国税庁の二〇〇八年分路線価によると全国の標準宅地の平均額は三年連続で上昇した。だが実勢価格は下落基調にあり、東京都心部のミニバブルも消えた。住宅取得などを冷静に考える好機だ。
「土地は公共財」とはいえ、個人や企業にとって土地価格は大きな関心事だ。地価には実勢価格のほか国土交通省が発表する公示地価と都道府県の基準地価、相続税や贈与税の算定基準となる路線価、地方税の固定資産税評価額の四つがある。
国税庁は全国約三十八万地点の標準宅地を選んで、道路ごとに毎年一月一日現在での一平方メートルあたりの価格を設定している。これが路線価で、今回は東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の上昇率が前年比14・7%増と、前年を上回る高い伸びとなった。
路線価は公示地価をベースとしている。その公示地価は昨年までの余熱を反映して住宅地・商業地とも二年連続で上昇した。とくに商業地では東京都渋谷区、新宿区などでバブル期並みの前年比30%以上も上昇した地点があった。
だが実勢価格は昨年秋以降、全国的に下落基調に入った。都心部でも地価は沈静化してきた。
国交省が今春実施した調査によると企業の土地取引意欲は急速に減退。地価水準についても今後下落を予想する回答が急増した。
やはり米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題のあおりで外資系ファンドが資金を引き揚げたり、経営体質の依然として弱い金融機関が融資を抑制するなど、不動産投資熱が冷え込んだことが主因だ。
不動産関係者たちは、都心部で見られたミニバブルは終わった−との見方で一致している。
とくに冷え込みが目立つのがマンション市場だ。首都圏の新規物件の契約率は昨夏以来、好不調の判断基準となる70%をほとんど下回っている。在庫も急増した。
不振の理由はマンション価格が高くなりすぎたことだろう。一戸あたりの平均販売価格は約四千八百万円と、二年前に比べて二割も上昇したという。
年収の五倍程度が住宅取得の適正水準とされる中、給料が増えない勤労者には手の届かない買い物になった。
地価は当分は調整局面が続く見通しだ。原油高騰による建設資材値上がりも土地取引や住宅建設に影響を及ぼす。個人も企業も住宅取得や土地利用を慌てない。今はじっくりと考える時期である。
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