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島の健康どう維持 山口・周防大島 '08/7/5

 ▽地域医療、拠点病院と連携不可欠

 ミカンとリゾートで知られる周防大島町は、高齢化率46%を超えるお年寄りの島でもある。患っても、地元で一人暮らしする人は多い。橘地区で安本医院を開く安本忠道院長(63)は夜昼なく診察し、生活を支える。地域医療を守るためには、拠点病院との連携が大切という。

 居間のベッドで横たわる九十三歳の女性の血圧を測りながら声を掛ける。「食事はしてますか。もう庭の散歩もできますよ」。腰を痛めている女性は半年ほど、家の外に出るのも難しかった。往診は土曜の夜。「いつも待ち遠しい」。復調に表情は明るい。

 外来診療が終わるのは早くて午後七時。月に五、六件、執刀する手術は午後十一時まで掛かる日もある。土、日曜の夜は三十軒前後を往診に回る。

 出掛けていない限り、夜間も早朝も患者を受け付ける。お年寄りは夜間に肺炎、腎盂(じんう)炎などで熱が出ても、翌日の開院時間まで待とうとして悪化させるケースも多い。だから休診時間といって、診察を断れない。

 高度医療を担う柳井市の県厚生農協連周東総合病院と岩国市の国立病院機構岩国医療センターが控えているのが心強い。がんなど対応しきれない患者が出た場合には、多くの場合、両病院に紹介状を書く。

 「二病院があるおかげで、自分の診療に集中できる」という。だからこそ、小児科や産科、麻酔科の勤務医不足は、地域の医院にとっても重要な問題だ。

 県は本年度から、医師確保のため新しい制度を整えた。公的医療機関に派遣する医師を県職員として保障し、研修期間も設けるドクタープール制度や、女性医師が働きやすい仕組みづくりをする病院への助成、研修医への貸付金制度などだ。県地域医療推進室は「人づくりとハード整備両面で、地域医療を守っていきたい」とする。

 安本院長は制度だけでなく、医師の資質の大切さも訴える。医師の仕事は勉強の偏差値だけでは測れない。「医師を育てるには、患者の内臓ではなく、人や暮らしが見える地方でこそ良い」という。支え合って暮らす地域の力を医療でも生かす時期が来ている。(持田謙二)

【写真説明】往診し、一人暮らしのお年寄りを支える安本院長(右)。地域での経験が医師を育てる、という




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