大学を出て一年も経つと、そろそろ結婚する友人が出てくる。
すると・・・・・会社を休めるのである。
めったに休みのない、我が「猛烈突き進み型」の不動産会社も冠婚葬祭の休日だけは許可が出るのである。義理は欠かさないのだ。
(ただし地方なら丸一日だが、近場だと披露宴の時間だけ、と徹底管理。)
そう言えば、書いてて、今思い出した!
誰にも内緒だが、オレは一度だけ偽の結婚式案内状をワープロで作り、会社を休んだことがあった・・・(しかも広島県の挙式とかにして)
ナイトー部長にその偽造案内状を手渡し、「ぅ〜、行ってこい。」と許可が下りた時の『よっしゃあ!』と『しめしめ・・』の心ときめく気分!
それが押さえ切れず、思わずトイレに駈け込み握りコブシで
「ヨッシ!ヨッシ!ヨッシャァァァッ!」と小声で叫んだあの日。
あの「仕事」は、ホントに大学合格!並みに嬉しかったね。
だって自分ひとりでやり遂げたことだからな。誰の力も借りず。
大学時代からの恋を成就させた奴、会社に入って「スパッ」と社内結婚する奴・・・まあ早い奴は、それなり目立ってた奴が多いような気がする。
当時のオレはまだ結婚なんて眼中になかった。
主任になる。
なんて、今思うと少し幼稚な目標・・・
いやイイのだ。少年がリトルリーグでレギュラーになりたい気持ちと同じ!
6ヶ月で3億円売る。
そういう「具体的な目標」・・、大切にするべきじゃない、男って?
色んな結婚式に呼ばれたが、当時一番印象に残ったのは、大学時代の友人ホシ○氏の披露宴だった。
山下公園前の、あの石造りっ、HOTEL NEW GRAND≠セっ!
ホシ○氏とはなんで知り合ったのかハッキリは思い出せないが、大学時代たぶん彼が「ドラムやってよ。」って言ったか、またはそのような事だろう。
彼は知的で冷静で、ロック魂溢れるオトコなのである。・・不良だ。
教員となり川崎区!の中学に勤め始めた彼の話は、語り口調も手伝っておもしろかった。『【カワサキ】の偏差値って西高東低なんだよね。』
要するに西から東へ、麻生・多摩・宮前・高津・中原・幸・川崎、の順番で偏差値が見る見る低下するというのだ。(誤解しないで下さい。あくまで平均ですから。そしてこの利発なオトコ、ホシ○氏もダウンタウン「幸区」出身ですから。)
まあ、そりゃそうかも知れない。西の方は京王、小田急、東急田園都市、と気取った路線。そして中央部は東横線ではあるが、むぁーったくマイナーな「新丸子」「武蔵小杉」「元住吉」の3駅。(その前後は日吉、多摩川園&田園調布なのに)
オレ独自の調査によると「元住」なんて東横線で思わず出てこない駅名 no.1 だ!
東部と言えば・・京浜東北、東海道、京浜急行・・・・・・・・(無言)
『まあ南武線に西から乗ると、一目瞭然だ』とホシ○氏は締めくくった。
・・・キムタクと荻原聖人の「若者のすべて」っていうドラマ。あれは川崎区の朝田町あたりではないかと思う。15号どころか産業道路。
川崎市の東の極限。
工場、焼肉屋、煙突。いいねえ! あの辺りって・・物凄くオレ好みである。
「尻手」の駅辺りの風景もいいなあ・・・
新百○ケ丘とか、鷺○、○○台? それがどうしたんだよっ?!って感じ。
川崎の話が長くなってしまった・・・
さて、ホシ○氏の挙式だが・・・
ニュー・グランドというと、友達が嘉悦女子のお金もち娘と付き合ってて「ニューグランドで食事おごってもらったんだ」という言葉に憧れて、オレは一度女の子と来た事がある。(しかしお茶だけ)
なんと、その老舗でありハイ・グレード・ホテルの「マッカーサーがなんとかした大部屋」で披露宴は始まったのである。
・・・・マジかよ、と思った。
ガンガン、B.スプリングスティーンがかかってるし、エラい人の挨拶中もお構いなく新郎はセブンスター吸ってる。(しかも百円ライター)
そんで態度と顔が、なんつうか「風呂上がりのくつろぎ」状態。
こ、この新郎は・・・ナメている、世の中を。
しかし、古めかしいヨーロッパ調の石造りの大部屋には、縦長の窓から陽が差し込んで来ていた・・・山下公園通りの緑も見える・・・
そこに居合わせた人々は【全員が!】リラックスしており、考えてみると彼らしい(B.スプリングスティーンらしい)見事な演出だった。
そして出ました! イナバ君です。
控え室でも相変わらず口数の少なかった彼。
ホシ○氏やイナバが入っていたゼミの友達なんかがいて、しばし談笑。
その頃は「Bad Communication」のブレイク直前だったと思う。
オレの隣の席のイナバが立ち上がり、「いとしのエリー」のイントロが始まった。
式のラフ&イージーな雰囲気に流され、皆さんの気ままに談笑しまくり状態の中、イナバくんの歌は始まった。
『ほう、なかなかやるな。』という視線を、やっとオヤジ達が彼に向け始めた頃、名曲「いとしのエリー」は佳境に入っていった。
「なんか、声が通る人だなぁ。」「この人はウマいぞぉ。」「ほぉーーっ。」・・・
みんながイナバくんに総注目状態になり、やがて最後の雄叫びが・・・
エビ反り状態になった彼の体から、今までの100000倍ほどのボリュームの、しゃがれてて、独特の、すなわち【完璧B’z稲葉浩志】の声がマッカーサーが調印かなんかした巨大部屋に huge な雷を落としたのである!
「エェ〜〜〜〜〜ッ・・・
リィ イ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ(1分08秒)」
・・・・しばしの沈黙の後(全員唖然)、拍手、嬌声、驚愕、歓喜、怒涛の大喝采。
「おお〜〜〜っ!!!!(パチパチパチパチ・・・)」なんて言いながら、すごい勢いで拍手をしていたオッサンが、赤ら顔で隣の人に質問した。
「あの人は、なんか・・・歌い手かね?」・・・そうだっつの! |