高知新聞
天気追加:
地震情報
中部の天気
東部の天気
西部の天気

高知のニュース
国内・国際ニュース
おすすめトピックス

高知新聞購読申し込み

ミュージアムマップ
イベント情報

音声ブラウザーご使用の方へ

お買い物

ニュース検索

Google検索
Google


声ひろばなど投稿
記事データのご利用
後援申請の用紙
サイトからのお知らせ

NIE全国大会
にゅーすけっち
きんこん土佐日記 web版
高知元気力検定バナー
とさあち
釣りタイムズ
47NEWS ニッポンのGOHAN


土佐いごっそう倶楽部

地球33番地公式サイト















企業情報
高知県内リンク
医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (4)青森も残業200時間

青森県立中央病院・脳外科の親分、西嶌副院長(青森市東造道) 青森に行ってみたい、と思ったのは昨秋のことだった。

 ネット検索で「医療崩壊」をたどって行くと青森県の新聞、東奥日報の連載を見つけた。青森は日本有数の医師不足県。同紙の脳卒中特集の中に、青森県立中央病院脳神経外科の医師たちが、高知医療センター同様、残業二百時間であることが出ていた。

 高知医療センター脳外科の溝渕雅之医師(48)に記事を見せると彼は言った。

 「青森の西嶌(にしじま)先生といったら、かなり有名ですよ」

 脳外科の年間手術数は医師六人で六百件余り。一日で血管奇形、脳動脈瘤(りゅう)、脳腫瘍(しゅよう)と三つの大手術をこなすこともある。腕を磨くため鶏肉で血管吻合(ふんごう)の練習もしている―そんな内容だった。

 溝渕医師は解説を続けた。「ものすごく勉強して、ものすごくやる所らしいですね。血管奇形が二時間か。速いなあ…」とつぶやきながら、こう言った。「うちと決定的な違いが一つある。分かりますか?」

 ―さあ…。

 「ものすごく手術に特化しているはず。うちみたいに脳外科医が当直で救急車のベル(直通電話)持ちをやらされたりはしてないと思う。だから、鶏肉で練習する時間もある。きっと神経内科も心療内科も、専門の科が診てくれてるんですよ。うちは神経内科がないから、けいれんや髄膜炎も診るし、意識障害、糖尿病昏睡(こんすい)、リストカット、自殺企図まで脳外科が出るんだから」

 そしてこう続けた。

 「青森の先生の残業二百時間は脳外科の仕事のためだけ。それなら不満はないですよ。自分が好きで選んだ仕事をやるのは、医師は苦にはならないから」

 ちなみに、高知医療センター脳外科の昨年の手術数は三百余り(うち血管内手術約百)。医師数は今春まで六人だった。既に書いてきた通り、不眠不休に近い状態で働いても青森県立中央病院の半分である。果たして、溝渕医師の予想は当たっているのか…。

 図星だった。親分肌の百戦錬磨、西嶌美知春・副院長兼脳神経センター長(59)はこう言った。

 「あなたの記事読んで涙がこぼれたよ。おれんとこのシステムがどんなに恵まれているのか良く分かった。違い過ぎるよ」

 最大の違いは、神経内科が五人もいることだ。

 「基本的に脳梗塞(こうそく)の急性期患者は全部、神経内科が診てくれるんだ」

 脳卒中の六割は血管の詰まった脳梗塞。その患者を他科が診てくれたら、負担軽減はものすごい。同席した西村真実脳外科部長(45)も言った。

 「神経内科がいなかったら僕らは倒れます。それと、うちは一次救急を脳外科が診なくていい。それもかなり助かるんです」

 さらにもう一つ大きな違いがあった。それは血管内手術(昨年は百四十五例)を神経放射線科の医師主体で行っていたことだ。

 「ここがまた、すごいところなんだな」と西嶌センター長。

 「西村先生も血管内の専門医だけど、最近は大きな開頭手術が多いからね。血管内もやると体が持たないんだよ」

 血管内手術は脳外科医も助手として入るし、主治医も脳外科が引き受けるが、CTやMRIの検査、読影はすべて神経放射線科医に任せているそうだ。

 溝渕医師の予測通り、脳外科は特化していた。その結果、脳外科の入院患者は、四分の三を手術患者が占めていた。

 西村部長の以前の勤務先の脳外科は三割だったそうだ。

 「手術をしない脳梗塞の患者さんの入院が多くて、転退院の手配ばかり。七、八割は脳外科の仕事じゃなかったですからね。たぶん、どこの病院でも同じような状況。そういう中で皆、症例を集める努力をしてると思うんです」

 【写真】青森県立中央病院・脳外科の親分、西嶌副院長(青森市東造道)

(2008年06月26日付・夕刊)

 
サイトマッププライバシーポリシーネット上の著作権新聞購読お問い合わせ