今やインフレが世界の共通テーマとなっているが、いずれの国も対応に苦慮している。その原因の一つが、為替の制約。中東産油国など多くの国が、為替をドルとリンクさせているために、自由に金融政策がとれない。むしろ自国がインフレでも、為替維持のために米国の利下げに付き合わされて、インフレを加速させている。これが原油などの商品価格を押し上げ、グローバルなインフレ圧力を呼んでいる。
次に、近年米国や日本が積極的な金融緩和を進め、世界中に流動性をばらまき、米国は経常赤字を続けてドルを世界に散布した。これが長年の間にヘッジファンドなどに蓄積され、その巨大な投資マネーが原油や資源、穀物などの価格を押し上げた面がある。しかし、その日米が過剰流動性を吸収すべき段になって、今度は米国が住宅市場の収縮を機に、金融不安、景気の先行き不安に陥ったために、引き締めができない。金融不安やインフレ懸念で株や債券を嫌うマネーが資源に向かい、一層価格をつり上げる。
このように、景気が過熱してインフレが発生している国の多くが自由に引き締めできず、流動性をばらまいた日米が、自国の景気金融の困難さを前に立ち往生している。当事者が対応できないために、結局インフレ抑制は他人任せになる。米国は原油高に補助金を出して価格を抑えるアジア諸国を批判し、自らはドル高にしてインフレを水際で防ごうとする。他人任せの対応では、いつまでもインフレは収まらない。日本政府に至ってはインフレの認識すら希薄だ。しかし、日本でも統計以上に物価は上がっており、足元では一段と加速し、家計を圧迫する。日本もひとごとでは済まされない。(千)