夕刻、肉やスパイスを買うため家を出る。
何という暑さだろう→
でもしばらくこの通りを歩いていないな→
出かける用事なかったっけ?→
あれ?……という連想で、約束があったのを思い出した。
後を歩いている妻を振り返り、
「やべ。今日芝居観に行くんだったわ」
「え〜、カレーどころじゃないじゃん。何時なの」
「ケータイ家に置いてきたからわかんね」
「あんた、帰りなさいよ」
「おう」
てなわけで一人、急ぎ帰宅。
幸い、新宿で18:00の開演までは時間があった。
新宿の人の多さは異様だった。
ホームから溢れた人が、線路に落ちちゃうぞ。
通りにも群衆。
なんか暴動でも起こっているみたいじゃないか。
芝居は正直凡庸で長く、困ったなあと思っているうちに、客電が灯る。
いつもなら芝居師匠の岡崎香が、楽屋にずんずん入ってゆき、作家・演出家・役者さんらに紹介してくれるのだが、なんだか不機嫌のようだ。
「誰かに挨拶はいいのかい?」などと、こっちがオロオロしてしまう。
岡崎先生無言。
「どっか寄ってくか?」
「あなただいじょぶなの? 寄ってこうか」
てなわけで、温い空気がからみつく新宿の街へ降りたった。
「陶玄房」もまた混んでいた。
岡崎は育児本も書いているくらいなので、お互いの子供の話などもよく通じる。何という暑さだろう→
でもしばらくこの通りを歩いていないな→
出かける用事なかったっけ?→
あれ?……という連想で、約束があったのを思い出した。
後を歩いている妻を振り返り、
「やべ。今日芝居観に行くんだったわ」
「え〜、カレーどころじゃないじゃん。何時なの」
「ケータイ家に置いてきたからわかんね」
「あんた、帰りなさいよ」
「おう」
てなわけで一人、急ぎ帰宅。
幸い、新宿で18:00の開演までは時間があった。
ホームから溢れた人が、線路に落ちちゃうぞ。
通りにも群衆。
なんか暴動でも起こっているみたいじゃないか。
いつもなら芝居師匠の岡崎香が、楽屋にずんずん入ってゆき、作家・演出家・役者さんらに紹介してくれるのだが、なんだか不機嫌のようだ。
「誰かに挨拶はいいのかい?」などと、こっちがオロオロしてしまう。
岡崎先生無言。
「どっか寄ってくか?」
「あなただいじょぶなの? 寄ってこうか」
てなわけで、温い空気がからみつく新宿の街へ降りたった。
けれど結局はいつも、高校時代の話や同窓生の消息話になる。
彼女はかなりの情報通なのだ──つまり、人付き合いがよい。
楽しく談笑するうち、またもや終電間際。
ふだん終電間際になれば都心の宿確保に走るので、終電に乗るのは岡崎といっしょの時と決まっている。
「もう45分だぜ」
「だいじょぶだいじょぶ、余裕よ」
とかいいながら、前回は南口で走ったんだ。
今回は3分ほど余裕だった。
「もう45分だぜ」
「だいじょぶだいじょぶ、余裕よ」
とかいいながら、前回は南口で走ったんだ。
今回は3分ほど余裕だった。
山手線に乗る岡崎と別れて乗り込んだ総武線は超満員。
事件が起こったのは、東中野でのことだった。
(つづく)