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nakata toru 中田徹



中田徹のオランダ通信
苦境の中で、戦う姿勢を示す男たち(前編)



ヘーレンフェーン戦で2ゴールを挙げたPSVのエース、ケジュマン(写真は昨シーズン)【(C)Getty Images/AFLO】
■ファン・ボモーの必死の檄だけが飛ぶピッチ……苦戦するPSV


 金曜日にアヤックスが、ローダJCと敵地で戦い1−1で引き分けた。PSVにとっては、ヘーレンフェーンに勝てば首位に立つチャンスがある試合になった。

 試合開始10分間、PSVはヘーレンフェーンを押し込んだ。
 フォゴーから、ブルヒンクから、そしてバウマから、エースのケジュマン目掛けて縦パスが入る。ケジュマンの勝負ドリブルが失敗したり、パスが惜しくもオフサイドになったりでシュートまで至らなかったが、ヘーレンフェーンディフェンスの背後をPSVはよく突くことができていた。

 だが、PSVの攻撃は10分を過ぎてから沈黙した。ヘーレンフェーンは5バックともいえる堅い守備でPSVに抵抗した。激しいヘーレンフェーンの守備に手を焼いたPSVは、パス回しが分断された。
 ファン・ボモーが21分にシュートミスと判断ミスを重ねたケジュマンをしかりつける。
 もどかしい試合運びにとうとう36分、ファン・ボモーが身ぶりでチーム全体に檄(げき)を飛ばす。42分にはーメダールに向かって激しく声をかける。
 前半開始早々こそPSVは攻め込んだが、ファン・ボモーの必死の檄だけが印象に残った、何も起きる気配のない前半の45分だった。

後半開始早々の48分。オフサイドの判定にケジュマンがラインズマンへ向かって声を荒げた。ケジュマンは興奮し過ぎ、主審ディック・ヨルからイエローカードをもらってしまった。ここからスタジアムの雰囲気が変わった。審判を非難する口笛コンサートが湧き起こった。ヘーレンフェーンがボールを持つとすさまじいブーイングだ。それにもめげずヘーレンフェーンは51分、30メートルくらいの距離からハンソンが見事なシュートを決め、1−0と先制点を奪った。

 スタジアムの中は騒然とした。ケジュマンはオフサイドではなかった。サポーターはそう信じていた。そんなもどかしい思いの中、失点を喫した。「劇的にスタンドの雰囲気が変わった」と試合後、地元記者が振り返った時間帯だった。


■チーム状態を見越してパワーサッカーに切り替えたヒディンク


 56分にディフェンダーのオーイヤーに代え、長身センターフォワードのヘッセリンクが投入された。力ずくでゴールをもぎ取るメッセージをヒディンク監督はピッチに送った。その攻撃の姿勢は早々に実った。
 63分、フォゴーの縦パスがオフサイドラインぎりぎりに出て、ケジュマンに通る。ケジュマンの右足が火を噴くと、シュートはヘーレンフェーンゴールのニアサイドに吸い込まれ1−1の同点にPSVは追いついた。

 PSVはこの日、いつもの「つなぐサッカー」が全くできていなかった。だが、だからこそヒディンク監督は、失点してからすぐにパワーサッカーに切り替える決断ができたとも言える。
 同点ゴールそのものは、グラウンダーによる縦パスからだったが、その後はヘッセリンクの頭を狙う攻撃で、ヘーレンフェーンにプレッシャーをかけ続けた。プレッシャーを受ける側のヘーレンフェーンは次第に集中力を欠いていった。

 78分、ファン・ボモーのFKはヘッセリンクのヘディングによって中に折り返され、ケジュマン渾身のボレーはGKフォンクの正面。しかしフォンクは強烈なシュートをはじくので精いっぱいで、再度ケジュマンにボールが渡った。ケジュマン、またも渾身のシュート! 2−1。

 もうヘーレンフェーンに抵抗する力は残っていなかった。ロベンのドリブルを引っ掛けたクロンペが退場になり、勝負は決まった。途端にファン・ボモーは「ペースを落とせ」と指示を出し、ボール回しをゆっくりと遅らせていく。だが、仕上げは済んでいなかった。ファン・ボモーが3点目を86分に決め、全体としては低調な試合だったものの、終わってみればPSVの完勝で、PSVはアヤックスを得失点差で抜き首位にたった。

「われわれのゴールがなければ、PSVがこれほどまでに攻め込んでくることはなかったはずだ。そうすれば勝ち点1を取れたのに」
 とデ・ハーン監督は、守備の出来に満足していたのか、奇妙な悔やしがり方をした。
 ヒディンク監督は、
「どんなに悔やんでも、きれいなゴールはきれいなゴールだよ」
 と即妙に答え、プレスルームを笑いに包んだ。

<後編に続く>
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