2008年06月16日

本編3.5-7 12月21日(6日目) 雨の遍路行

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 今日は土曜日。ガンダムSEEDの日だ。飯田が好きなんだよなー。俺も好きだけど。みな元気にしてるかな?

 今日は6時に宿を出て、ざっと33㎞の強行軍だ。夜のうちにおかみさんに準備してもらったおにぎりを持って宿を出る。食堂のテーブルに、『お世話になりました』と書き置きを残した。

 外は猛烈な雨だ。後で聞いた話だが、冬の四国でこんな雨になることはめったにないという。さらに、道には街灯が一つもなく、スナフキンのヘッドランプだけが唯一の灯りだ。

 しかし、焼山寺の夜といい今日といい、スナフキンは本当に便利なモノを持ち歩いている。困ったときにさりげなく助けてくれるあたりも正にスナフキンだ。


 30分も歩かないうちに、靴がガフガフという音を立てる。素材自体は防水のはずだが、こう雨が強くては全く無意味だ。ザックは水を吸って急激にその重さを増してくる。すぐ横を通り過ぎる車は、容赦なく下から水を浴びせかけていく。

 それでも、3人の野郎どもは止まらない。ひたすら雨の中を歩き続けた。

 8時30分。二十二番平等寺到着。雨でローソクに火を灯すのも一苦労だ。本堂で合掌するが、指が……指が伸びない!かじかんでうまく経本も開けない有様だ。とにかく、なにもかも思い通りにならない。なんとか経をあげ、本願に入る。

「平等寺の名にあるように、人が皆平等であるのなら、苦しみを背負ったマチは、幸せを手にする資格があるはずです。どうか、マチという女に幸福を授けてください。どうか……。」

 マチ、君は幸せだったのかな?君は、あの尾山というガキに、全てを受け入れてもらったわけではなかったのに……。全身をずぶ濡れにしながら、マチの辛さを思う。冬の雨の冷たさのように、マチはあの時、どうしようもない寂しさの中にいたはずだ。

 心の全てを捧げたい相手が、体しか求めてこない苦しさ。それがどんなに屈辱的なことかわからないほどマチは愚かでもないし子供でもない。

 俺は君の全てがほしい。マチの喜びも悲しみも、全部、全部俺は受け止める。マチに本当の幸せを授けるチャンスが、俺に巡ってきたのなら、俺は命を賭けよう……。

 国道55号線を南へ下る。迷う心配はないが、とにかく終わりがない道に思えてしょうがない。すぐ横を走り抜けていく大型車にくらべると、なんと自身の脆弱なことか。これもある意味、死と紙一重かもしれない。

 俺は、ずっと先頭を歩き続けた。マチなら、その理由がわかっているかも知れないな。
 前方を確認しながら、俺は歩いた。後の二人を、ガードしたかった。特にカーブでは、敢えて車道寄りに歩き、こちらの存在を車に伝えようとした。中には俺の体ぎりぎりに走り去る車もあったが、それでも俺は、車に道を譲らなかった。俺にぶつからないということは、後の二人にもぶつかることはない。
 やはり俺は、どこに行ってもそういうヤツなのかも知れない。

 危険に身をさらすなら、自分がまず一番に。

 相手が誰であれ、守りたいのだ。出会ったばかりの人物に対しても、体を張って守りたいと感じてしまうのだ。……それがマチなら、なおさらだ。俺は、そこに100%の死が待っていたとしても、マチが救われるなら迷わず飛び込んでいくだろう。マチは、俺の死を悲しむかも知れないが、それでも、俺がマチの苦しみを見るよりずっといい!
 
 同行していたNさんが足を痛めてしまった。先頭の俺のペースが速かったのかも知れない。足を痛めている俺は、足手まといにならないように無理にペースを上げていたんだが、かえって彼を苦しめてしまったようだ。全く俺というヤツは、バカで困る。
 Nさんと一緒に話しながら歩く。互いに大笑いしながらの遍路行。こんな時も、スナフキンが後ろにいると妙に安心する。背中を預けられるというか、そこいてくれるという信頼感が揺るがないのだ。

 いつの間にか、薬王寺は目前となっていた。山門に立ったとき、Nさんがいった。
「楽しく話してると、痛いのも忘れるわー!」
 よかった……。責任を感じていただけに、ほっと一安心。

 Nさんはこの薬王寺で今回の遍路は終了だ。そして、彼にはもう一つ薬王寺に特別な思いがあった。そう、十三番大日寺まで一緒に歩いていた女性、Fさんのことだ。

「他の誰かのために歩き続ける。」

 それがなければ、こんな苦しい旅は続けられないのかも知れない。
 俺は、他の二人よりも早く納経をすませ、山門前のベンチで休んでいた。真っ赤、というか、極彩色とでも言ってしまった方がいいような塔が目の前にそびえる。まあ、朱塔は珍しいモノではないが、寺の「赤」は、もう少し控えめなくらいが相応しいように思えてならない。

 しばらくしてNさんが下りてきた。晴れ晴れとした表情だった。俺も温かい気持ちになっていく。そして、もう当然のように、マチの顔が浮かんでくる。俺も、三十一番竹林寺を打てたとき、あんな顔ができるだろうか?今のところ、竹林寺到達は五分五分といったところだ。Nさんは今日で7日目。俺は6日目。普通より速いペースで歩いていることは間違いない。それでも、竹林寺へたどり着けるかどうかはぎりぎりなのだ。

 平等寺、薬王寺共に、健康祈願の寺だ。なあマチ、体を粗末にしちゃいけないよ。この世でたった一つのマチの体。俺にとってそれが傷つくことは、自分が傷を負う以上の苦しみなんだから。マチ、自分を大切にしてくれ。自分をたくさん愛してくれ。辛いときは俺が支えるから、助けるから!マチを救える強さを身につけるために、俺は歩き続ける……。

 今日、雨の国道で野良犬に会った。俺たちの後をついてくる。俺は、なにもしてやれなかった。悔しくて、情けなくて……。俺は、この小さな犬一匹救ってやることはできない。マチなら、何をしただろう?きっと、俺のように無力ではないはずだ。たとえ一時でも、その犬に安らぎを与えてやれる……。石原マチは、そんな女なのだ。俺は、彼女と自分の決定的な差を感じていた。どうやっても、俺はマチと釣り合わないのか!?

 Nさんの四国最後の夜は、日和佐町の小さなホテルで過ごすことになった。近くの海岸は、ウミガメが産卵に来るので有名らしい。ロビーにも「ウミガメを見るときのマナー」とか普通に置いてあるし。『ゲタを履いてはいけません』には笑った。なるほどそうなのか、ウミガメがそうまでゲタ嫌いとは!

 なんでもNさんは、就職前に試験を一つ受けるという。2月にその試験があるのだが、俺から三十一番竹林寺が八十八ヵ所中唯一の「文殊菩薩」の札所であると聞いた彼は、この旅の最後に、その竹林寺をお参りしていくということだ。
 明日、電車で高知に向かい、寺をお参りしてから土讃線で高松へ、そして岡山へという帰路だ。

「Fさんから託されたモノも、ここで降ろすことが出来ましたよ。二人分でしたから、責任重かったですねえ。」

 そう言って笑うNさんは、その言葉通り、なんだか心軽やかに見える。そうだ、俺もまた、四国を離れるとき、この顔にならねばならない。打ち拉がれた顔で、1000㎞彼方のマチのもとに帰るなどありえない。そのためには、俺は期日までに三十一番竹林寺に立つ必要があるのだ。何が、何でも……。

 夜、息子のことを思い出す。帰ったら抱きしめたいヤツ二人。一人は、愛する女、マチ。もう一人は、血を分けた息子。俺は、男なのかな?父なのかな?多分、夫として感じるものは何一つないけど、な。

 明日は、修行の道場、土佐高知県へ。二十四番最御崎寺までは約80㎞。その間札所は一つもない。海沿いの道をひたすら歩き、室戸岬を目指すのだ。
 その時間の中で、俺は何を思うのだろう?「発心」の道場、阿波徳島を打ち終えた俺は、既に「決意」の段階を終えた。そして、「やれる」という手応えを胸に、「修行」へと入る。
 三十一番竹林寺へ。


 その思いを力の源に、飛鳥は前進する。ながら、考えるのだ。俺は、どうすべきなのか、を。
 教壇に戻れる可能性は、冷静に判断してかなり低いと言える。また、妻と息子を失うことも決定的だ。ならば、俺はこの先、何を生きる意味にしていけばいいのか?

 果たして、その答えは見つかるのだろうか?

 「修行」の土佐に、答えはあるのだろうか……?

本編3.5-8 12月22日(7日目)  空と海に抱かれて~なんだ、マチは文殊菩薩じゃん  に続く
  

Posted by 飛鳥エイジ at 11:07Comments(0)転落教師本編」

2008年06月15日

仙台ライトダウン

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という企画が本当にあったことを知っている人、いますでしょうかね??

20年くらい前に、「仙台ライトダウン」と称して、駅前のネオンを一斉に消して町を暗くした事があるんですよ。

理由は、「ペルセウス座流星群」を町中でみるため、です☆

新しい天文台の観測環境はだいぶイイものらしいですが、どうでしょう、今年あたり、「仙台ライトダウン」をまたやってみては?

その時、飛鳥も仙台駅屋上に彼女と二人でいたのですが、周りにも結構たくさんの人が集まっていました。
そして、流星も数個ではありますが見ることができ、初めて流れ星をみたらしい方々は、歓声をあげていたものです。

駅前なのに、ネオンの輝きがないというのも、わりといいものでしたよ。
実は、その時の映像がビデオで残っています。
ちょっとアップロードするには手間のかかるヤツなのでまだ紹介できませんが、機会があれば動画としてみて頂きたいですね。
  

Posted by 飛鳥エイジ at 17:14Comments(2)

2008年06月15日

7月オープンでしたっけ?



新しい仙台市天文台!
以前西公園内にあったときにもずいぶんお世話になったのですが。
大勢連れて行ったこともありましたしね。

大学の先輩も勤務してまして。もっとも、天文同好会の先輩の先輩で、直接面識はないのですが。

ちなみに
小石川さんには勤務していた町の方に講演会に来て頂いたこともありまして。
もちろん、参加させて頂きました。

そんなこんなで、新天文台のオープンは飛鳥もとても楽しみだし、嬉しいんですよ。よりよい環境で仙台の天文家諸氏が観測を行えるということが、ですね。
もちろん、いずれ見学に行かせて頂きます。早ければ来月にも☆

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Posted by 飛鳥エイジ at 10:29Comments(0)

2008年06月14日

道路落ちてる…… 高速も×?

宮城はお里ですから言わずもがなで
岩手も大好きなところなのでかなりお出かけしたことあるんですよね……

一関とか、北上、遠野、花巻……
夏油温泉に向かう道路も土砂崩れで通行止めと聞きましたが、大丈夫でしょうか……。
岩手では、陸橋でしょうか?道路も完全に崩落してます。

震源に近い居所の方からも無事が伝わってはきていますが、とにかく皆さんの無事をお祈りします。

あ、高速道路は東北道宮城県内ほぼ全線(白石から一関くらい?)と秋田道、山形道通行止めらしいです。  

Posted by 飛鳥エイジ at 12:11Comments(0)

2008年06月14日

大丈夫っすか!?

宮城で震度6強から5強!
大丈夫ですか!?

東北最南端でも先ほど揺れました。
東京でも揺れを感じてます。  

Posted by 飛鳥エイジ at 08:49Comments(2)