【北京・大塚卓也】中国の電力各社が、需要最盛期の9月にかけ、大規模な計画停電を実施する。国際的なエネルギー価格の高騰で国内の石炭市況が跳ね上がり、燃料の調達難から一部の火力発電所が運転停止に追い込まれているためだ。中国政府は、五輪開催地の北京、天津などへの供給を優先し、国際的な影響を極力避ける意向だが、日本企業の工場が集まる沿海部では操業短縮を求める動きが出始めており、生産活動への打撃は必至だ。
中国の電力業界関係者によると、今夏の電力不足規模は最大1800万キロワットで、日本の東北電力1社分に相当する見込み。発電所の新設が相次いだ06、07年は不足量が1300万~1000万キロワットまで緩和されたが、今年は「停電が社会問題化した04~05年に匹敵する深刻な状況」(関係者)になる。
標準的な国内炭価格は、07年の1トン=480~550元(1元=約15円)から、今年は700元前後に急騰。中国政府が、事故の相次ぐ小規模炭鉱を次々閉鎖してきたことも重なり、内陸の産炭地から遠い広東省などでは同900元前後まで上昇している。
中国では、電力供給の9割を火力発電が占め、そのほぼ全量が石炭火力。政府は電気料金を低価格に統制しているため、発電量が増えるほど電力会社の損失が膨らむ。国営電力5社は、昨年までの黒字から、今年第1四半期(1~3月)には計27億元の赤字に転じた。燃料在庫の減少で運転を止めた発電所は5月末段階で計600万キロワット超に達し、その後も沿海部を中心に運転停止が広がっている。
従来、広東など周辺省に150万キロワットの余剰電力を供給してきた四川省も、5月の大地震で電力設備が倒壊し、逆に省外から電力を調達する必要に迫られたことも響いた。
停電は一般家庭も対象で、地区ごとに異なる方法で実施される。山東省青島市では6月初旬、市政府が企業ごとに輪番での操業停止や操業短縮などを指示。上海市などでも9月下旬まで輪番操業停止が指示される見通しだ。
毎日新聞 2008年7月5日 15時00分(最終更新 7月5日 15時00分)