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医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (5)10年前、崩壊の危機

青森県立中央病院の昨年の脳動脈瘤クリッピング手術数は113。毎年、全国のトップ10前後の症例数(同病院手術室) 「脳外科」と「残業月二百時間」は同じでも、全く違う青森県立中央病院と高知医療センターの内情。だが、もっと驚かされたのは、多忙でもレクリエーションは欠かさず実践していたことだ。脳外科全員でスキーや花見に行くという。

 ―信じられません。

 「やるよ、全部。家族旅行もね」と西嶌(にしじま)美知春・副院長兼脳神経センター長。

 ―家族旅行も?

 「近くにあるんだよ、八甲田山とか。コテージ借りて、全員の家族が行くの。一泊二日で」

 ―うそでしょ!

 「うそじゃねえよ。すぐ近くだから、何かあっても駆け付けられるし。花見は五月一日だよ」

 ―へー!?

 「こういうふうにして遊ばないと駄目なんだ。東北大や、おれが行ってた富山大はそうだったんだ。嘉山大先生(山形大医学部長)とこだってそうだと思うよ。彼は東北大でおれの一年後輩なんだけど、馬力はものすごいからね。おれのモットーは『よく遊び、よく学ぶ』んだ。『よく学び、よく遊べ』なんて言わないの」

 かといって、勉強も手を抜かない。「うちは論文とか学会発表しないと手術させないんだ」

 それができるのも、マンパワーあればこそ。年齢構成もバランスが良く、五十九歳、四十五歳、三十代半ば二人、そして若手二人。そのうち四人が脳動脈瘤(りゅう)のクリッピング手術をできる。うらやましい体制。だが、そうなったのは最近のことだという。

 平成十年、青森県立中央病院の脳外科は、ベテラン医師が相次いで辞めて崩壊寸前。そこへ、富山大の講師だった西嶌医師が赴任した。母校・東北大の恩師からの勧めだった。母校の支援でピンチを乗り切り、その後、富山大などからも人が集まる。現在の六人体制になったのは昨年だ。

 ちなみに東奥日報で「残業二百時間」と紹介されたのは昨年七月の話。今は百六十時間に減った。というのは、夜中の手術に制限が掛かったからだ。

 なぜか。麻酔科の常勤医が四人に半減したのだ。青森県立中央病院の全身麻酔手術は昨年、約二千八百件。高知医療センターは三千四百件弱だが、麻酔科医は十一人もいる。

 「四人で夜中も手術やってたら、麻酔科の先生は倒れちゃうからね」

 というわけで、午後九時を過ぎる手術は基本的にしない。では、夜中に重症の救患が来たらどうするのか。

 「命が懸かってる場合以外は、目いっぱい血圧下げて、翌朝まで安定させるんだよ」

 第三部で紹介した、高知医療センターの麻酔科崩壊と同じような事態が青森県立中央病院では今、起こっていた。

 神経内科も二年ほど前は崩壊寸前。脳梗塞(こうそく)の患者は循環器内科や糖尿病内科が診て乗り切った。病院内の部分的崩壊はどこでもあることらしい。

 そして、ここもやはり、インセンティブ(動機付け)があった。待機当番医が呼び出されると一回三千円の手当。時間外手当とは別枠だ。

 また、他院からの転送要請も、即座にすべてOKするわけではない。画像伝送システムで結ばれている地域の基幹病院からの場合は、患者のCTをまず受信。それを脳外科医が読影し、転送の必要性を判断するという。

 こういうシステムがしっかり働いているということは、医師不足が深刻なことの裏返し。医師の疲弊軽減には必要なのだろう。

 ―で、高知医療センターはどうすればいいのでしょう。

 「アナザーワールド(別世界)だなあ…。人材の確保が急務なんだけど、どこも大変だからなあ…」

   ◇  ◇

 強烈なリーダーシップと、インセンティブが印象に残った東北取材。圧倒されて帰高すると、高知医療センターを去った溝渕雅之医師(48)から一冊の本が届いた。

 【写真】青森県立中央病院の昨年の脳動脈瘤クリッピング手術数は113。毎年、全国のトップ10前後の症例数(同病院手術室)

(2008年06月27日付・夕刊)

 
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