「小田原駅東口お城通り地区再開発事業」(以下「再開発事業」)の事業執行者である「アーバンコーポレーション」(以下「アーバン」)に<つぎの行為をしてはならない>として土地賃貸借契約締結差止請求が住民によって提訴された。被告は小田原市長小澤良明。
昨年12月28日横浜地裁に提訴されたこの事件は第2回の公判が5月7日に開かれたが、まだ書面のやり取り程度。しかし、この「再開発事業」に対して今度は、お城通り商店会連絡会から「再開発事業に関して、市長選が終了するまで事業の協定締結を待つように」という<要望書>が、市長と市議会議長あてに去る3月10日提出された。
連絡会では今年5月18日に施行される市長選の結果が判明するまで“待った”をかけている。
この「再開発事業」は、20年前からの構想だが、今、なぜ「アーバン」が事業執行者なのか、という不信感が、小田原市民の中で渦巻いている。したがって冒頭で記した住民訴訟の<訴状>では、<つぎの行為をしてはならない>とあり、3項目を掲げている。
(1)別紙物件目録記載の各土地を貸付けること。
(2)小田原市中心市街地における優良建築物等整備事業補助金交付要項に基づく補助金を交付すること。
(3)小田原駅東口お城通り地区再開発コンベンション負担金を交付すること。
「アーバン」は、この「再開発事業」の総事業費約89億円のうち約15億円の補助金の調達を予定し、昨年10月31日付で交付申請をしている。また小田原市は、施設が完成後、20年間にわたって合計18億4,600万円を管理費として支払うことが予定されている。しかし、「アーバン」が50年間(駐車場部分は20年)支払う借地料は、年間7,600万円で、これは「時価の半額でしかない安さだ」と住民はいう。
「アーバン」1社だけの応募なのに「選出」だって
神奈川県と小田原市が、広域交流拠点整備検討委員会を発足させ、小田原駅周辺地区を“広域交流拠点”として位置づけて取り組んでから前記したように20年の年月を経過している。これは山梨県、静岡県と連携して、富士、箱根、伊豆にまたがる交流圏づくりに取り組んできたが、ここへ来て悪名高いダーティな不動産業の「(株)アーバンコーポレーション」(広島・房園博行)が昨年6月に建築プランを示し、7月には事業計画の見直しを行い、地権者から大枠での合意が得られたという。

『神奈川新聞』(2007.10.11)
「アーバン」は東証一部に上場、資本金190億円で売上は年間1800億円、従業員320名というように、一見堂々たる企業。この「アーバン」が、平成18年9月に再開発準備組合が募集した事業執行者に応募し、同19年2月に「最優秀提案応募者」となり、優先交渉権者として「選定」された、ということになっているが、実は「アーバン」1社だけの応募だったというのだから「選定された」はないだろう。しかし、「準備組合」では「応募は2社だった」というが「あとの1社については社名を公表しない」という。たしか「村井敬合同設計」ではないかと噂されているが、これについては次回に詳報する。
そして同年4月には、市が「パシフィックコンサルタンツ」(以下「パシコン」)と事業推進補助業務の委託契約を締結したというのだから、小田原市執行部は見識がないのか、よほどダーティな企業がお好きらしい。

逮捕された荒木民生は「パシフィックコンサルタンツ」の社長だった(赤線)
未上場「会社四季報」(2003年下期)より
「パシコン」といえば、開発途上国への経済援助である“ODA”にからんでもっぱら不祥事を起こしているコンサルタント会社。
去る4月23日、東京地検特捜部に「パシフィックコンサルタントインターナショナル」(PCI)の元社長荒木民生ら4人が、特別背任容疑で逮捕されている。この元社長の荒木民生は、平成16年ごろまでは、市が業務委託契約を締結したという「パシコン」の社長でもあった人物。この社長の企業DNAを受け継いでいる現在の「パシコン」であってみれば押して知るべし。
ここで話を「アーバン」に戻す。
「アーバン」は、以前市が委託した設計会社の基本設計を大幅に変更した。コンベンションホールは全体の30パーセントだったものをたったの8パーセントに縮小し、駐車場も平面だったものを立体に変更、商業施設を拡張した。
基本設計が大きく変わり補助金も増える
この点について小田原市議会建設常任委員会で、委員の原田敏司が行政側に対して鋭くつめ寄っている。
<今回出されてきた優先交渉権者のプランですね。当初の基本設計が影も形もない全く変わった形になってきているわけです。私も全く同感であれは一体なんだったんだと。8000万円もかけて、時間もかけて市民説明会もして、それで私が同意していたわけではないにしても、こんなにあっさりとほごにされてしまう(「村井設計」による基本設計・編集=注)というのがどうも本当に納得いかないんですね。この間の経過を見ているともう全くアーバンコーポレーションの言いなりになっちゃってるのではないか。事業費も莫大に膨らんできていますし、小田原市の負担も知らないうちに補助金の額も増やされていると。私はこういうことで本当にいいのかという疑問を感じています。(平成18年7月25日・議事録)>

『神静民報』(2008.2.1) クリックで拡大
また、「アーバン」側から示された“証券化”についても委員から質問が相次いでいる。
つまり5年後に「アーバン」はSPC(特別目的会社)に所有権を移転し、SPCが証券を発行する。投資家はその証券を買い、利益の中から配当を受ける。しかし、土地の賃貸契約は、50年だから、この定期借地契約期間が終了すれば建物は解体される。その時に証券の取得者はどうなるのかが明確でない。
暴力団との縁が切れない橘田幸俊相談役と取締役の土肥孝治元検事総長が・・・
「アーバン」の名が不動産業者の間で語られる時、必ず聞こえてくるのが橘田幸俊という男で橘田は「アーバン」“相談役”として不動産の地上げに大きな影響力を持っている。
神田神保町、京橋3丁目、日本橋3丁目、目黒区などはペーパーカンパニーのダミーを駆使し、ダミーの間をコロコロと土地を転がし、地価をつり上げ、それぞれが利益を上げる。
もともと橘田は、「川崎定徳」という会社の終身社長だった佐藤茂(故人)の「愛時資」の役員だった。この佐藤茂は暴力団松葉会の元組員で、昭和60年ごろに「住友銀行」が「平和相互銀行」を吸収合併する直前に「平相銀」の株34パーセントを所有し、合併の立役者といわれた人物で、「住友銀行」は佐藤の要請で8,000億円を暴力団関係者に融資し、これが焦げついた。そして3000億円と5000億円と2度にわたって消却してしまった。
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『国際新聞』より |
『財界展望』(04年4月号より) |
橘田は佐藤の死後「愛時資」を継いだが、平成15年に負債2,370億円を抱えて自己破産に追い込まれている。しかし周知のように「アーバン」の相談役として東京都内の有名物件に割り込んでいる。
さきに社長が辞任に追い込まれた「スルガコーポレーション」は警視庁が「暴力団と関係が深い」とみる「光誉実業」の社長である朝治博に150億円もの地上げ資金を渡していた。これらの一部が暴力団に流出したとみている。捜査当局は「アーバン」も「スルガ」と同様に暴力団への資金流出に関心を示している。
「アーバン」は現在、「銀行から資金が出なくなり、株価が下落を続けていることから、むしろ貸金回収にまわっている」との噂がもっぱらで、加えて暴力団に資金が流れている可能性もある。
だからこそ元検事総長の土肥孝治を取締役に就任させて捜査当局をけん制してしるのだろうが、元検事総長と地面師が同じ釜の飯を食っている図式は奇妙であり滑稽でもある。
河野衆議院議長が推す市長候補 豊島輝慶(きよし)が再開発を継承
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小田原市長小澤良明 |
河野洋平衆議院議長 |
来る5月11日告示、18日が投票日の小田原市長選挙は、神奈川県議の豊島輝慶、元県議の山田文雄、前回市長選で小澤現市長に敗れた加藤憲一の3名が立候補する見通し。
ところが現職市長の小澤良明は県議の豊島輝慶を後継者として立候補させ、これを衆議院議長の河野洋平が推すというもの。もともと豊島は民主系といわれている中で、自民県議の磯貝捷彦も豊島支援に回わり、やや優勢というのが常識的な見方といえそうだ。
加藤憲一は、前回3万1200票を獲得、小澤良明をあと6000票と追いあげていたが、今回は自民の票が割れると予測されることから山田文雄に票が流れ、加藤と豊島の激戦となる可能性がつよい。
いま小田原は問題のある「アーバンコーポレーション」、「パシフィックコンサルタンツ」という悪徳企業に「再開発事業」を託している。
小田原市長の小澤良明は現在4期目で辞職を表明しているが、この小澤の腹心と言われる商工会議所会頭や不動産業者が「アーバンコーポレーションを連れてきた」との噂もある。
しかし「アーバン」の現状は厳しく、株価は下る一方。河野洋平も衆議院議長という国の三権の長になったことで思考回路が停止したらしく、「アーバン」の言いなりになり、市民を裏切った市長の後継者豊島輝慶を支持するとは困ったもの。しかも中央政界では、民主が自民福田康夫総裁の“問責決議”を云々しているときに、民主が推す豊島輝慶を支持するという“ネジレ選挙”は本末転倒の所業で、市民を混乱させるだけである。
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