◎知識活用アドバイザー 教員に刺激を与えてほしい
全国学力テストであらためて課題として浮かび上がった「知識を活用する力」を伸ばす
ため、石川県教委は大学教授らを「活用力向上支援アドバイザー」として小中学校に派遣する事業を始めた。富山県でも指導力の優れた教員やOBを活用した「授業力向上アドバイザー」制度をすでに導入しており、学力テストを契機に授業の質を高める機運が一段と高まり、取り組みが多様化してきたのは歓迎すべき動きである。
知識の習得や暗記にしても効果的な反復学習法が話題となっているが、子どもたちの知
識活用力を伸ばすには、それ以上に教える側の創意工夫がいる。授業の組み立てから展開、質問の仕方一つ取っても教員の力量が真正面から問われるといってよいだろう。
個々の教員で授業スタイルは異なるのは当然だが、形が一度できてしまうと変えるのは
なかなか難しく、独りよがりに陥りやすい面もある。大学の教官や教員OBなど学校外の人材から客観的に評価してもらえば、自分の授業を見つめ直し、改善のヒントが見つかるかもしれない。教委や各学校は優れた授業や指導法に接する機会をできるだけ増やし、教員に刺激を与えてほしい。
石川県教委の「活用力向上支援アドバイザー」は県内外の大学教授らを各市町から一校
以上、計六十校に派遣する。どの学校でも濃淡はあれ、授業改善の取り組みは行われているだろうが、近年は認知科学に基づいた授業方法や教材開発など科学的な研究も進んでいる。外部の専門家の目を入れることは、校内研修の活性化にもつながるだろう。
石川、富山県では指導力の優れた教員の授業を公開し、ノウハウを共有する取り組みも
広がってきた。授業を通して教員同士が学び合い、鍛え合う仕組みを定着させることは教育の質を高めるうえで極めて重要である。
教育活動の中心は言うまでもなく授業である。教員が互いの授業に関心を持ち、批評し
合えるような風通しのよい校風をつくり、ときには外部の人材を活用して刺激を与えるのも校長の大事な役目である。
◎洞爺湖サミット 原油高騰対策を最優先で
七日から始まる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の最優先課題は、とどまると
ころを知らぬ原油高対策であってほしい。地球温暖化対策も極めて重要な課題だが、優先順位の一番手は、世界経済を混乱に陥れている原油高にブレーキをかけることである。異常な原油高はインフレの主役であり、食糧危機の陰の演出者である。その悪影響は先進国から途上国まで広範囲に及んでおり、現時点での緊急性は温暖化問題よりはるかに高い。
洞爺湖サミット直前に、原油価格は史上最高値を更新し、株式市場は下げ足を速めてい
る。週末の東京市場の日経平均株価が半世紀ぶりに十二営業日マイナスを記録したのは、対策を求めるマーケットの悲鳴ではなかったか。この危機を乗り越えるために、参加国が一致団結して原油市場に流れ込む投機資金の監視を強めてほしい。
これまで洞爺湖サミットの主要課題は、人類生存の基盤にかかわる地球温暖化問題とさ
れてきた。各国の思惑が激しくぶつかり合うなかで、二〇一二年で期限が切れる京都議定書の次の枠組みを構築し、数値目標を盛り込むことの重要性は否定しないが、今すぐに手当てしないと手遅れになりそうなのは、原油高騰という世界経済のかく乱要因である。
十年前の十五倍という異常な価格帯にまで上昇した原油は、サブプライムローンで傷つ
いた世界経済を直撃し、スタグフレーション(景気後退下のインフレ)の一歩手前にまで追い込んでいる。穀物を原料としたバイオ燃料の生産は、食糧危機をつくり出し、十億人に及ぶ貧困層を塗炭の苦しみに追いやっている。サミットの参加国は、まず目の前の危機について話し合うべきであり、その後に地球温暖化問題についての合意形成を目指せばよい。
対策として考えられるのは、原油市場に流れ込んだ投機資金を監視する機能を強化する
ことだろう。各国が連絡を密にし、相場を不正に動かそうとする行為を許さぬ決意を示してほしい。必要なら投機資金そのものの規制にまで踏み込んでもよいのではないか。