「ダビング10」の運用が始まり、消費者にアピールする看板も設置された=東京・有楽町のビックカメラ有楽町店 |
デジタル放送番組を10回まで複製できる「ダビング10」の運用が4日、始まった。対象機器となるハードディスク駆動装置(HDD)付き録画再生機(レコーダー)に、一部メーカーの製品で不具合が起きた。消費者の利便性を高めるダビング10は約1カ月遅れで運用されたものの、根底にある著作権保護の問題は、関係者の間で依然として火種がくすぶり続けている。
レコーダーやパソコンに内蔵されたHDDに録画した番組は、これまで1度しかDVDや新世代DVDなどの記録メディアに複製できなかった。ダビング10に対応する性能を持つ比較的新しい製品は、4日前後から放送を通じて機器に送信されるソフトにより、10回の複製が自動的に可能になる。送信されるソフトが、機器に組み込まれたソフトを更新してコピー制限が緩和される仕組みだった。
不具合が判明したのは松下電器産業製のレコーダーの一部機種。1日に送信が始まったソフトの影響で、レコーダーの画面に「HDDをフォーマット(初期化)してください」と誤った表示が出たため、利用者から電話で約300件の問い合わせがあったという。送信ソフトのプログラムにミスがあったのが原因とみられ、松下は3日までにソフトの修正を終えた。
このほか目立ったトラブルはなかったが、東芝では先月下旬以降、「所有する製品はダビング10ができるのか」などと、消費者からの問い合わせが通常より2割近く増えたという。
一方、家電量販店では、ボーナス商戦を盛り上げる「ダビング10効果」に期待する声も出ている。ビックカメラ新宿西口店の売り場担当者は、「レコーダー売り場は普段の平日より3〜4割程度も客が多い」といい、北京五輪も間近に控えるなか需要の高まりに声を弾ませる。
ダビング10は、メーカーと対立していた著作権団体側が、「補償金の問題とダビング10を切り離して考える」との考えを示したことで、1カ月遅れで解禁に至った。ただ、文化庁の小委員会が10日に開かれ、補償金問題が再び話し合われる。今後の小委員会では、新たに補償金の対象となったブルーレイ・ディスク(BD)のレコーダー以外のデジタル機器の補償金問題がテーマとなる。文化庁は「(メーカーが反発する)HDDへの課金見送りが決定したわけではない」としており、問題の行方は混とんとしている。
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【用語解説】ダビング10
デジタル放送番組の録画をコピー(複製)できる回数を定めた新ルール。映像は10回までコピーできるが、10回目には元データが自動的に消去され、コピーを再コピーすることはできない。従来の「コピーワンス」では1回しかコピーできなかったため、制限が厳しすぎるとの批判があり、総務省の審議会で放送業界、家電業界、著作権団体などが話し合って規制を緩和した。
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