音の基準レベルについて
音の基準レベルの話です。
この話は各社・各業界が完全な統一を出来ていないために、非常にわかりにくく、また取り扱う音のレベルのレンジ(大きい音から小さい音の幅)がPA・DTM・オーディオで大きく違うことから普遍的な説明にまで至らないことをご了承ください。
※もし、完全な理解を目指すならば、非常にわかりやすい参考書がありますので以下をオススメいたします。
サウンドクリエイターのための電気実用講座 大塚明著 洋泉社
話を簡潔にするために、一覧表を作成しました。
自分はdB(デシベル)を理解する前から波形編集ソフト(オーディオカードにバンドルしていたSound Forge XP)に触れていたために、dBを換算するときに%を前提で考えます。
参考書などでは2倍は約6dB、その逆の、2分の1は約-6dBと記述されていると思いますが、自分は0を100%と換算して、「200%は6.02dB」、「50%は-6.02dB」という感じで認識しています。
%に100を掛けると、dBの足し算は実数の掛け算ということがわかります。
※10dB=4dB+6dB、1.58×2.00=3.16、10dB≒316%
これだけは覚えておいたほうが良い三項目を挙げます。
1. 0VU、0dB、なんだかよくわかんないメータの0はその機材にとっての基準であり、出力電圧の絶対の値ではない。
2. dBV?dBu?dBv?dBm???とにかくVr.m.sに換算すれば大体どれくらいなのかわかる。
3. 結局のところ、繋ぐまでわからない、説明書でスペックを確かめないとわからないことが多い。
1ですが、0VUなどの「機材のメータで表示される0の値」は、実はバラバラです。業務用の音響ミキサで1kHzの正弦波を出力して0VU(または0dB)を指した時、機材のスペックで「アウトは+4dBu」と記載されているなら、そこから取り出される電圧は+4dBu、つまり1.23Vr.m.s.です。
セミプロ用の音響ミキサで同じことをして、スペックに「アウトは0dBu」と記載されているなら、そこから取り出される電圧は0dBu、つまり0.755Vr.m.s.です。 同じように「アウトは-10dBV」(TAPE OUTなど)と記載されていれば-10dBV、つまり0.316Vr.m.s.なのです。 随分適当じゃないか、と印象を受けますが、その通り、「機材のメータで指した0の表示は出力電圧の絶対の値ではない」のです。
ではこの適当さが問題になるのはいつかというと、機材間を接続するときです。
ひとつ例を挙げます。
業務用カメラに音声を入力する時、間に挟むミキサは何が良いのか?と悩んだとします。カメラは業務用なのでLINEで+4dBu受け、MICで-60dBu受けです。(厳密には600Ω受けなので単位はdBm)この時点で、カメラの音声入力調整つまみを動かさずに、デフォルトで規定値入力するには、出力が+4dBuのミキサを選定しなければならないことが判明します。(※-60dBu出力が出来る機材はとても特殊) ここに出力が0dBuのミキサをはさんでしまうと、ミキサにとっての0VUとカメラにとっての0(デジタルなので基準は-20dB)が揃わなくなる事態が発生してしまうというわけです。(但し、音声入力調整つまみを調整すれば0dBu入力にすることが可能。) ※ENG用のミキサは出力が+4dBu、0dBu、-20dBu、-60dBu、-10dBVと切り替えられる優れものなのです。
2は表に挙げた通りです。0dBV(ゼロデービーブイ)は0.755Vr.m.s.が基準で、0dBu(デービーユー)は1.0Vr.m.s.が基準となっています。このふたつの違いを「知っている」だけでだいぶ違うと思います。※Vr.m.s.とは交流を直流に換算した数値です。
ベリンガーなどの小型音響ミキサのヘッドアンプに「+4」「-10」切り替えがついている場合がありますが、この二つの数値は電圧でいうと4倍の開き(dBでいうと12dB)があり民生用と業務用の音声レベルの違いがわかると思います。
※一般に-10(マイナじゅう)は-10dBVのことで、+4(プラよん)は+4dBuを指す。
3実体験で、何度か困ったことに遭遇したことがあるのですが、それは出先のホールの音響から会場音声を業務用カメラにもらうときです。
会場のミキサは+4dBu、つまりミキサの0はカメラの0(-20dB)、よし、間違いない。しかし、つないでみるとレベルが極端に低い…低すぎる・・・というか聞こえない・・・あ、PAD(パッド:音を一定値減衰させる機構)をはさんでMICレベルなのかな?と思ってMICに切り替えると今度は音が大きすぎて割れる…と、こんな状況です。 なぜこうなるかというと、ほとんどの場合、会場の基準レベルの設定が極端に低いことが挙げられます。 このケースの場合、ミキサが0VUを指さなければ出力は+4dBuに到達しないことはいままでの説明でわかっていただけると思いますが、これは言い換えれば、「0VUに達しないようなレベル設定をしている会場から、適正信号のラインをもらうのは難しい」ということになります。
※とはいえ、ミキサの0VUを基準信号とした設計がホールの音響常設設備で出来るのか?といわれると自分なら「不可能です」と答えます。※理由は色々あります。
それと企業や大学のホールで、デフォルト設定でミキサが0VUをキチンと振る設備に遭遇したことがありません。(人がその都度、調整していないから当たり前なのですが…)ひどいものになると、VUが一切振れず、挙句の果てに各チャンネルのシグナルインジケータも点灯しないという、脅威の低レベルなホールを見たことがあります…。 …この辺は実際、経験が浅く理解が乏しいのですが、そもそも基準信号を守っているホールなんて存在するのですか?
この「ラインに小さし、マイクに大きし問題」を手っ取り早く解決するには音響ミキサを会場とカメラの間に挟むしかないのです。
こんな調子なので、(誰が悪いわけではありませんが)「こんなにもバラバラな規格、繋がずに機器間のレベル設定を間違えないでやれる人間なんているのか?」と疑いたくなるわけです。
ミキサのTAPE OUTをカメラに繋いでいませんか?ラインアウトをマイクインに繋いでいませんか?ミキサのキャノン入力はマイクレベル専用ではありませんか?そのパソコンのオーディオカードのアウト、RCAピンですが出力は-10dBVでなくて+4dBuではありませんか?
説明書をもう一度見直してみましょう!
※本件に関してはもう少し調査と検証が必要です。
もし、ここ違うぞ!うちではこうだ!みたいな意見がありましたらコメントよろしくお願いいたします。 |
おひさしぶりです、非常に分かりやすい説明で助かります
私の会社でも撮影スタジオでの収録用ミキサーは必ずしもプロテックである必要は無いのではと思いmackieなどの音響用ミキサーの購入を考えていましたが・・・・考え直します
2008/2/6(水) 午後 9:22 [ ※ ]
>mwdgp559さん
おひさしぶりです。ネットで会いましたね。
PROTECHのFS305は、カメラに送る、その点有利だったわけですね。ベリンガーのミニミキサーは、実は0dBuアウトなのです。
(自分も今回調べて、改めて理解したという経緯。というかオーディオジェネレータと測定器がないと、検証が出来ないですよね…)
でも、録音できればいいってだけなら、0dBuのミニミキサでもアリなのか?これはまた調べて報告しますよ。
2008/2/6(水) 午後 9:39
師匠は深いですね! いつも参考になる文献ありがとうございます。
2008/2/7(木) 午前 6:21
>FPIブログさん
ありがとうございます。
マニュアル作りは自分の勉強にもなるので良いですね!
>mwdgp559さん
カメラ側で音声入力の調整をデフォルト位置にこだわらなければ、0dBuアウトのミキサでも大丈夫そうですよ。今朝検証しました。
大体、1時方向くらいまで回せば0dBu入力がカメラの-20dBになります。これで良しとするかは周りの人に(特に技術者)聞くしかないですね。
2008/2/7(木) 午前 10:00