最近、ワクワクすることが多い毎日を過ごしている。
全部は書ききれないけれど、とくにすごかったのは「南米のガンジー」と出会えたこと。
南米のガンジー、または、「エクアドルのチェ・ゲバラ」。
彼の名は、アウキ・カナイマ・ティトゥアニャ。
エクアドル、コタカチ郡の先住民知事!
アウキさんとパートナーのアルカマリさん。戸塚の善良寺にて。
日本の憲法9条を世界の人たちと語る国際会議
。
この規模でそれを開催するのは、たぶん史上初めてのことだったと思う。
その歴史的なシンポジウムの中で、
唯一「環境」がテーマのシンポジウムを辻信一さんと一緒にコーディネートする…
そんな恐れ多い大役を引き受けることになったとき、まずいちばんに考えたのは
「ラテンアメリカからゲストを呼ぼう!」ということだった。
かつてローマ帝国支配下の平和のことを「パックス・ロマーナ」と呼んだ。
それを受けて、辻さんは、
現代の平和は「パックス・アメリカーナ」(アメリカ覇権のもとでの平和)であり、
「パックス・エコノミカ」(経済覇権のもとでの平和)だと言っている。
アメリカの傘の下にいれば、平和。
資本主義経済市場に参加している限りは、平和。
…でも、その外には何がある??
貧困は減らないし、戦争はなくならない。
テロと社会不安は増える一方のようにも見える。
そろそろ、
際限のない経済成長や「パックス・エコノミカ」というマインドセットを抜け出して
それに変わる新しい社会システムを作らないと、みんな幸せになれないんじゃない?
そう考えたとき、
「脱・アメリカ的世の中」を掲げて次々に左派の政権が誕生しているラテンアメリカ地域ほど
学びの多い場所はないと思った。
そして日本にお招きしたのが、「南米のガンジー」、
次期エクアドル大統領候補のひとりでもあるアウキさんだった。
二人でおそろいのみつ編みが超素敵!
以下、アウキさんのトークのメモを共有します。
南米の先住民は500年以上差別されてきました。
民主主義から排除されてきました。
みなさんにお尋ねしたい。
今、世界に民主主義は存在しますか?
私は、今の世界に民主主義はないと考えています。
デモクラシーのデモは「民衆」、クラシアは「力」という意味です。
人民に力がないのだから、民主主義は存在していないも同然。
力を持っているのは、政治的グループであったり、経済界であり、人々ではありません。
民主主義はありませんが、石油の力、ドルの力、テレビの力がある。そんな世の中です。
これを変えるのにはどうしたらいいか。私は真剣に考えました。
先住民の諺に、「川を渡ろうと思ったら、水の中に入らないといけない」というものがあります。
まず、みんなで参加しなくてはと思いました。
我々先住民には、国家もなければ、法的な枠組みもないし、経験も本もありませんでした。
しかし、先住民の知恵の中から、「参加型の民主主義」という新しい社会の形を見つけたのです。
変革は参加によって生まれます。
504年の大変な時代を超えて、新しい参加型民主主義を作り出すにいたって、
私たちは3つだけ原則をつくりました。
3つの原則とは、「怠け者にならない、嘘をつかない、盗まない」。
なぜなら、私たち先住民は、怠け者で、嘘つきで、泥棒だと言われてきたからです。
(※「ナマケモノにならない」という部分で、みんな辻さんを見る。会場、爆笑。)
(c)ナマケモノ倶楽部
私たちは毎年、大きな民衆集会を開いています。
子どもからお年寄り、もちろん女性も含めて、毎年たくさんの人々が集まっています。
雨林に住む人々には、郡政府がバスを出します。
外国人もみな歓迎です。
そして、医療、教育、環境、税、予算についてみんなで話し合うのです。
地域における開発が、透明性を持ち、腐敗を追い出せるように政府とも話し合っています。
民衆集会では、一緒に働こう、成功も失敗もみんなで担い合おうとやってきました。
そしてその結果、12年間いつも勝利してきました。
コタカチでは投資案件はすべて住民が参加して決めています。
予算も参加型で準備しています。
成功の鍵?
対話と多様な文化を尊重し理解することです。
(c)ナマケモノ倶楽部
私が知事をやってきた12年間というのはエクアドルの危機と重なっています。
憲法を変えて米ドルをエクアドルの通貨にし、政権が9回交代し、
貧困率が35%から80%まで拡大した危機の時代です。
私たちはそんな中で、対話によって平和文化を作ることを目指しました。
そんな私たちに、ユネスコは、「平和都市賞」を与えました。
2000年にはエコロジーコタカチ宣言をしました。
森林農法を行うことで、木材の伐採や鉱山開発にブレーキをかけてきました。
15年闘って、腐敗した政治家や経済の権力者が、コタカチを食い物にするのを食い止めてきました。
多国籍企業による採掘権の無効化さえも可能にしました。
2005年にコタカチは100%の識字率を達成しました。
伝統的先住民医療を見直し、医療費の無料化も実現しました。
その結果、妊産婦の死亡率が2%にまで低下し、
現在はエクアドル内で91の自治体がコタカチをモデルに新しい発展をしようとしています。
エクアドルでは石油の開発が始まってから、貧困も対外債務も増大しました。
銅山の開発が発展につながるとは思えません。
エクアドル政府は最近、国家予算の25%を使って、戦闘機20機を購入することに決めました。
エクアドルにも憲法9条があったら、と思います。
憲法9条があったら、国の予算を文化や社会のために使えるのに。
私たちは、西欧式の「代表民主主義」にあまりに慣れてしまって、
まさか「直接民主主義」が可能だなんて思えないくらい、思考停止している。
そんな現代にあって、まったく新しい「参加型民主主義」を通して
確実に新しいモデルを築いている敏腕政治家のアウキさん。
キューバで経済学を勉強して帰国、
知事に初めて就任したのが31歳(今の私よりたった1つ上!)のときだったというから、
もう本当にびっくりする。
しかも、政治家として圧倒的支持を得ているアウキさんには
3人のお嬢さんがいて、家では炊事・洗濯・掃除なんでもこなすお父さん。
奥さんのアルカマリさんのことも本当に大切にしていて、ふたりはいつも手をつないで歩く。
アウキさん、そのうえ、実は詩人でもあったりして。
辻さんが言っていた。
忙しい中でいったいいつ詩を書くのだろうと思ったんだよ。
でもそう聞くと、アウキさんはゆっくりと言った。
「Hay tiempo para todos.
全てのことをするための時間はある」 と。
軍拡するエクアドルの中にあって、コタカチは非武装で闘っている。
環境教育者や森を作る人を養成することで、鉱山で働かなくても雇用が守れるようにしている。
そんな偉大な「命のため」の仕事をしているアウキさんはまた、詩人でもある。
…カッコイイ!!
いまやSEIYUでも採用されて
日本でもちょっとしたブームになっている「ハチドリ」の話も、
もとはといえば詩人であるアウキさんのパートナー、アルカマリさんが辻さんに教えたもの。
アウキさんが、こんな話もしてくれた。
500年間で7000万人の南米の先住民の命が犠牲になりました。
これは2つの大戦での犠牲者数を上回る数です。
私たちは命を愛し、平和を愛する民族です。
政治家としての私がやっていることは、今のところコタカチにとどまっています。
エクアドル全体が変わっているわけではありません。
でも、コタカチは確実に変わっている。それは大きな第一歩です。
ハチドリの話をさせてください。
山に火事がおきました。
森に住む動物たちは、我先にと逃げていきます。
そんな中、ハチドリのクリキンディだけが湖からくちばしで水を運んで、
1滴ずつ山火事にかけていきます。
ライオンが「そんなことをして何になる」と言うと、クリキンディはこう答えました。
「私は、私にできることをしているだけ」。
世界の民主主義のありようを、山火事にたとえてみましょう。
コタカチはその火事を消そうとハチドリのような働きをしているだけかもしれません。
でも、みんなが、それぞれの場でハチドリのように小さな行動をすれば、
そしてそれをつなげることができれば、やがて火を消すこともできるでしょう。
私は、平和を作るという取り組みもまた同じだと思っています。
日本のみなさんが憲法9条を選びなおす作業にしても、同じです。
シンポジウムのあと。辻さん、中村隆一さんも一緒に。モモは面白い人たちと一緒にいるねえ。
そうなんだよねえ!
アフリカの貧困の話。
ビルマのサイクロンや、中国・四川の大地震の話。
いつまでたっても終わらない、世界中で今も続いている戦争の話。
どれもあまりに問題が大きくて、いっそのこと無関心を決め込みたくなる。
「戦争はいやだ」
「あたりまえの毎日を、世界中のみんなが送れるように」
そういうシンプルな本音は、本当はみんな持っている。
でも、そんなシンプルな想いのひとつひとつはあまりに小さくて、
それだけじゃ何も変えられないように思っていたけど…
ゴールデンウィーク、幕張メッセですごした数日間で、自分の気持ちが音をたてて動いた。
だって、
世界中から集まった人たち。
飛行機や、夜行バスや、電車で世界中から幕張に集まった人たち。
広島から71日間、幕張の会議を目指して歩いてきた人たち。
そのウォークに参加するために、東アフリカから日本に来た人たち。
赤ちゃんをスリングで抱えて歩いたお母さんとお父さんたち。
音楽で想いを表現する人たち。
イラクから来た人、
ガーナから来た人、
パレスチナから来た人、
スイスから、アメリカから、バヌアツから来た人。
たっくさんの、人。
2日間の集客人数は、2万人以上。
会場に入れない人も、3000人以上いた。
ノーベル平和賞受賞者のマイレッド・マグワイアさんからミュージシャンのUA、
お隣の佐藤さんまで、世界中・日本中から集まったあまりにたくさんの人たちの
「そろそろ本当に平和がほしいんですけど!」 という想い。
ビシバシ感じました。
シンプルなハチドリのひとしずくも、これだけ集まれば、
さらに大きなウネリになるまで近いんじゃないか。
そんな風にワクワクした。
いわゆる「護憲派」、平和運動の先輩たちは、ずっと「9条を守ろう」と言ってきた。
その努力には、心から感謝しなくちゃいけないと思っている。
私の世代の日本人は、
たぶん「戦争」といえばみんな第2次世界大戦を連想する。
今の時代は「戦後」ということになっている。
でも、第2次世界大戦「以降」に戦争で亡くなった人が、実は世界に2300万人もいる。
今も毎日続いている戦争とその死に、日本が直接関わっていないのは、ひとえに憲法9条が守られたからだ。
そうでなければ、
日米安全保障条約のもと、
日本は第2次世界大戦後にアメリカが関わってきたすべての戦争に若者を送っていたかもしれない。
ベトナム、朝鮮半島、パナマ、グラナダ、アフガニスタン、イラク… そのすべてに。
だから、「9条を守る」運動には心からの敬意と感謝を抱きたい。
でも、たぶん、
9条を「守る」という言い方の中にある防衛的で現状維持的なニュアンスは
今のご時勢ではウケない。 だから、最近9条が危機に瀕していたんじゃないか。
閉塞感のある今の日本では、
「改憲」「改革」「革新」をうたうマニフェストのほうが、
どこか斬新で素敵な響きに聞こえてしまうところがあるというか。
でも、
ケニアからきたフローレンス・ンパイエイさんは、「私の国にも9条があったら」と言っていた。
アメリカのアリス・スレーターさんは、「9条を拡大解釈して、世界の軍縮に使おう」と言っていた。
そう。 9条は、ただ「守ってる」だけじゃもったいない。そういう時代にきているのかもしれない。
60年前に書かれた9条には、
今私たちが日々むきあっているエコロジーの視点は盛り込まれなかった。
動物、植物、すべての命に対する暴力、自然界に対する戦争という視点もなかった。
今、地球がたいへんな時代を迎えていることは、みんなで共有していると思う。
戦争なんかしてる場合じゃないんだよね、本当に。
すべてがグローバル化している今の時代に本気で平和をつくりたいとき、
「日本の非戦」だけ守り抜くんじゃこと足りない。
「人間の安全保障」だけ考えているのでも、まだ足りない。
地球に住む「すべての生命の安全保障」を、
地球にあるすべての知力を駆使して考えなくちゃいけないんだ。
そして、平和と環境は、同じ文脈で語らなきゃいけない。
平和運動家がタバコを吸いながらマックでミーティングしたり、
自称エコ派の人が「憲法9条とか、そういう政治的な問題は、ちょっと」とか言うのって
カッコワルイし、時代錯誤。
これからは、「パックス・アメリカーナ」も「パックス・エコノミカ」も超えて、
「パックス・エコロジカ」の時代を拓かなくちゃいけないんだ。
コーラ・ワイズさんが言ってた、心に響くことば。
「私たちの娘が、孫が、いつかこう言う日がくるのを目指したい。
ねえお母さん、戦争って、なあに?」
長文、しかも支離滅裂ですが、
興奮さめやらぬままの9条世界会議レポートでした。
Be the change you wish to see in the world. Gandhi
あなたが見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなればいい ガンジー
●アウキ・カナイマ・ティトゥアニャ
AUki Kanaima Tituana
以下、スローウォーター・カフェ
ウェブサイトより転載:
キチュア語で、”自由の闘士”という意味の名を持つ。
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1492年以降、スペイン人の南米への侵略から始まる500年の歴史の中で、エクアドル先住民の社会は崩壊し、多くの命が奪われ、その政治制度、経済制度、宗教、言語は、全て変えられてきた。これに対して先住民族は、非暴力の平和的な抵抗のなかで、土地を求めて闘い、先住民族自らを再生させるための作業を黙々と続けてきた。その結果、この20年で先住民族の政治参加と権利回復は急速に進み、エクアドルの人口1,200万人のうち42%を占める先住民族の中から議員や自治体の首長が出始めるようになっていた。 |
「盗んではいけない。嘘をついてはいけない。誠意を持って生きよ」というキチュアの教えを大切にするこの31歳の若き知事の仕事ぶりは迅速で、彼の存在がインタグの森にとって重要な意味を持つようになるまで、そう多くの時間はかからなかった。
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キューバのハバナ大学に留学した後、エクアドルの大学で経済学を教えていたアウキは、経済の仕組みや政治制度を、西洋の社会や文化に統合される形ではなく、自分たちのアイデンティティを失わずに構築することが重要だと考え、より人間的で、環境に配慮した社会を作りたいという情熱を抱いていた。 |
1996年に先住民族キチュア出身としてはじめて群知事に選ばれる。社会、経済、文化、環境のあらゆる面での持続可能な発展および他民族、多文化の市民としてアイデンティティーの強化を目指し、リーダーシップを発揮する。 |
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■アウキプロジェクト:民衆議会 - すべて世代、人種に平等な権利 |
知事に就任したアウキは、他に例がない徹底した参加型民主主義を実践する。草の根民主主義とも称されるその取組において、アウキは誰もが参加できる政治を目指し、皆にこう呼びかけた。「民衆議会に来てください。直接、話をしましょう。あなたたちは、どんな開発、発展、町づくり、郡づくりを望んでいるのですか。皆の意見で、それをつくっていきましょう」と。 |
年に1回、選挙で選ばれる議員の議会とは別に、1年に1回、誰もが自由に参加できる民衆議会を開催した。最初の年は250人の住民が集まり、環境、衛生、健康、教育など、様々なテーマの委員会が設けられ、年ごとに参加者は増えていく。
これにより民衆の発想はガラリと変わる。これまでは、知事のまわりに議員がいて、その議員たちが考え、決めたことに、民衆は受動的についていくという状況だった。
しかし、アウキは明言した。「決めるのはあなたたちだ」と。「自分たち(知事、議員)は、市民が手に入れにくい専門的な情報を提供する責任を負う。しかし、最終的に決定するのは、あなたたちだ」。 |
もう一つの民衆議会の際だった特徴は、年令に制限が無く若者や子どもたちも参加できるということ。「子どもであっても、考えは持っている。どんな未来に暮らしたいのかというビジョンを持っている。しかし、ただ要求するだけでなく、青年、子どもたち自身がそれに向けて実際に活動するということが大事だ。民衆議会というのは、ただ要求を言うだけではなく、1年間に自分たちが何を行ってきたのか、その活動を自分たちで評価し、これから何をしていくのかということを考える場である。今までは、議員らに全てを任せてきたが、これからはそうではない。民衆が主人公で、自分たちが決めたら、それを自分たちで実行していかなければならない。」
さらに、アウキは「私は、君たちに約束(公約)をしている。もし、私がそれを守れない場合には、君たちには私をリコールする権利がある」と語り、自らの決意を伝えたのだった。
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■アウキプロジェクト:「生態系保全都市宣言」 |
アウキ知事は、農業・牧畜業・手工業・エコツーリズムといった事業に重点をおく。その最大の理由はそれらが持続可能な産業だからである。長期的に続けることができ、エクアドルの他の地方で推進されている石油開発や鉱山開発で見られるような環境破壊を引き起こす心配がない。「生態系保全自治体宣言」に基づく改革は、経済発展と環境保全の両立を可能にし、住民の経済基盤の成長につながる。 |
現在、エクアドルコーヒーの生産地、インタグ地方では重大な鉱山開発の問題が起きている。 |
今の鉱山開発問題に関して |
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■趣味:詩を読む、歌を歌う、サッカー・・・ |