問の声が上がっていた。

 日米間の足並みの乱れは、同盟関係に悪影響を与えるとともに、交渉面で北朝鮮側を優位に立たせることになりかねない。今回、日米首脳は核と拉致の解決に向け連携を再確認することはできた。

 大統領は拉致問題の解決を六カ国協議の枠組みで目指す意向も示している。これまで中国などは「拉致は二国間の問題」と事務的で、北を除く各国がスクラムを組んで対応する状況になかった。大統領発言が動きだせば、日本が目指す核と拉致の包括的解決への道が開く可能性が出てくる。

 主要国首脳会議(洞爺湖サミット)には、拡大会合の招待国も合わせると、二十二カ国の首脳が勢ぞろいする。

 首相は早速、中国、ロシア首脳らに拉致問題を丁寧に説明し、連携を呼び掛けるべきだろう。これまでにも増した外交努力が求められる。同時に核申告を受けての検証作業や北朝鮮が約束した拉致再調査の具体化でも、日米連携を深めることだ。

 今回のサミットは、環境・気候変動、食料や原油価格高騰など、地球社会の将来を大きく左右する重大なテーマがめじろ押しとなる。

 各国の国益を懸けた対決は、想像を絶するものになるだろう。議長である首相の指導力が問われる局面だ。

 海外メディアからは「姿が見えない議長国」と揶揄(やゆ)されている。日本のリーダーとしての気概を持ち、姿を見せることが地球問題や拉致の解決につながるのだ。

 

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