日本人観光客の落書き問題が広がっている。イタリア・フィレンツェの世界遺産登録地区にある大聖堂での失態である。
岐阜の女子短大生、京都の男子学生、そして茨城にある高校の野球部監督と実行者が次々判明した。落書きが多い場所であり、「記念に」と軽い気持ちで書いたのだろうが、残念でならない。
海外へ出かける日本人旅行者は、年間約千七百万人に上る。その行動は日本への評価につながる。先月、ネット旅行販売の米エクスペディア社が発表した二〇〇八年国別旅行者評価で、日本人は二年連続の世界最良観光客に選ばれた。
欧米を中心にしたホテルに印象を尋ねた。日本人への評価が高かったのは礼儀正しさや部屋をきれいに使うなど相手方を思うマナーの良さ。逆に評価が低かったのは、積極的に現地に溶け込む姿勢に欠ける点だった。
それが、ホテルを出ると一変するのだろうか。大聖堂への配慮はなく、書き並べられた各国の落書きに溶け込んでしまった。もちろん三組だけの問題ではない。国内に目を転じれば、貴重な文化財や身近な場所に落書きが後を絶たない。
大聖堂側は当事者や多くの日本人からの謝罪を「日本の良識に敬服した」とたたえた。過ちを改める大切さを説く寛大な言葉に、恥を知らなければならない。