ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン愛知> 記事

企画特集

【地域医療はいま】

60億円赤字 再建必死

2008年06月25日

写真

吹き抜けロビーを備えた津島市民病院=愛知県津島市、加藤丈朗撮影

【津島市民病院】

行動計画・医師年収増・開業医活用

●全職員に意見募る

 愛知県津島市の津島市民病院は、名古屋市の西側にある「海部医療圏」9市町村の地域医療を担う。約60億円の累積赤字を抱え、経営の立て直しに必死だ。26日には今年度初めての経営評価委員会が開かれる。(岡崎明子)

 津島市民病院では医師不足が急速に進み、救急や一部の診療科の受診が制限されている。多くの救急患者が名古屋市中村区の名古屋第一赤十字病院などに流れている。
 津島市民病院のつまずきは153億円を投じた増改築から始まった。05年に289床から440床に増床。1床当たり約3500万円の建築費は民間病院の倍かかった。
 だが、04年度に始まった臨床研修必修化で思惑が狂った。医師の派遣元である大学が医師を確保できなくなり、津島市民病院は期待通りに派遣してもらえなくなった。
 特に内科医が足りなくなり、05年度の12人から07年度は6人に。今年5月の医師数は39人と定員を15人割った。07年度の病床稼働率は62%に低下し、一部病棟を閉鎖。1日約1200人いた外来患者も約700人に減った。
 透析センターの稼働は8カ月間にとどまった。約7千万円で導入した尿管の結石破砕器も昨年7月から使われていない。月20人に使うことで採算が取れる東海地方初の放射線治療の最新機器「サイバーナイフ」の利用者は月10人弱。経常損失は06年度に12億9千万円、07年度17億7千万円と増え、07年度の累積欠損金は62億4千万円に上った。
 市は外部の専門家らによる市民病院改革委員会の答申をもとに、07年2月に市民病院経営改革行動計画をつくり、改革に乗り出した。昨年5月に就任した伊藤文郎市長も病院の経営改革を喫緊の課題に掲げた。地方財政健全化法で、08年度決算から病院の会計などを連結させ、自治体財政の健全度が測られるようになるためだ。
 伊藤市長と鈴沖勝美副市長は医師の派遣要請のために、昨年だけで大学の医局を延べ100回訪ねた。冷ややかな反応の大学側に、伊藤市長らは「津島が倒れれば、患者が名古屋の病院に押し寄せる」と再考を求めた。
 他の自治体病院に比べ低かった医師の年収も平均120万円上げた。昨年7月からは週1日、市医師会の開業医5人が夜間3時間、内科の救急外来を院内で受け持ってカバーすることになった。大学側も病院存続に理解を示すようになってきたという。
 しかし、昨年11月に開かれた外部の病院経営評価委員会は、「2月の行動計画はコンサルタントが作ったもので、現場から積み上げられたものではない」と批判し、見直しを迫った。病院は全職員に改革に向けた意見を募り、7月までに改訂版を作る。
 鈴沖副市長は「事務方から『自分たちは努力している。医師が足りないだけ』という意見もあったが、全員の意識改革が必要」と訴える。
    ◇
 ご意見、ご感想をメール(n−iryo@asahi.com)またはファクス(052・231・6014)でお寄せ下さい。

朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

ここから広告です

広告終わり

ここから広告です

広告終わり

ここから広告です

広告終わり

広告終わり