さまざまな企業の社長室の中を垣間見るのは、興味深い体験です。
岡山県内のある機械メーカーの経営者の部屋には、ホワイトボードが並べられ、それぞれに大きな模造紙が張り出されていました。紙には、社内の各部門が掲げる業務計画や目標、開発・研究事案などが列挙されています。
A4判の書類としてファイルされ、机の引き出しに入れられたままになっているのが普通の会社。この社長は、あえて大きな紙に書き出し、いつも目につくよう張り出しておくことで、会社全体の動きを常にチェック。必要に応じて、担当の社員を社長室に呼び込んでは現況や課題などを聞き取り、経営判断の材料にしている、といいます。
別の会社の社長室。歴史書からビジネス関連、話題の単行本まで多彩なジャンルの書籍が雑然と積み上げられた机で、本に埋もれるように書き物をしている姿が学者然とした経営者もいました。また、機械油のにおいが漂い、社長室とはちょっと呼びにくいほどの質素な部屋では、現場が似合う作業着姿の社長がものづくりの楽しさを語ってくれました。
社長室は当然、会社によって広さも調度品も醸し出す雰囲気もすべて違います。ある意味、社員が入りづらいその場所へ、しがらみもなく足を踏み入れられるのが記者の面白みではあります。
経営者の人柄なり、仕事への姿勢が、じわりとにじみ出る社長室。英会話学校の元社長がサウナ付きの豪華な隠し部屋まで造ったのは、人格がなせる所業でしょう。
(経済部・小松原竜司)