高知新聞
天気追加:
地震情報
中部の天気
東部の天気
西部の天気

高知のニュース
国内・国際ニュース
おすすめトピックス

高知新聞購読申し込み

ミュージアムマップ
イベント情報

音声ブラウザーご使用の方へ

お買い物

ニュース検索

Google検索
Google


声ひろばなど投稿
記事データのご利用
後援申請の用紙
サイトからのお知らせ

NIE全国大会
にゅーすけっち
きんこん土佐日記 web版
高知元気力検定バナー
とさあち
釣りタイムズ
47NEWS ニッポンのGOHAN


土佐いごっそう倶楽部

地球33番地公式サイト















企業情報
高知県内リンク
医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (11)赤字批判は筋違い

激務の医療センター時代を振り返る溝渕医師(岡山旭東病院の医局) 「やっぱりあれは安過ぎたんだ」  高知医療センターを辞めて岡山旭東病院に復帰した溝渕雅之医師(48)がまず確信した両者の違い。それは、高知医療センターの安い価格設定だった。

 高知医療センターで撮ったCTやMRIの画像を、患者本人の希望でCD―ROMにコピーして渡す場合、請求額がわずか八十円。保険適用外なので、値段は病院側の自由裁量。需要はそれほど多くないが、旭東では一千五十円、高知市の近森病院は二千百円だ。

 「値段が二けた違うんです。職員の手間賃にもならない。僕はおかしいと言ってたんだけど。大事な個人情報がハンバーガーより安いなんて」

 手術の時に気付いたこともある。高知医療センターは一本五百円の吸収糸(体内で自然に吸収され消滅する糸)をどんどん使う。八本で一セットの針付き糸(四千円)を、一回縫って結んでは、切って捨てる従来のやり方だ。

 「一手術で四セットぐらい使うんです。旭東では一本の糸で数回縫合するから、一セットで済む。糸代だけで結構、差が出てしまうんです」

 高知医療センターの年間手術数は約四千五百件。一部の診療科の話だとしても節約できそうだ。

 断っておくが、旭東の縫い方は、ごく一般的な手技である。ではなぜ、高知医療センターではしなかったのか。

 「システムの問題でしょうね。高知医療センターは診療報酬が出来高払いだから、材料代が増えたらその分、収入も増えるのかも。その辺は事務方の仕事なので、僕らは詳しく知らないんですよ」

 一方、旭東では既にDPC(診療報酬の定額払い制)を導入済み。「この病気の収入はいくら」と最初から決まっているから、材料費も節約のしがいがあるわけだ。

 高知医療センターも本年度、DPCを導入する予定だったが国の方針変更で一年延びた。五億円の増収を見込んでいただけに痛い。

 だが、そういう技術論的なこととは別に、溝渕医師はもっと異なる、大きな視点から高知医療センターの赤字について語った。

 高知医療センターの赤字は毎年、二十億円ほど出て問題視されているのだが、「でもね、高知医療センターは普通の病院じゃない。南海大地震が起きた時の災害対策本部も兼ねている。県民はそこを忘れてはいけないと思うんです」。

 建物に免震構造を入れ、ヘリポートも設けた。一階の廊下には斜めの線が描いてあるが、それは単なるデザインではない。線に沿って臨時ベッドを並べるためであり、酸素の配管も来ている。職員も随時、訓練を行っているのだ。

 「普段は不要に見えるかもしれないけど、いざという時の備えなんです。あの施設が立派な裏には、そういう意味も含まれているわけですよ」

 つまり、日常の医療活動以外の大きなコスト負担があるのだ。それらもひっくるめて「赤字が多い」と批判するのは筋違いだという。

 「あそこは本当の意味での最後の砦(とりで)。がんや救急だけの砦じゃない。その部分は医業収益と別に考えてあげてほしいですね」

 災害対策だけではない。高知医療センターは小児、産科救急、多発外傷などの集約的治療や、ヘリ搬送によるへき地への救急医療の普及など、これまで高知県になかった高度医療も導入した。収益を考えると手を出しにくい不採算部門だが、県民のための政策医療として抱えているわけだ。

 「高知医療センターは、そういう大きな使命を、もっと県民に知ってもらうべきでしょう。今までのような不言実行だけで、どこまで理解されているんでしょうかねえ」

 ただ、そこまではっきり思えるのは、考える余裕ができたからこそだろう。高知医療センター時代は目の前の仕事を片付けるだけで精いっぱいだった。

 【写真】激務の医療センター時代を振り返る溝渕医師(岡山旭東病院の医局)

(2008年07月05日付・夕刊)

 
サイトマッププライバシーポリシーネット上の著作権新聞購読お問い合わせ