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社説2 独禁法で処罰された官製談合(7/5)

 入札談合に関与した「官」として初めて独占禁止法違反罪に問われた旧日本道路公団の元副総裁に、東京高裁は有罪を言い渡した。

 事業者を取り締まるための独禁法を「官」にも適用したのは、受注側と発注側が一体となって談合をしていたからである。「自身を含む公団職員の天下り先確保という個人的な利益のために、公共の利益に反して競争を制限した」「談合が社会に与えた損害は甚大である」と、判決は官製談合を糾弾している。

 同じ罪に問われた元同公団理事には、先に、有罪判決が出た。2人とも執行猶予が付いたとはいえ、刑は検察の求めたとおりだ。裁判所の厳しい姿勢を示すもので、元副総裁の判決は量刑を重くする理由を、こう説明している。「官製談合の摘発が後を絶たないため(同種犯罪の)予防の観点も考慮されるべきだ」

 同公団の官製談合は鋼鉄製橋梁(きょうりょう)建設工事で行われ、受注側では、三菱重工、横河ブリッジなど26社に対する罰金刑と担当者10人の有罪が確定した。

 2005年夏にこれが摘発された後、「官」の刑事責任が追及される大型の談合事件が次々に明るみに出た。新東京国際空港公団、防衛施設庁、緑資源機構、福島・和歌山・宮崎の各県と続き、公共事業の元締である国土交通省まで、刑事事件としての立件は免れたものの、公正取引委員会から官製談合防止法に基づく「談合に関与する行為を排除するための改善措置」を求められた。

 元副総裁らの裁判では、旧道路公団の官製談合の“歴史”が暴かれた。かつては長い間、公団の現職理事が自ら受注企業を割り付けていたが、1993年のゼネコン汚職事件を契機に、割り付けは公団OBの役目になり現職理事が割り付けを承認するやり方に変わった、という。

 官製談合に手を染めた組織はどこも似たり寄ったりのことをしてきたのではないか。「国民は半ばあきれ、厳しい怒りを募らせている。あしき連鎖を断ち切り、談合の根絶に動かなければならない」元副総裁を断罪した判決の、この言葉は、国民のお金を使う公共調達・公共事業に携わるすべての「官」に向けられた戒めである。

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