自民党総裁選に予備選を導入し、より活発で、より有意義なものにしようと、若手議員が立ち上がった。国会議員38人が参画し、6月に発会式を行った「新しい総裁選挙を実現する会」だ。議論を重ね、10月には総裁選改正提言をまとめる予定だ。
設立趣意書には「次回の総選挙では野党に転落する可能性が高い」と危機感があふれている。「党のイメージを刷新する最も効率的な手段」として、総裁選への予備選導入などを提案していく意向だ。
予備選は、国会議員や各県連代表による本選挙前に行われる。本選に立候補するには現行通り国会議員20人の推薦が必要だが、予備選の推薦人は10人に緩和する案が有力だ。代表呼びかけ人の一人、山本一太参院議員は「予備選を含めた選挙期間は1カ月程度」と、現在の12日間より大幅に延長する考えだ。
推薦人を半減することで若手の有望株にも予備選に立候補できるチャンスが与えられる。予備選で支持を大いに得られたなら、国会議員からの同調者も増え、本選挙にコマを進められる。「米国大統領選のように『意外性』という要素と『将来のスター政治家』を発掘することも可能だ」と、山本氏はいう。
派閥政治の弊害を除去しようと78年の総裁選から党員などによる予備選は導入された。当時の福田赳夫首相は予備選で敗れ、本選出馬を辞退。大平正芳首相が誕生した。予備選は埋もれた保守票を発掘し、保守再生に寄与したともいわれている。
現行の規程でも党員や党友による投票も行われるが、国会議員による投票と同時開票されるため、予備選的要素はまったくなくなっている。
その一方で、昨年の総裁選のような任期途中の場合は、国会議員と党員選挙に代わる各都道府県連の代表の投票で決まる。各県連は与えられた3票分の行使を、独自に定めた党員投票で決めるため、予備選的要素が加味される。民主党代表選では投票人の範囲は自民党総裁選よりも拡大されている。だが、国会議員投票と同時期に開票され、予備選的役割は果たせない。
「小泉(純一郎首相)政治」の登場で、直接民主主義的な手法を国民は望むようになった。その一方で、これまで人材育成の役割も果たしていた自民党内の派閥は衰退し、代わるべきシステムは出現していない。民主党も悩みは同じだ。
トップ選出過程に予備選を導入することで、有能な人材は発掘され、鍛えられる。政治指導者同士が切磋琢磨(せっさたくま)する姿をぜひ見たい。
毎日新聞 2008年7月7日 東京朝刊