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【国際】

食料危機のハイチ 自力克服の道描けず

2008年7月6日 朝刊

ハイチの首都ポルトープランスの公立学校で米飯の給食を食べる子どもたち。海外からの援助物資だ

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 国連の潘基文(バンキムン)事務総長が「世界の食料問題の小宇宙」と呼んだ、カリブ海の島国ハイチ。アフリカ諸国と同様、破たんした経済と長引く政情不安で、食料価格高騰になすすべがない状態だ。国際機関の援助は続くが、根本的な解決策はなかなか描けない。 (ポルトープランスで、阿部伸哉)

 「UN」と大きく書かれた車両や戦車が行き交う首都ポルトープランスの路上。二〇〇四年から国連平和維持活動(PKO)が展開し、街の治安を担っている。

 主食のコメなどの価格急騰で四月、食料暴動が全土に広がり、首相が失脚に追い込まれた。民衆の怒りは政治家や経済界ばかりか、国連部隊にも向けられたという。

 ナポレオンの軍隊を破って初の黒人独立国家となった輝かしい歴史を持つ国も、今は、治安も経済も国際支援頼みの状態だ。

 一九八〇年代半ばに独裁政権が崩壊した後も軍事クーデター、政治指導者亡命、米軍進駐、民兵武装蜂起と混迷が続いた。

 その間、国際通貨基金(IMF)の融資で経済立て直しや工業化を図ったが、政情不安や米国の経済制裁などで外資が逃げ出して失敗。市場開放で食料の国外依存度が高まる一方、国内農業は弱体化し「西半球の最貧国」から抜け出せない。

 「政情安定がとにかく第一」とハイチPKOトップのアナビ国連事務総長特別代表は強調する。二年前には民主的な総選挙も実現、犯罪組織摘発も進んだ。だが、政情安定の基盤が固まる前に「食料暴動で大きく後退した」と残念がる。

 国連による地元警察の養成も昨年、始まったばかり。首都の警察署内をのぞいても、部屋に仮眠用ベッドが二つあるだけ。現在四千人の警察力は「訓練面でも装備面でもまだまだ」(アナビ氏)。

 政府は食料暴動後、コメに助成金を出して価格を15%引き下げ、事態を収拾した。この価格引き下げも国際支援頼み。国家食料安全調整局によると、助成金の半分以上は世界銀行の融資だ。

 食料危機の克服策について、同局は「実はトウモロコシなら国内自給できる見通しがある」と明かす。「学校教育でトウモロコシ食を奨励するよう検討中だ」ともいう。

 しかし首都近郊の学校を訪ねると、小中学生らが食べていたのは世界食糧計画(WFP)が配るコメと豆汁の給食だった。外国からの援助物資はコメが多く、簡単にコメ離れできなくなっている。

 WFPハイチ事務所のムバエ代表は「国民の食生活を考え直すのは政府の責任で、私たちの仕事ではない」とする半面、厳しく指摘した。「国連機関は五十年間、この国に援助を注いできた。援助の効果が出るよう、そろそろ自分たちで考えてほしい」

 

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