経済財政諮問会議の「構造変化と日本経済に関する専門調査会」が報告書をまとめた。表題は「グローバル経済に生きる――日本経済の『若返り』を」というものだ。
グローバル化、総人口の減少、低炭素社会の構築など日本経済にとっての試練を乗り越えるために、今後10年間に何をすべきかを示した経済構造改革の処方せんだ。
かつて日本銀行総裁を務めた前川春雄氏が1986年に中曽根康弘首相に提出した経済構造報告書になぞらえて、21世紀版の前川リポートと位置づけられている。
この20年間に日本の経済構造は一変した。高齢化率は11%から21%へ上がり、出生率は1.7から1.3へ低下した。実質成長率(5年平均値)は4.8%から2.1%へ下がり、国と自治体が抱える長期債務残高の国内総生産(GDP)比は66%から150%に膨れた。
世界での地位低下も進んだ。93年に経済協力開発機構(OECD)で2位だった1人あたりGDPは18位へ後退し、世界競争力ランキングも22位に下がった。そこに資源高・食糧高という新たな制約がのしかかっている。まさに経済を若返らせなければ、日本はじり貧の道を歩まざるを得なくなる状況だ。
それに対して報告書が示した処方は(1)国境や官民の境を越えた人材の自由な移動(2)起業の飛躍的向上(3)出生率1.8への回復(4)10年以内の道州制実現(5)地球環境と両立する成長――の5点。官民を挙げて取り組むべき行動指針として至極もっともなものばかりだ。逆にいうと、論は尽くされている感がある。
となると、日本経済を本当に若返らせるために不可欠なのは、これらの処方を10年内に実現させるという政治の強い意志になる。
たとえば「社会保障は給付の問題にも踏みこんだ改革を急ぐ。そのために政策決定システムを工夫する」との提案はどう具体化するのか。高齢者医療制度をめぐる最近の迷走をみると、政治家はこの考え方と逆を向いているといわざるを得ない。
福田康夫首相は報告書の趣旨をふまえて洞爺湖サミットに臨む。その実現に伴う困難を克服する覚悟もまた、参加国首脳に語ってほしい。