政府の公益法人改革案からは行政のぜい肉削減への決意が伝わらない。「無駄ゼロ」の旗印は結構だが、単なる掛け声では意味がない。不必要な組織はないか。ゼロベースで洗い直せ。
先の通常国会では、道路特定財源を筆頭に、常識では到底考えられない税金の無駄遣いが発覚した。中でも、官僚が各省所管の公益法人に天下りし、高給を受け取る一方で、公益法人に補助金などが年間一兆円近く投入される構図に国民は激怒した。
公金意識の欠如ともいえそうな霞が関の体質に危機感を抱いたのだろう。福田康夫首相が号令をかけて、主要三百五十法人について、不適切な支出を総点検。その結果を踏まえてまとめたのが今回の改革案だ。
厚生労働省所管の日本食生活協会など八十二法人で国発注の事務事業を見直すほか、四十二法人は事業発注を随意契約から一般競争入札に移行することを打ち出した。役員数や報酬、退職金の削減なども明記。首相は国からの支出の三割カットを表明した。
ただ、無駄ゼロに直結するはずの法人解散は「検討」を含めて厚生労働問題研究会などたった二つ。迫力不足の内容だ。
「骨太の方針2008」では「行政と密接な関係にある公益法人の大幅な削減を実現する」と明記している。この程度では「大幅な削減」の文句が泣く。
事実上の利害関係者である官僚の主導で改革案をまとめるのは無理がある。第三者の専門家に委ね、真に必要な組織かどうかを徹底的に検証すべきだ。政府は無駄ゼロに向けた有識者会議を月内に発足させるという。法人の大胆な解散提言を求めてはどうか。
自民、公明両党も税金の無駄遣いに関する対策案をそれぞれまとめた。両党内には、国会議員自らも痛みを負うべきだとして、議員定数や歳費の削減論も浮上している。民主党も無駄遣い一掃に意欲的だ。総選挙の格好の争点だ。与野党で大いに改革を競ってもらいたい。
政府・与党の“にわか”改革機運に、消費税率アップへの環境整備ではないかとの見方も根強くある。増税への切符を得るためだけのポーズであってはいけない。
首相は今回の点検を「行政の信頼回復」に向けたスタート台と位置づけ、さらなる無駄撲滅を約束した。並の削減では、国民の疑念を強めるだけだ。しっかりと肝に銘じるべきだろう。
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