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日本にもスラム街が生まれる

「このままだと日本でもスラム街が生まれる」――。「反貧困」(岩波新書)などの著書がある湯浅誠氏(39)がこう言っている。東京・秋葉原の無差別殺傷事件から間もなく1カ月。事件は若者の格差を浮かび上がらせたが、コトは想像以上に深刻だ。東大大学院時代からホームレス支援などに携わっている湯浅氏の警告はゾッとする。

 自立支援の相談を続けて感じるのは、自暴自棄の人が目立つようになったことです。例えば、27歳の男性は「私の生きる意味が全く分からない」と言い、新宿で野宿している。ケガで派遣会社をクビになった男性は「夢は自爆テロ」と言いました。

 秋葉原事件の犯人、加藤智大(25)は、携帯サイトに「どうせ何をやっても努力不足と言われる」と書き込んでいました。彼らに共通するのは、「こんな世の中なのになぜ、オレがきちんと働くという“義理”を果たさなきゃいけないのか」という社会不信です。現実とのギャップに苦しむのは、夢や希望がある人です。それがなくなり、社会との折り合いがつけられなくなると、最悪の場合、自殺に走ったり、今回の加藤のように他害に向かう恐れがあるのです。

 若者の相談で「生活保護を受けたい」と平気で言う人も現れ始めました。貧困に苦しみ、「肩身が狭い」「自力で何とかしたい」と思う世代が大部分だった時代には考えられなかったことです。

「働いても、努力しても何も変わらない」という社会不信が広がり、社会への帰属意識が希薄化すればスラムが生まれる。格差に苦しむ若者の親世代がいなくなれば、一気に貧困が進み社会は変わってしまうと思います。

 早い段階で対応策が必要ですが、自民党や財界には期待できません。彼らは派遣の制度が悪いのではなく、コンプライアンスの問題だと言うからです。派遣会社の中には、労働者の給与から手数料や寮費などで3、4割を抜いてしまうところもある。

 企業には性善説を取り、労働者には自己責任を求めるのはおかしなことです。派遣法の改正など、小手先の規制強化では問題解決にはなりません。

【2008年7月1日掲載】


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