「僕はこれを、守っているんです。」
「いったい中身は何だい?」
「よくわかりません。これを守っている自分に或る日、気付いたんです。」
「大切なものなのか?」
「だと思います。いえ、きっと大切なものです。」
「なぜ言い切れる? 中身を知らないくせに。」
「ただ信じてる……それだけなんです。疑いが兆す時もありますが……。でも、信じて守り続けるしか……。」
「内実がはっきりしないものなど、私には守れないね。大切だとも思えない。」
「あなたの言うことの方が正しいのかもしれませんが……。」
「羨ましいよ。皮肉ではなく、心から。老いて明日をも知れぬ身には、希望を信じることが難しいからね。守るよりも、守られるほうが、重要になるからね。」
「とにかく僕は、信じてこれを守り続けます。だから、どうか、どうか、あなたも、僕と一緒に。」
「……ありがとう。」