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【主張】生保改善命令 消費者保護まだ不十分だ
金融庁は保険金の不払い問題で日本生命保険など生保10社に業務改善命令を出した。問題の発覚以後、生保各社は自主的に改善策を講じてきたが、「契約者保護はまだ不十分」とされた。
長年にわたって消費者軽視の姿勢で営業を続けてきた生保に対して、厳しい措置を下したのだ。生保各社は今後、再発防止と信頼回復に向けて真摯(しんし)に社内改革を進めてほしい。
生保の不払い問題は、平成17年2月の明治安田生命に対する業務停止命令がきっかけである。それ以降、他社でも次々に同様の不払いが判明した。
この問題では金融庁は当初、生保業界の自主調査を尊重する考えだった。だが、業界は調査に消極的だったため、19年2月に全社に対してすべての保険商品について不払いの件数と金額を報告するよう命じた。
今回、金融庁の姿勢として注目されるのは、たとえ明確な法令違反が確認されなくても、契約者保護が不十分なら業務改善命令を発動するとの判断基準が示された点である。
各社が再発防止策を講じていることは評価しながらも、その基準に基づけば、まだ生保不信は払拭(ふっしょく)されておらず、生保の契約者保護の体制は不徹底と断じた。
この処分に対して業界内にはなお不満が残っている。「意図的な不払いではない。だから、行政処分にはなじまない」との主張も根強い。
しかし、契約者保護を第一と位置付ける金融商品取引法の視点からすれば、今回の措置は妥当な判断であろう。
10社は、8月1日までに業務改善計画の提出を求められている。各社がそれに基づいて、内部管理体制の構築や情報管理、法令順守の徹底など再発防止策を急ぐべきなのは言うまでもない。
商品の改善も必要だ。契約者が、保険会社にいわれるままに特約に加入したケースが多い。その中には、健康保険など公的保険でカバーされていて、消費者には不要な特約や保険商品も多い。各社とも、消費者に有利な契約は何かという視点から、特約の見直しにも取り組んでほしい。
「契約を集める時は一生懸命だが、支払う時は冷たい」。そんな生保の体質が改められるのを期待する。経営改善に向けた誠実度が問われるのはこれからである。