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連載短編小説  入選作品発表!


 『早稲田ウィークリー』新企画「連載短編小説」の募集には、21人の在学生の皆さんから作品をお寄せいただいた。編集室一同、深く感謝の意を表したい。

 厳正なる審査の結果、入選作1編を含む最終選考対象作品4編に対して、以下のような短評が寄せられた(選外については、氏名50音順で掲載した)。

 今回、選考は文学部の青山 南(文芸専修)、芳川泰久(仏文学専修)の両教授にお願いした。

 なお、入選作品「親鳥もどき」は今号より10週にわたり、本紙に連載する。作者の神室沙弥さんには岩井方男学生部長から賞状および図書券3万円分が贈呈された。


入選作

作品名 親鳥もどき
作 者 神室沙弥(かむろ・しゃび) (商学部3年) ※ペンネーム
短評(青山)
ハードボイルド風な語り口に、ユーモアと哀愁がうまくかぶさって、徐々に「おれ」の真実が明かされていく展開がうまい。連載を意識した毎回の書き出しの処理もていねい。
短評(芳川)
この短さのなかで物語の起承転結がくっきりとあり、しかもディテールがよく描けている。ユーモアもある。ためらわずに受賞作として推したい。ただし、タイトルは一考の余地あり。

入選者 神室沙弥 さんのコメント

 入選の知らせはまったく思いがけないものでしたが、初めて自分の書いたものを発表させていただく機会を得て、大変うれしく思っています。
 もともと読書好きで、ジャンルを問わず読み漁っていたのですが、今年の1月頃から自分でも小説を書いてみようかと思い立ち、創作を始めました。特に創作に関する専門の勉強をした経験はなく、あくまでも独学ですが、本格的な文学賞を視野に入れ、8万字程度の中編に挑みました。延べ8作に取り組みながらも後半での挫折を繰り返し、結局完結したのは1作だけというありさま。
 そんな矢先、帰省中の8月にひょんなことから今回の短編小説募集を知りました。短編でしかも連載というのは初めての経験で、「詰め込んだことがバレないように詰め込む」作業に苦労しましたが、草稿3日、推敲7日程度で一気に書き上げました。小説を書く際に心がけていることは「論理と肉感のバランスを大切にする」ことです。読者に分かるように論理的に書こうとするとガチガチになって、肉感が損なわれる恐れがあるので、このバランスをキープするのが難しいですね。
 今回の入選を励みに、今後も大きな文学賞を目指して創作に取り組んでいこうと思います。ただし、現在3年生なので、一応この秋からは就職活動も始めていきます。狭き門であることは承知のうえで、出版社を狙っていきたいと考えています。

選 外

作品名 石女
作 者 鶯谷 惇(教育学部教育学科2年) ※ペンネーム
短評(青山)
自己中心の語り手の自己中心ぶりがこの作品のパワーだから、その勢いが中ほどでとどこおるのが惜しい。まずい枇杷をもいで食べるクライマックスは、印象に残る。
短評(芳川)
最後に“素顔”をのぞかせるまでの「仮面の告白」が読ませるが、欲をいえば、“素顔”さえ宙づりにする工夫が欲しかった。タイトルは半ば“死語”になっているが、それでも“差別的”である。


作品名 風の凪ぐ一瞬
作 者 笹本貴宏(教育学部理学科4年)
短評(青山)
長期にわたる話が、時間をばらばらにして順不同にならべているために、かたちを成さない。「悲しみ」を書きたいという思いが伝わってこないのが、残念。
短評(芳川)
短いなかに、主人公の成長を家族の抱える母の病いとともに描き込んでいる。


作品名 アバンチュール
作 者 松永天馬 (同志社大学神学部神学科4年     ※現在、交流学生として本学第一文学部に在学)
短評(青山)
観念的な突飛な話は、どのように持続させるか、が難題。1章、2章、3章くらいまでは快調だが、そのあとがつづかない。奇想天外な話には格段の集中力が必要。
短評(芳川)
応募作のなかで“エクリチュール”を意識した唯一の作品である。作品のフィクション性をどう受けとるかで、評価は分かれるだろうが、ある種の果敢さは評価したい。

(2004年10月7日掲載)

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First drafted 2004 October 7.