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【主張】洞爺湖サミット 過剰な投機抑制で行動を
米国のサブプライム問題をきっかけにした金融不安と原油、食料価格の高騰によるモノの値上がりが世界経済を直撃している。
物価高は、世界中にインフレ懸念を拡大し景気を下押しする。日本の株価も下げ止まらず、景気の先行き不安が強まるばかりだ。
この世界経済の変調をいかに正すか。主要国の首脳が集まる洞爺湖サミットで真剣に議論し、行動すべき重要なテーマである。
今回のサミットは3つのFがキーワードだ。金融のファイナンスと石油など燃料のフュエル、食料のフードである。いまの経済変調はこれらが複雑に絡む。
サブプライム問題で行き場を失った投機資金は株式や債券市場から原油や穀物相場に流入した。中国やインドなどの新興国の経済成長は著しく、そもそも原油と食料の潜在需要は大きい。このため、市場は買いが買いを呼ぶマネーゲーム化してしまった。
問題は、これが実体経済に影響し、物価高騰ばかりか、最貧国の食糧をめぐる暴動にまで発展したことにある。国連が中心になって途上国への緊急支援を打ち出したものの、供給不安は消えていない。世界経済全体も、原材料コストの上昇から、本格的なインフレにつながる懸念がでている。
こうした情勢を踏まえれば、世界経済はサミットの最重要議題のはずである。まず、米国経済が大きなテーマになる。米国は金融危機抑止と景気悪化懸念を背景に、昨年秋から大幅な金融緩和を実施した。これが、投機資金をさらに膨らませ、物価高を加速させている。だが、米国は金融不安が収まらず、金融引き締めには動けないジレンマを抱えている。
ここは、原油や穀物市場に対する監視を強めて、健全な市場メカニズムが働くようにさせねばならない。特に、過剰な投機資金に対する規制が課題だ。通常なら市場取引の潤滑油といわれる投機資金だが、過剰な投機は弊害が大きい。実際の需給とかけ離れ、市場を不安定化させるためだ。
中国など新興経済国のガソリン価格を低く抑えるための補助金や穀物輸出国の輸出制限をやめるよう働き掛ける必要もある。
処方箋(せん)は難しい。だが、首脳らには、少なくとも過剰な投機資金の流入を抑え、市場を適正に機能させるためのメッセージぐらいは出してもらいたい。