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週刊東洋経済

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イスラエル建国60周年 ユダヤ人国家の理想と現実(1) - 08/07/05 | 14:00

 シオニズムの父と呼ばれるテオドール・へルツェル(1860〜1904年)は著書『ユダヤ人国家』(1896年)で、「われわれユダヤ人は一つの民族である」と述べ、ユダヤ人解放が進んだはずの西欧においても反ユダヤ主義は強く、国民国家に同化することは不可能と指摘し、ユダヤ人も他の民族と同様に独自の国民国家をつくり、そこに逃げ込むことを提唱した。

 その教えは、帝政ロシアの迫害に苦しんでいたロシア・ポーランドのユダヤ人に広まり、オスマン帝国下のパレスチナへのユダヤ人の移住、イギリスによるユダヤ人国家を認めたと解釈できるバルフォア宣言(1917年)、ナチスによるホロコーストの衝撃、国連によるパレスチナ分割決議と第1次中東戦争(1947〜48年)を経て、48年5月14日に実現する。

 だが、イスラエル建国はその後の度重なる中東戦争の出発点となり、国連の推計で現在500万人といわれるパレスチナ難民を生んで、イスラエルにとっても「のどに刺さった骨」になっている。

 1993年のオスロ合意では、パレスチナ人が国民国家をつくり、パレスチナの地に二つの国民国家が共存することで、恒久和平を実現する解決策が示されたが、今のところ実現せず、その道筋も見えない。

 ユダヤ人国家は実現したが、アラブ人との対決を生んだだけでなく、ヘルツェルが思いもよらなかった国家の構成になった。人口700万人のうちアラブ人やドルーズ教徒など約25%の非ユダヤ人を含んでいる。

 さらに一口にユダヤ人といっても外見や伝統、文化が異なる何種類ものユダヤ人がいる。大きく分ければ、われわれがユダヤ人という場合にすぐに想起する白人系のユダヤ人(ロシア・東欧系、アシュケナージと呼ばれる)、イスラエル建国後にアラブ諸国などから追放され、イスラエルに移住した東方系ユダヤ人(ミズラーヒ)、数は少ないが歴史に大きな痕跡を残したスペイン・ポルトガル系ユダヤ人(セファラディ)、そして1970年代に移住した黒人系のエチオピア系ユダヤ人(ファラシャ)である。

 ユダヤ人国家が実現してもディアスポラ(離散)のユダヤ人がいなくなったわけではない。反対にユダヤ人国家の生存を保障しているのは、米国に住むディアスポラのユダヤ人の政治力である。こうした現実は、ヘルツェルが「隠居」を願ったユダヤ教が意外な生命力を発揮して、イスラエルの政治、社会に大きな影響を与えていることとともに、ヘルツェルの理想と現実の乖離を物語る。

イスラエルから日本への想い

 内田樹神戸女学院大学教授が『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で端的に指摘したように、「日本人とユダヤ人は歴史的に関係ない」ので、日本には反ユダヤ主義がない。

 日本企業にとって、イスラエルの人口は少なく、政情も不安なので、市場としても生産拠点としても関心がない(関心を示したのは富士重工業などのニッチメーカーだ)。イスラエルと関係を深めるとアラブボイコットに抵触する心配もある。

 だが、イスラエル側は、落ちぶれた(?)といえども世界2位の経済規模を持ち、ハイテク産業に強い、日本への接近を図っている。
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