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2008年7月7日

◎能登空港5年 息切れせず発信を続けたい

 能登空港がきょう七日、開港五年の節目を迎えた。羽田便の搭乗率は一年目が約80% 、機材が大型化された二年目以降も60%台半ばをキープしており、開港前には少なからずあった「先行きは厳しい」との見方をいい意味で裏切り続けている。一日二便体制の実現と引き換えに異例の搭乗率保証制度を提案して背水の陣で利用促進に取り組み、「安定飛行」にこぎ着けた関係者のこれまでの努力は評価できる。

 能登半島地震の影響が懸念された五年目の搭乗率も、前年までとほぼ同水準を維持して おり、県などは、地震対策として積極的なキャンペーンを展開したことが奏功したとみている。ただ、六年目はその反動減がいささか気掛かりでもある。今後も、息切れせずに能登の魅力アップと首都圏への情報発信に努めてもらいたい。

 六年目の搭乗率の維持、向上を図るため、県などは漸減傾向にある地元利用者の掘り起 こしに力を入れるとしている。確かに地元利用者は搭乗率の「基礎票」とも言え、その減少を軽視するわけにはいかないが、長い目で見れば、能登の高齢化や人口減に歯止めがかからぬ限り、この傾向も続く。

 とすれば、「内向き」になり過ぎるのは得策ではない。関係者には、魅力的なキャンペ ーンで首都圏の利用者を上積みし、地元の落ち込みをカバーする気構えをあらためて求めておきたい。

 約二年後の羽田空港新滑走路の供用で、地方空港を取り巻く環境は変わる。羽田の発着 枠が現在の年間約三十万回から約四十一万回に増強されれば、これまで「枠がない」とはねのけられてきた地方空港と羽田を結ぶ路線の増便などが実現する可能性も広がるからである。羽田便の一日三便化やダイヤ改善を要望し続けている能登空港関係者にとっても好機だ。

 だが、当然ながら、小松や富山を含めた多くの地方空港の関係者が、羽田の新たな発着 枠に熱い視線を注いでいる。競争に勝ち抜くためには、需要があることを示すしかない。百の試算よりもやはり実績であり、搭乗率を少しでも引き上げることによって、要望に説得力を持たせたい。

◎コンビニ営業自粛 本筋から外れていないか

 地球温暖化対策の一環として、九都府県市がコンビニエンスストアなどの二十四時間営 業の自粛検討に前向きになっている。共同通信が四十七都道府県と十七政令指定都市を対象に行ったアンケートで分かったものだ。「検討の余地あり」も十一道府県と四市に上ったという。が、温暖化対策は大局からその本質を理解しないと、方向違いの袋小路に迷い込みやすい。

 温暖化対策の本筋は省エネ技術の開発と普及を推進し、良いものをつくって大事に扱い 長持ちさせる等々、生活水準を落とさずに進めることであろう。危険を察知したら救いを求めて駆け込む「防犯」の役割をも現に立派に果たしているコンビニ営業の自粛などは本筋から外れていはしないか。

 言い出したのは京都市だ。同市が深夜の町並み景観をよくし、併せて温暖化ガスの排出 量を減らす狙いでコンビニの深夜営業などの規制を明記して政府の「環境モデル都市」募集に名乗りを上げたとのニュースをきっかけに、コンビニの深夜営業自粛イコール温暖化ガス削減という短絡が独り歩きした。深夜営業を禁じても店の冷蔵庫などは働いているため、4%ほどの効果しかなく、魔女狩りだと業界は反発している。

 その一方で、効果の少ないエコロジー運動が増えたほか、「カーボン・ヘブン(温暖化 ガス排出天国)」なる新語も生まれた。ヘブンとは削減義務のない新興国の一部を指し、そこへ工場を移転させる動きが出てきたというのである。ごまかしを見破る知恵が必要になった。

 国際社会全体の温暖化ガス排出量に占める日本のそれは4%にすぎず、これに比して米 国が21%、欧州連合(EU)が15%、ロシアが6%であり、中国のそれは米国に迫っているともいわれる。

 京都議定書では、日本が一九九〇年比で6%の削減を義務付けられ、ロシアはゼロ、中 国やインドなどは削減義務なし。日本は、はめられたのだとの指摘さえある。こうした不平等なども改め、各国が積極的に参加してこそ効果は上がるのだ。


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