7月4日(金)
ホテルの部屋で中郡英男さんの『誘拐捜査』を読む。1963年に起きた吉展ちゃん事件の捜査をテーマとしたノンフィクションの力作だ。伝説の名刑事だった平塚八兵衛さんが小原保を「落とした」ことは間違いない。当時現場で取材していた中郡さんさんもまた平塚さんから聞いた話を記事にして掲載(事件が解決した1965年の東京新聞)している。ところが事件解決以降にわかったことは、名刑事の成果といった単純な構図でなかったということだ。中郡さんはこうまとめている。「強いて言えばそれは警察内部の反目と抗争、旧来の捜査手法と近代合理捜査との葛藤、紆余曲折の時間経過と偶然などが複雑に重なり合った末の決着であった」。叙述に手法として新しいものがあるわけではない。しかしノンフィクションの正統派の作品としてとても面白かった。私が注目したのは中郡さんが1930年生まれということ。退職をしてからもテーマを追い続けて完成させた膂力には驚かされる。「これを書かなくては」との思いはきっと生活のなかであふれ、ときに焦燥感にも駆られたのではないかと勝手に想像する。ひるがえって単行本『X』のことを思うのであった。中洲で昼食。佐賀県から福岡に通っているタクシーの運転手さんから博多の景気を聞く。鳥栖では7年前にガソリン代1リットルあたり80円だったものが、いまでは180円。「屋台も大変です」という。春日市のグローバープラザで福岡県が主催する農産漁村地域人権問題啓発推進研修会で講演。福岡から羽田。通路を歩いていたら三宅久之さんに会った。読売テレビの仕事帰りだという。知人たちと待ち合わせている新宿へと急ぐ。
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