この間書いた麻生京子の「ハンガリア・ロック」。昨日の午後、まったく違うレコードを聴いていたら、ハッと気が付きました。あの曲、ごぞんじ「ハンガリア狂詩曲」をロックンロールにしたものでした。歌詞があまりに強烈で気付かなかったけど、それにしても不注意。

先週、下北沢の「ムーズヴィル」というレコード・ショップで取り置きしてもらっていたDON SWAN、というバンドリーダーの「LATINO VOL.2」というアルバムを手に入れたのですが、このジャケットに使われているメキシコ風に彩色された牛のオブジェ、コレ、MARTIN DENNYの「SOMETHING LATIN」という、生音系DJにはよく知られたアルバムのジャケット写真に使われているのと同じ牛、でした。言うなれば、かの「原子心母」の牛と並ぶ20世紀音楽界の2大牛、ではありませんか? いま、しばらく考えていたのだけど、3頭目の牛はなかなか思いつかない。MooooooG、という牛イラストのレコードはあったけどね。

先日、福岡在住の「汚レコード」王子、小島泰生さんから送って戴いた2枚のシングル盤。
一枚は千昌夫の4曲入りEP。表題作「心の旅路」は何と編曲ボブ・サマーズ、演奏はローリンド・アルメイダと彼のグループ。イントロやブリッジ、間奏なんかは見事に洋楽、ソフトロック的サウンドなのですが、千昌夫が歌っている部分は見事に千昌夫の世界。千昌夫の声がまるでグレン・キャンベルのように響く瞬間。なんて、まったく何処にもなくて。ひとつの楽曲の中に、こんなに見事に洋楽と邦楽が同居しているケースも珍しい。ホームステイ、というか、ルームシェア、というか。そういえば、この人は「サマー・クリエイション」のジョーン・シェパードという歌手と国際結婚をしたのだっけ。ちなみにボブ・サマーズは島倉千代子の大名作「愛のさざなみ」の編曲家です。

もう一枚はコロムビア・マーチ・オーケストラの「駈足曲・ライディーン」というシングル盤。コレは小島さんとご一緒に福岡の「田口商店」という中古レコードショップに行ったとき、彼が抜いていたもの。よほどウラヤマしそうな顔をしていたのでしょうか、わざわざ送ってくださいました。ジャケットには、スパンコールのついたレオタードに白いブーツのチアリーダーたちを筆頭に、赤い制服のマーチング・バンドが大編成で陽の当たる大通りを凱旋している写真が。これを見ながら、ぼくの頭の中では、サックスとトロンボーンが、あの有名なリフを歌い、続いてピッコロとグロッケンシュピールがユニゾンで、あのアジア風メロディを奏でる、バックではスネア隊がロールを打ち、チューバがボンボンとベースラインを吹く、という見事な吹奏楽が聴こえたのですがね。残念ながら、ダメなシンセのカヴァー・ヴァージョン。まあ、ダメだから小島さんも譲ってくださったのでしょうけど。世の中にはジャケットだけ眺めているほうが、どんなにか素晴らしい音楽が聴ける、そんなレコードというのが本当にあるのです。ちなみにこのダメな仕事の編曲クレジットは久石譲さん。きっと憶えていないお仕事なのでは。以前、青春18・馬場正道さんに聴かせていただいた小学生たちの演奏による「ライディーン」は最高でしたけど。小島さん、どうも有難うございました。

ライムスター宇多丸さんによる、ここ10年のアイドル歌謡に対する定点観測コラムを一冊の本に纏めた「マブ論」単行本、ついに出ました。これは今年出た音楽関係の書籍の中でも出色の一冊でしょう。なんとワタクシ小西康陽との対談が巻末に掲載されています。小室さん、つんくさん、中田クン、といった作家と連続対談しているのか、と思ったのですが、出来上がってみればオレだけ、というのにはちょっとビックリ。でもPERFUMEが大ブレイクして、ずっと追いかけてきた宇多丸さんもいまは楽しくてしょうがないでしょうね。それにしても宇多丸さん、ヒップホップでもスゴイ人なのに、どうなっているのでしょうか。たぶん子供のときにアタマが良過ぎた人、っていう印象の方でしたね。

チリも積もればゴミと化す。こんなトリヴィアに囲まれている私の音楽生活、でした。きょうの「レコード手帖。」は久々、ムジカノッサ中村智昭さん。広島の名店「中村屋」の御曹司にして、カフェアプレミディの店長さん。なんか「レコード手帖。」の話が書かれている、きょうはメタ「手帖。」です。ええと、斉藤さんもヨロシク。

ビーチェのニュー・アルバム。きょうはタイトル、書きませんので。では、きょうも更新。駈足曲で行進、です。

(小西康陽)