社説(2008年7月6日朝刊)
[沖工「猛暑校舎」]
生徒の悲鳴が聞こえる
県立沖縄工業高校(那覇市、生徒千六人)の生徒らが暑さで参っている。
校舎を建て替えるためプレハブの仮設校舎で授業しているものの、梅雨明け後は暑い日が続き、室温が四〇度以上になる日もある。生徒の間から頭痛、吐き気のほか、「熱っぽい」など体調不良を訴える声が相次いでいる。
一日に約二十人の生徒が保健室を利用し、氷のうを求めて八十人余りが駆け込んだ日もあったという。多くの生徒が熱中症のような症状を訴え、弁当も腐るほどだというから、暑さがいかに猛烈なものかがうかがえる。
気温四〇度以上というのはどういう状態だろう。沖縄なら炎天下でもそこまで上がることはない。しかし、沖縄工業の各教室は、さながら蒸し風呂の状態であり、およそ勉強する環境ではない。
仮設校舎は、くぼ地になった運動場に建てられている上、改築中の校舎が隣接し、風が通りにくいという独特の地形も災いしているようだ。
文部科学省は、「学校環境衛生の基準」として、夏期の室温が三〇度以下、相対湿度は30―80%が望ましいと示している。
しかし、同校の場合、五月以降は室温二七―四三度、湿度は51―82%となり、数字の上でも厳しい環境で学習していることが分かる。
改築工事は五月から始まった。学校側は当初から暑さを想定して、屋根にスプリンクラー、窓に遮光ネット、教室に大型扇風機を取り付けたが、自然の力の前では根本的な対策とはなっていない。
子どもたちには等しく教育を受ける権利がある。機会の均等はもちろん、教育の質も場所や環境によって左右されるものであってはならないはずだ。
県内では、毎年のように学校の建て替え工事が進められている。沖縄工業同様、プレハブ校舎で授業しているところも複数ある。風がよどみ、蒸し暑い中で、授業を受け続けると、体力の消耗は激しく、集中力が低下することは想像に難くない。
気掛かりなのは学習意欲の減退である。数十年前はクーラーもなければ扇風機もなかった、というような精神論で解決する話ではない。地球の温暖化、ヒートアイランド現象と、街は確実に暑くなっている。日の高まりとともに暑さが増せば、せっかくのやる気も失せよう。子どもの向学心を奪い取るような環境の格差があってはたまらない。
沖縄工業では、あまりの暑さに生徒らが、クーラー設置を求める署名活動を展開したり、授業時間を短縮したりするなど対応もしている。仲村守和県教育長は五日、冷房の設置を明らかにしたものの、改築を優先するあまり対策が後手に回った感は否めない。
四日には県議会でも同問題が取り上げられ、改善を求める声が相次いだ。五日には仲村教育長自ら同校を訪ね、暑さを実感した。短い高校生活の中で、学習環境の差をこれ以上広げてはいけない。子どもたちの意欲を摘み取ることがないよう一日も早い対応を求めたい。
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