竹に刻まれた落書き=4日午後、京都市右京区、上田潤撮影「竹の小径」で落書き防止を呼びかける天龍寺や大覚寺の僧侶たち=4日午後、京都市右京区、上田潤撮影
涼しげな趣で人気の高い京都・嵯峨の竹林、通称「竹の小径(こみち)」が落書き被害に泣いている。幹をカッターなどで傷つける手口で、名前や日付などが刻みつけられた竹は200本以上にのぼる。イタリアの大聖堂落書き問題を機に、地元の僧侶や京都市職員らが4日、チラシを配って防止を呼びかけた。
竹の小径は東西約500メートル。古都保存法の歴史的風土特別保存地区内にあり、近くに世界遺産の天龍寺などがある。竹林は市や同寺などが所有。高さ15〜20メートルの約2万本が植えられており、風にそよぐ葉の音は、環境省の「日本の音風景100選」に選ばれている。
現場では半世紀以上前から名前やイニシャル、ハートマークなどをカッターのようなもので刻みつける被害が後を絶たない。竹は表面が成長しないため、跡が消えないという。市の所有地では、地元住民が長さ約1.5メートルの細い竹を束ねた「竹穂垣(たけほがき)」を設置。竹林に手が届きにくいようにする対策を取ってきたが、竹穂垣が荒れて低くなった場所が落書きされる例もある。
この日は右京署や天龍寺、大覚寺、右京区役所などから約50人が参加。「落書きは旅の記念や軽い気持ちからかもしれませんが、器物損壊などの罪で処罰されます」と書かれたチラシを観光客らに配った。天龍寺宗務総長の栂承昭(とが・じょうしょう)さん(65)は「落書きは心が荒廃し、他人のことを思いやれなくなっている証拠。寺を訪れる人への法話などで防止を呼びかけていきたい」と話していた。(佐藤達弥)