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医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (1)山形の強烈改革

「日本の医療を崩壊させないためにやってるんです」と熱く語る山形大嘉山医学部長(山形市飯田西) 四月下旬、山形大学を訪ねた。医学部長であり、日本脳神経外科学会の学術委員長でもある嘉山孝正・脳外科教授(58)に会うためだ。

 強烈なリーダーシップで医学部改革を進める一方、日本の脳外科全体を見渡す立場にもある。激務であえぐ高知医療センター(高知市池)脳外科はどうすればいいのか。そのヒントをつかみたかった。

 「うちはね、学生の茶髪とピアスは禁止です。なぜか分かります?」

 教授は独特の論理で改革を語り始めた。

 「だって、救急車で運ばれてきたお年寄りが、意識回復した時に不快感持って、血圧上がって再出血したら、責任は誰が取るんです? 病院長なんです。茶髪は開業してからやればいい。患者さんが来る自信あるならね。そういうことを入学式で真剣に言うわけですよ。以前はグリーンやモヒカンもいましたから」

 やや強引だが、妙に説得力がある。話を聞けば、この人もまた、ミスター救急だった。

 平成六年、東北大講師から山形大に助教授で着任。救急部長を任されると、「救急は医療の原点」を掲げ、付属病院への救急搬送を積極的に受け入れ始めた。搬送数は年間二百台から十倍に。非協力的だった診療科の教授には「学生の教育のためだから」と理解を求めた。この七月には増築が完了。救急外来を大幅拡充し、手術室にもMRIを入れる。画期的だ。

 十五年、医学部長に就任すると教授選考法も変えた。論文はうまく書けても手術の腕が伴わない人物を選ばないようにするためだ。

 「国立大の使命は、良い医療人を育てること。研究はその余力でやってくださいって教授会でお願いしたんです。研究も大事だけど、教育は大学だけでしょ。教育が最優先です。それができない教授は出て行ってもらって結構。研究所に行ってくださいって」

 弁も立つが腕も立つ。週刊朝日が特集した十六年の「名医が選ぶ名医」、脳腫瘍(しゅよう)部門の四人にも挙げられた。

 そんなわけで山形大はぐんぐん台頭。赤字経営だった付属病院も無駄をそぎ落とし黒字化。十六年度には、週刊東洋経済による国立大での収益力ランキング日本一(十七年度は高知大病院が一位)。卒業生の医師国家試験合格率も十九年度、国立大トップとなった。

「山形大を小粒でもキラリと光る国際医療センターにしたいんです」

 一日の睡眠時間は四、五時間。就寝前には法律学、哲学、経済学、社会学の本も読み、朝は五時に起きて六時から脳外科の勉強。七時半からは医局でカンファレンス。激しい生活を送る。

 そんな剛腕教授でも、迷うことがあるという。

 「自分はいいことやってるつもりなんだけど、実は周囲に迷惑を掛けてるんじゃないかってね。電車の中の楽しそうな家族連れを見た時なんか特に思うんですよ」

 若いころからポケベルでしょっちゅう呼び出され、まともな家族サービスをした覚えがない。

 「日本の医者ってのは赤ひげですからね。お金のことなんて考えない。患者さんを一生懸命治療するんですよ。それでいて、最近は何かあったら医療過誤だってたたかれるでしょ。頑張ってるつもりが、いつの間にか後ろから石を投げられてるわけね」

 象徴的な事件が十八年の福島県の産婦人科医逮捕。帝王切開中の妊婦が、手術室の中で出血のため死亡。一年以上たって逮捕された。

「そんな社会に国民がしてしまったんです。じゃあ、もう頑張らずに普通にやりましょうと。誰だって萎縮(いしゅく)しますよ。僕のモチベーション? 責任感しかないですね。団塊の世代のわれわれが今やらないと、日本の医療は崩壊してしまうから。イギリスみたいにね」

 【写真】「日本の医療を崩壊させないためにやってるんです」と熱く語る山形大嘉山医学部長(山形市飯田西)

 ◇………………………◇

 連載最終章は、高知医療センター脳外科の今後の在り方について考えます。

(2008年06月23日付・夕刊)

 
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