【発明の名称】 |
ファイル共有システム及びファイル共有装置間のファイル移行方法 |
【発明者】 |
【氏名】雑賀 信之 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区戸塚町5030番地 株式会社日立製作所ソフトウェア事業部内
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【要約】 |
【課題】ファイルサーバ間でデータファイルを移行させる場合に、移行先でのファイルを特定して、属性情報(アクセス制御情報)を設定可能とする。
【解決手段】移行元ファイルサーバ10のファイル調査機能12は、移行対象のファイルについて、その特徴となる情報(ファイル名、ファイルサイズ、ハッシュ値等)をそれぞれ取得し、調査結果ファイル30を生成する。調査結果ファイル30には、アクセス制御情報(ACL)も含まれる。移行対象のファイル及び調査結果ファイル30は、移行先ファイルサーバ40に移される。ACL情報設定機能42は、調査結果ファイル30に基づいて、移行されたファイルを特定し、ACLを再設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 移行元ファイル共有装置と、 前記移行元ファイル共有装置と通信可能に接続された移行先ファイル共有装置と、 前記移行元ファイル共有装置に保持されている少なくとも1つ以上のファイルを選択する選択手段と、 前記選択されたファイルの特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、 前記選択されたファイルを前記移行先ファイル共有装置に移行させるファイル移行手段と、 前記取得された特徴情報に基づいて、前記移行先ファイル共有装置に移行されたファイルを特定するファイル特定手段と、 を備えたことを特徴とするファイル共有システム。 【請求項2】 前記特徴情報取得手段は、前記選択されたファイルに関する所定の属性情報を含んだ特徴情報を取得し、 前記ファイル特定手段により特定された前記ファイルについて、前記特徴情報に含まれる前記所定の属性情報を関連づける属性再設定手段を備えた請求項1に記載のファイル共有システム。 【請求項3】 前記所定の属性情報は、前記選択されたファイルに関するアクセス制御情報である請求項2に記載のファイル共有システム。 【請求項4】 前記特徴情報取得手段は、前記選択されたファイルに関する他の属性情報を含んで、前記特徴情報を取得する請求項1に記載のファイル共有システム。 【請求項5】 前記特徴情報取得手段は、さらに、前記選択されたファイルのデータを所定の関数で処理することにより得られるファイルの同一性を示す同一性情報を含んで前記特徴情報を取得する請求項4に記載のファイル共有システム。 【請求項6】 前記ファイル特定手段は、前記特徴情報に含まれる前記他の属性情報によって前記ファイルを特定できない場合に、前記所定の関数を用いて前記同一性情報を生成し、この生成した同一性情報と前記特徴情報に含まれる同一性情報とを比較することにより、前記ファイルを特定する請求項5に記載のファイル共有システム。 【請求項7】 前記ファイル特定手段は、前記同一性情報によって前記ファイルを特定できない場合に、前記移行元ファイル共有装置におけるファイルパス情報と前記移行先ファイル共有装置におけるファイルパス情報との類似度を求め、この類似度に基づいて前記ファイルを特定する請求項6に記載のファイル共有システム。 【請求項8】 移行元ファイル共有装置において、移行すべき少なくとも1つ以上のファイルを選択するステップと、 前記選択されたファイルに関する所定の属性情報を含んだ特徴情報を取得するステップと、 前記選択されたファイルを移行先ファイル共有装置に移行させるステップと、 前記取得された特徴情報に基づいて、前記移行先ファイル共有装置に移行されたファイルを特定するステップと、 前記特定されたファイルについて、前記特徴情報に含まれる前記所定の属性情報を関連づけるステップと、 を含んだことを特徴とするファイル共有装置間のファイル移行方法。 【請求項9】 移行元ファイル共有装置において選択された移行対象範囲を取得するステップと、 前記移行対象範囲に含まれる全てのファイルについて、少なくとも各ファイルの属性情報とアクセス制御情報と所定の関数により得られる同一性情報とを、それぞれ取得するステップと、 前記各ファイルについてそれぞれ取得された前記各情報に基づいて特徴情報を出力するステップと、 をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。 【請求項10】 移行された少なくとも1つ以上のファイルについての属性情報とアクセス制御情報と所定の関数により得られる同一性情報とを含んだ特徴情報を取得するステップと、 所定の検索範囲を設定するステップと、 前記設定された検索範囲において、前記移行されたファイルを前記特徴情報に基づいて特定するステップと、 前記特定されたファイルについて、前記アクセス制御情報を再設定するステップと、 をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば、ファイルサーバやNAS(Network Attached Storage)等を用いたファイル共有システム及びファイル共有装置間のファイル移行方法に関する。 【背景技術】 【0002】 ネットワーク上に分散された複数のコンピュータ端末間でデータを共有するために、ファイルサーバが従来より用いられている。初期型のファイルサーバとしては、例えば、汎用OS(Operating System)に、CIFS(Common Internet File System)やNFS(Network File System、NFSは米国Sun Microsystems, Inc.の登録商標もしくは商標)等のファイル共有プロトコルを実装したものが知られている。改良されたファイルサーバとしては、ファイル共有サービスに特化した専用のOSを用い、複数のファイル共有プロトコル(CIFS、NFS、DAFS(Direct Access File System)等)をサポートしたNASが知られている。 【0003】 これらのファイルサーバでは、パーミッション情報を設定することにより、アクセス権を管理できるようになっている。例えば、NFSを利用する場合は、「所有者」、「グループ」、「その他」という3種類のユーザについて、ファイルの読み込み、ファイルへの書込み、ファイルの実行を許可するか否かを設定することができる。あるいは、例えば、CIFSを利用する場合は、ACL(Access Control List)と呼ばれるアクセス制御情報を用いることにより、同一のファイルに関し、各ユーザ毎にそれぞれ異なるアクセス制御を行うことができるようになっている。これにより、予めアクセス権限の設定されたユーザのみがファイルにアクセスできるようになっている。 【0004】 ところで、共有すべきファイルや共有ファイルを利用するクライアントは年々増加する一方である。このため、既存のファイル共有システムに新たなファイルサーバを追加し、増加したファイルや新たな需要に対応する。新しいファイルサーバを追加する場合、既存のファイルサーバに記憶されている全部または一部のファイルを、新しいファイルサーバに移行させることがある。また、例えば、組織再編等に伴って、ディレクトリやボリューム間でファイルを移動させる場合もある。 【0005】 移行元ファイルサーバから移行先ファイルサーバにファイルを移行させる方式としては、種々のものが知られている。例えば、テープデバイス等のバックアップデバイスを用いて、移行元ファイルサーバに記憶されているファイルのバックアップを取り、このバックアップデータを移行先ファイルサーバにリストアする方法がある。この場合、移行元のディレクトリ構造、アクセス制御情報を含む属性情報も一緒にバックアップし、これら全てを移行先の装置にリストアすることもできる。あるいは、dumpコマンド、tarコマンド、cpコマンド、xcopyコマンド等を用いて、移行元ファイルサーバの所定のディレクトリまたは所定のファイルを、移行先ファイルサーバに個別に移行させる方法もある。 【0006】 なお、例えば、コボルプログラムで利用するデータファイルをデータベース形式に変換等するために、データ定義情報及び属性情報を統一した共通レコードフォーマット情報を設け、これにより異種データファイル間のデータ変換を自動化する技術も知られている(特許文献1)。 【特許文献1】特開2000−347907号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 移行元ファイルサーバと移行先ファイルサーバとが、例えば、NFS同士、CIFS同士等のように、それぞれ同じファイルサーバ機能を提供している場合は、移行元ファイルサーバのファイル、メタデータ、ディレクトリ構造の全てについてバックアップを取り、移行先ファイルサーバにリストアすることにより、記憶構造を丸ごと移し替えることも可能である。 【0008】 一方、例えば、NFSとCIFS等のように、移行元ファイルサーバと移行先ファイルサーバのファイルサーバ機能がそれぞれ異なる場合は、メタデータを移し替えることが難しい。それぞれのOSが異なると、移行元ファイルサーバのディレクトリ構造と移行先ファイルサーバのディレクトリ構造とが相違するためである。 【0009】 例えば、移行元ファイルサーバにおいて、「/share」というディレクトリ下に、「/folder」というディレクトリが存在すると仮定する(「/share/folder」)。この「/folder」をOSの種類の異なる移行先のファイルサーバに移行させると、ファイル管理システムの要請により、「/share」下の「/current」というディレクトリの下に自動的に配置される場合がある。この実際のディレクトリ構造の相違は、クライアントには認識されない。移行先ファイルサーバに実装された異種OS用の資源共有化プログラムが、実際のディレクトリ構造の相違を隠して、「/folder」をクライアントに表示するためである。このような異種OS間での資源共有化(ファイル交換)を可能とするプログラムとしては、例えば、「Samba」が知られている。 【0010】 異種OS間でファイルを移行させる場合、移行後のディレクトリ構造の見た目は変わらないが、アクセス制御情報等のメタデータ(属性情報)が欠落してしまい、移行先ファイルサーバに正常に反映されない場合がある。特に、GUI(Graphical User Interface)画面から、いわゆるドラッグ&ドロップのような操作で、所望のファイルやディレクトリを個別に選択して移行させる場合は、ファイル本体は移されても、アクセス制御情報等のメタデータが欠落する可能性がある。この場合、ファイルサーバの管理者は、移行前のアクセス制御情報を参照しながら、1つ1つのファイルを手作業で調査してアクセス制御を再設定する必要がある。しかし、実際のディレクトリ構造は相違するので、ファイルの特定作業は難航する。また、同種同名のファイルが複数発見された場合は、いずれのファイルにアクセス制御を設定すべきか判断に迷うことになる。 【0011】 特許文献1に記載されているようなデータファイルの自動変換装置の場合は、予め明確に定義されているデータファイルを一方の形式から他方の形式に変更するだけであり、ディレクトリ構造やメタデータまで考慮するものではない。また、データファイルを変換するための規則を予め定義等する必要があり、構成が複雑化する。さらに、ファイルサーバでは、複雑な階層記憶構造内の種々の場所に種々の形式のファイルが多数存在し、それぞれ異なるメタデータを有するため、正確に移行させるのは難しい。 【0012】 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、移行されたファイルを特定することができるファイル共有システムを提供することにある。本発明の目的の一つは、移行されたファイルを自動的に特定し、属性情報を再設定することができるファイル共有システム及びファイル共有装置間のファイル移行方法を提供することにある。本発明の目的の一つは、移行先に同種同名のファイルが複数存在する場合でも、ファイルを特定可能なファイル共有システムを提供することにある。本発明の更なる目的は、後述する実施の形態の記載から明らかになるであろう。 【課題を解決するための手段】 【0013】 上記課題を解決すべく、本発明に従うファイル共有システムは、移行元ファイル共有装置と、移行元ファイル共有装置と通信可能に接続された移行先ファイル共有装置と、移行元ファイル共有装置に保持されている少なくとも1つ以上のファイルを選択する選択手段と、選択されたファイルの特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、選択されたファイルを移行先ファイル共有装置に移行させるファイル移行手段と、取得された特徴情報に基づいて、移行先ファイル共有装置に移行されたファイルを特定するファイル特定手段と、を備えている。 【0014】 移行元ファイル共有装置及び移行先ファイル共有装置は、それぞれファイルサーバ(NASを含む)として構成することができる。移行元ファイル共有装置及び移行先ファイル共有装置は、記憶資源を管理下におくもので、多数のファイルを記憶し、多数のクライアントにファイル共有サービスを提供可能なものである。移行元ファイル共有装置と移行先ファイル共有装置とは、例えば、LAN(Local Area Network)を介して双方向のデータ通信が可能なように接続されている。なお、ファイル共有装置は、記憶デバイスとSAN(Storage Area Network)を介して接続されてもよい。 【0015】 ユーザ(例えば、管理者等)は、選択手段を介して、移行元ファイル共有装置に保持されている少なくとも1つ以上のファイル(ディレクトリを含む)を選択する。特徴情報取得手段は、選択されたファイルについて、特徴情報を取得する。ここで、特徴情報とは、選択されたファイルの特徴を示す情報であり、選択されたファイルを検索するために使用される。特徴情報としては、例えば、ファイル名、ファイルパス情報、ファイルサイズ、ファイル更新日時等を挙げることができる。また、後述のようにメッセージダイジェストを用いることもできる。選択手段により選択されたファイルは、ファイル移行手段によって移行先ファイル共有装置に移される。ファイル特定手段は、先に生成された特徴情報に基づいて、移行先ファイル共有装置に保持されたファイル群の中から、移行されたファイルを探し出して特定する。従って、異種OS間でファイルが移行された場合でも、特徴情報に基づいて、移行されたファイルを特定することができる。 【0016】 本発明の一態様では、特徴情報取得手段は、選択されたファイルに関する所定の属性情報を含んだ特徴情報を取得し、ファイル特定手段により特定されたファイルについて、特徴情報に含まれる所定の属性情報を関連づける属性再設定手段を備える。 所定の属性情報としては、例えば、ACL等のアクセス制御情報が挙げられる。移行されたファイルが特定されると、属性再設定手段は、特定されたファイルに対して所定の属性情報を再設定する。 【0017】 特徴情報取得手段は、選択されたファイルに関する他の属性情報を含んで、特徴情報を取得することもできる。 他の属性情報としては、例えば、ファイル名、ファイルサイズ、更新日時、ファイルパス情報等を挙げることができる。 【0018】 本発明の一態様では、特徴情報取得手段は、さらに、選択されたファイルのデータを所定の関数で処理することにより得られるファイルの同一性を示す同一性情報を含んで特徴情報を取得する。 ファイルの同一性を示す同一性情報としては、例えば、ハッシュ関数を用いたメッセージダイジェストを挙げることができる。ハッシュ関数とは、与えられた原文データから固定長の疑似乱数を発生させるものである。ハッシュ関数により生成された値は、ハッシュ値またはメッセージダイジェストと呼ばれる。原文データが異なれば、ハッシュ値もそれぞれ異なるため、ハッシュ値によってファイル内容の同一性を保証可能である。ファイルの特徴情報にハッシュ値のような同一性情報を含めることにより、より正確にファイルを特定することができる。 【0019】 本発明の一態様では、ファイル特定手段は、特徴情報に含まれる他の属性情報によってファイルを特定できない場合に、所定の関数を用いて同一性情報を生成し、この生成した同一性情報と特徴情報に含まれる同一性情報とを比較することにより、ファイルを特定するようになっている。 即ち、ファイル特定手段は、例えば、ファイル名、ファイルサイズ、更新日時等の他の属性情報によってファイルの特定を試みる。しかし、仮に、同名、同サイズで更新日時も等しい複数のファイルが存在する場合は、他の属性情報のみでファイルを特定することができない。この場合、ファイル特定手段は、検索された複数の候補ファイルについて同一性情報(ハッシュ値)を算出し、特徴情報に含まれる同一性情報と比較することにより、ファイルを特定する。 【0020】 本発明の一態様では、ファイル特定手段は、同一性情報によってファイルを特定できない場合に、移行元ファイル共有装置におけるファイルパス情報と移行先ファイル共有装置におけるファイルパス情報との類似度を求め、この類似度に基づいてファイルを特定するようになっている。 ファイル内容の同一性を示す同一性情報が共通する複数のファイルが存在する場合も考えられる。この場合、ファイル特定手段は、ファイルパス情報に着目してファイルを特定する。即ち、ファイル特定手段は、移行前のファイルパス情報と移行後のファイルパス情報との類似度を求め、ファイルを特定する。より詳しくは、ファイルパス情報のうち、ディレクトリ構造の上位に位置するパス情報はシステム(OS)に依存する性質を有し、下位に位置するパス情報はユーザに依存する性質を有する。ユーザは、自己が使用可能な記憶領域内に自分の分かり易い名称のディレクトリを適宜設定して、独自にファイルを管理しようとするためである。従って、例えば、ファイルパス情報のうち下位の情報を中心に類似度を解析することにより、ファイルを特定することができる。 【0021】 本発明の他の観点に従うファイル共有装置間のファイル移行方法は、移行元ファイル共有装置において、移行すべき少なくとも1つ以上のファイルを選択するステップと、選択されたファイルに関する所定の属性情報を含んだ特徴情報を取得するステップと、選択されたファイルを移行先ファイル共有装置に移行させるステップと、取得された特徴情報に基づいて、移行先ファイル共有装置に移行されたファイルを特定するステップと、特定されたファイルについて、特徴情報に含まれる所定の属性情報を関連づけるステップと、を含んでいる。 【0022】 本発明の別の観点に従うコンピュータプログラムは、移行元ファイル共有装置において選択された移行対象範囲を取得するステップと、移行対象範囲に含まれる全てのファイルについて、少なくとも各ファイルの属性情報とアクセス制御情報と所定の関数により得られる同一性情報とを、それぞれ取得するステップと、各ファイルについてそれぞれ取得された前記各情報に基づいて特徴情報を出力するステップと、をコンピュータに実行させるようになっている。 【0023】 このコンピュータプログラムは、移行元ファイル共有装置上で実行される。このコンピュータプログラムは、例えば、異種OS間でメタデータを伴うファイル移行を実現するために、ファイルを移行するための準備を整える。このコンピュータプログラムは、移行が予定されているファイルについて、特徴情報を取得し出力する。この出力された特徴情報を参照することにより、移行先のファイル共有装置においてファイルを特定することができる。 【0024】 本発明のさらに別の観点に従うコンピュータプログラムは、移行された少なくとも1つ以上のファイルについての属性情報とアクセス制御情報と所定の関数により得られる同一性情報とを含んだ特徴情報を取得するステップと、所定の検索範囲を設定するステップと、設定された検索範囲において、移行されたファイルを特徴情報に基づいて特定するステップと、特定されたファイルについて、アクセス制御情報を再設定するステップと、をコンピュータに実行させる。 【0025】 このコンピュータプログラムは、移行先ファイル共有装置上で実行される。このコンピュータプログラムは、移行先ファイル共有装置が管理する記憶領域のうち、所定の領域を検索範囲として予め絞り込む。例えば、移行されるファイルの属するディレクトリ名や、移行先ファイル共有装置で事前に設定されている共有ディレクトリ名等を考慮することにより、検索範囲を予め絞り込むことができる。このコンピュータプログラムは、設定された検索範囲内を特徴情報に基づいて検索し、ファイルを特定する。そして、このコンピュータプログラムは、特定されたファイルにアクセス制御情報を再設定する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、図1〜図12に基づき、本発明の実施形態を説明する。 本発明では、以下に詳述するように、移行元ファイルサーバで実行されるコンピュータプログラム(ファイル調査エージェント)と、移行先ファイルサーバで実行されるコンピュータプログラム(ファイル特定・属性設定エージェント)との連携によって、移行されたファイルを特定し、アクセス制御情報を自動的に設定する。 【実施例1】 【0027】 図1は、本実施例によるファイル共有システムの全体概要を示すブロック図である。ファイル共有システムは、それぞれ後述するように、ファイルシステム20を備えた移行元ファイルサーバ10と、ファイルシステム50を備えた移行先ファイルサーバ40とを含んで構成されている。各ファイルサーバ10,40は、例えば、汎用のOSにファイル共有プロトコルを実装した装置でもよいし、ファイル共有サービスに特化したOSを有する装置(NAS)でもよい。 【0028】 移行元ファイルサーバ10は、ファイルシステム20を制御するものであり、OS及びファイルシステムプログラム(以下「OS等」)11と、ファイル調査機能12とを備えている。OS等11は、ファイル共有サービスの基盤を提供するものであり、1つ以上のファイル共有プロトコルに対応している。 【0029】 ファイル調査機能12は、移行対象のファイルについて後述の特徴情報を調査し、調査結果ファイル30を出力するものである。この調査結果ファイル30は、移行先ファイルサーバ40で利用される。ファイル調査機能12は、例えば、ACL情報取得機能121と、ハッシュ値演算機能122と、メタ情報取得機能123と、調査結果ファイル生成機能124とから構成することができる。ファイル調査機能12は、その全てをコンピュータプログラムから構成することができる。しかし、これに限らず、機能の少なくとも一部をハードウェア回路によって構成することもできる。また、ファイル調査機能12を、例えば、NIC(Network Interface Card)等のような通信制御部に実装することも可能である。 【0030】 ACL情報取得機能121は、移行対象のファイルに設定されたアクセス制御情報としてのACL情報を取得するものである。即ち、ACL情報取得機能121は、移行対象のファイルを、どのようなユーザがどのような態様(読み込み、書込み、実行)でアクセス可能であるかを示す情報を取得する。なお、アクセス制御情報としては、ACL情報に限らない。ハッシュ値演算機能122は、移行対象のファイルについて、そのファイルのデータを所定のハッシュ関数に通すことにより、ファイル内容に依存する固定長の疑似乱数を生成する。なお、ファイル内容の同一性を証明可能な情報であれば、ハッシュ値に限らず用いることができる。メタ情報取得機能123は、移行対象のファイルに関連するメタデータを取得するものである。メタデータとしては、例えば、ファイル名、ファイルサイズ、ファイルパス情報(ファイルシステム20における格納位置を示す情報)、更新日時(年月日時分秒)等を挙げることができる。調査結果ファイル生成機能124は、それぞれ取得されたACL情報、ハッシュ値及びメタデータによって、移行対象のファイルの特徴を定義する調査結果ファイル30を生成して出力するものである。調査結果ファイル30の構成はさらに後述する。 【0031】 ファイルシステム20は、移行元ファイルサーバ10に接続されており、多数のファイル21を記憶している。ファイルシステム20は、例えば、ハードディスクドライブや半導体メモリ、あるいは光ディスク等のような記憶デバイスを用いて構築される。なお、ファイルシステム20を構成する記憶デバイス間は、例えば、SAN等により接続することができる。移行元ファイルサーバ10とファイルシステム20とは、それぞれ別体の装置として構成してもよいし、1つの装置内にまとめてもよい。 【0032】 移行先ファイルサーバ40は、ファイルシステム50を制御するもので、OS等41と、ACL情報設定機能42とを備えている。移行先ファイルサーバ40は、例えば、LAN等の通信ネットワークCNを介して、移行元ファイルサーバ10と双方向のデータ通信可能に接続されている。なお、移行先ファイルサーバ40は、LANやインターネット等の通信ネットワークを介して、1つ以上の(通常は多数の)クライアント端末(図示せず)と接続されている。また、ファイル共有サービスに用いる通信ネットワークと、ファイル移行用の通信ネットワークとは共通してもよいし、あるいは、それぞれ別々のネットワークであってもよい。OS等41は、少なくとも1つ以上のファイル共有プロトコルに対応する。より詳しく言えば、OS等41は、移行先ファイルサーバ40の備えるファイル共有プロトコルと、このファイル共有プロトコルとは異なる別のファイル共有プロトコルとに対応している。 【0033】 ACL情報設定機能42は、調査結果ファイル30に基づき、移行元ファイルサーバ10のファイルシステム20から移行先ファイルサーバ40のファイルシステム50に移されたファイル51を特定し、ACL情報を再設定するものである。ACL情報設定機能42は、例えば、検索範囲設定機能421と、調査結果ファイル取得機能422と、ハッシュ値演算機能423と、ファイル特定機能424と、ACL設定機能425とを備えて構成することができる。ACL情報設定機能42は、その全部をコンピュータプログラムとして構成することもできるし、少なくとも一部をハードウェア回路として構成することもできる。 【0034】 検索範囲設定機能421は、ファイルシステム50内を検索する範囲を事前に設定するためのものである。例えば、移行先ファイルサーバ40が公開用に設定しているディレクトリ及び移行されたファイルのディレクトリに基づいて検索範囲を設定することにより、検索範囲を絞り込んで効率的な検索を行うことができる。調査結果ファイル取得機能422は、移行元ファイルサーバ10のファイル調査機能12により生成された調査結果ファイル30を取得するものである。なお、調査結果ファイル30は、手動で、または後述の実施例のように自動的に、移行元ファイルサーバ10から移行先ファイルサーバ40に転送される。ハッシュ値演算機能423は、ファイルを特定するための情報として、ファイル内容に基づいたハッシュ値を算出する。検索されたファイルについてハッシュ値を一律に求めることもできるし、特定の場合にのみハッシュ値を算出することもできる。ファイル特定機能424は、調査結果ファイル30に基づいて、ファイルシステム50内のうち設定された検索範囲を検索し、ファイルシステム20からファイルシステム50に移されたファイルがいずれのファイルであるかを特定する。ACL設定機能425は、ファイルが特定されると、調査結果ファイル30に基づいて、移行前に設定されていたACLを移行後のファイルに再び設定する。 【0035】 ファイルシステム50は、ファイルシステム20と同様に、ハードディスクや半導体メモリ、光ディスク等の記憶デバイスを用いて構成され、多数のファイルを記憶することができる。 【0036】 図2を参照する。図2は、ACL情報の一例を模式的に示す説明図である。図に示すように、各ファイル毎に、アクセス制御情報(ACL情報)を設定可能である。例えば、各ファイルのそれぞれについて、ユーザやグループといったアカウント毎に、各アカウントでアクセス可能な権利を定義することができる。アクセス権としては、例えば、ファイルの読み出し(リード)、ファイルへの書込み(ライト)、アクセス禁止(NG)等を挙げることができる。 【0037】 図3を参照する。図3は、ファイル調査機能12によって生成される調査結果ファイル30の一例を示す説明図である。調査結果ファイル30は、移行対象の全てのファイルについて、各ファイルをそれぞれ特徴づける情報を1レコードにまとめたものである。各ファイルを特徴づける情報としては、例えば、ファイル名、旧格納位置(移行元のファイルシステム20における格納位置)、ファイルサイズ、ACL情報、ダイジェスト情報(ハッシュ値)等を挙げることができる。なお、更新日時や作成者等の他の特徴となる情報をさらに加えてもよい。また、本実施例では、1回の移行操作で移される複数ファイルをまとめて調査結果ファイル30を生成するが、これに限らず、移行される各ファイル毎にそれぞれ調査結果ファイルを生成してもよい。 【0038】 図4は、移行元ファイルサーバ10から移行先ファイルサーバ40にファイルを移動する場合の模式図である。(a)は移行元ファイルサーバ10におけるファイル管理のイメージを、(b)は移行先ファイルサーバ40におけるファイル管理のイメージを、(c)はクライアント側から見たディレクトリ構造のイメージをそれぞれ示す。 【0039】 移行対象となるディレクトリ「/folder_c」は、「/share」の下に置かれており、「d3.txt」、「d4.txt」及び「d5.txt」の2つのテキストファイルを有する。このディレクトリ「/folder_c」を移行先ファイルサーバ40に移動させると、図4(b)に示すように、例えば、「/share」下に形成された「/current」ディレクトリの中に格納される。移行元ファイルサーバ10と移行先ファイルサーバ40とは、それぞれOSが異なるため、ディレクトリ構造が相違する。しかし、図4(c)に示すように、クライアント側からは、移行前も移行後も変化がない。移行先ファイルサーバ40が、実際のディレクトリ構造の相違を隠して、クライアントにファイル共有サービスを提供しているためである。図4に示すように、クライアント側から見えるディレクトリ構造が移行の前後で変化無い場合でも、実際の格納位置(ファイルパス)は変化している。従って、ACL情報を後から再設定する場合は、移行前と異なるディレクトリ構造の中を特定のファイルを求めて検索する必要がある。本実施例では、このために1つの解決方法を提供する。 【0040】 図5は、ファイル共有システムの全体動作の概要を示すフローチャートである。管理者等のユーザは、移行対象のファイル(ディレクトリを含む)を指定する(S1)。ユーザは、ファイル単位で移行対象を選択することもできるし、または、ディレクトリ単位で移行対象を選択することもできる。あるいは、ファイルとディレクトリとをそれぞれ選択することもできる。 【0041】 移行対象のファイルが選択されると、移行元ファイルサーバ10のファイル調査機能12は、選択された全てのファイルについて特徴となる情報を取得し、調査結果ファイル30を生成する(S2)。次に、選択されたファイル21が移行先ファイルサーバ40に移行されると、このファイル(あるいはファイル群)は、移行先のファイルシステム50に記憶される(S3)。そして、S2で生成された調査結果ファイル30も移行先ファイルサーバ40に移され(S5)、例えば、移行先ファイルサーバ40のメモリに格納される(S6)。移行先ファイルサーバ40のACL情報設定機能42は、調査結果ファイル30を参照して、ファイルシステム50に記憶されたファイルの中から移行されたファイルを特定し、ACL情報を再設定する(S7)。 【0042】 なお、図5中では、説明の便宜上、移行対象のファイルと調査結果ファイル30とを別々に移行させるかのように示しているが、両ファイルを同時に移してもよい。また、選択されたファイル及び調査結果ファイル30は、例えば、ユーザの手動操作によるドラッグ&ドロップにより行うことができる。より具体的には、移行対象のファイルをマウス等の選択デバイスを用いて選択し、グラフィカルな操作によって、ネットワークマウントされた移行先のファイルサーバ40に移動させる。この操作により、選択されたファイルは、移行元ファイルサーバ10から通信ネットワークCNを介して移行先ファイルサーバ40に転送される。調査結果ファイル30も、選択されたファイルと同様に、ドラッグ&ドロップ操作によって、移行先ファイルサーバ40に転送することができる。これに限らず、コマンドラインインターフェースにより、転送コマンドを用いて、選択されたファイル及び調査結果ファイル30を転送させてもよい。また、選択された移行対象のファイルと、このファイルの特徴を記述する調査結果ファイル30とは、それぞれ別々の方法によって移行先ファイルサーバ40に転送することもできる。 【0043】 図6は、移行先ファイルサーバ40のファイル調査機能12により実行される調査結果ファイル生成処理を示すフローチャートである。図6では、ある1つのディレクトリを移行させる場合を例示するが、複数のディレクトリを同時に移行させる場合は図6に示す処理をディレクトリ数だけ繰り返せばよい。また、ディレクトリ内の1つまたは複数のファイルのみを移行させる場合は、選択されたファイルについてのみ調査結果ファイル30を生成するようにすればよい。 【0044】 まず、ユーザにより選択された移行対象のディレクトリ名を取得する(S11)。そして、選択されたディレクトリに含まれる各ファイルについて、以下の処理を繰り返し実行する。即ち、ファイルのメタ情報(ファイル名、ファイルサイズ等)を取得し(S12)、次にファイルのACL情報を取得し(S13)、さらにファイルのハッシュ関数を算出する(S14)。このようにして、1つのファイルについて特徴情報が得られると、この特徴情報は、1つのレコードとして調査結果ファイル30に出力される(S15)。選択されたディレクトリに含まれる全てのファイルについて調査が完了するまで(S16)、調査対象を指示するファイルポインタを移動させながら、上述の調査処理を繰り返す(S17)。全てのファイルについて特徴情報を取得し、調査が完了した場合は(S16:YES)、処理を終了する。 【0045】 次に、図7は、移行先ファイルサーバ40のACL情報設定機能42により実行されるACL情報再設定処理を示す。まず、移行されるディレクトリ名を取得する(S21)。このディレクトリ名は、例えば、ユーザの手動操作(ドラッグ&コピー)から取得することができる。次に、移行元ファイルサーバ10で生成された調査結果ファイル30を読み込み(S22)、さらに、移行先のディレクトリ情報を取得する(S23)。例えば、Sambaの場合は、smb.confファイルにSambaが公開するディレクトリが明示されている。そして、移行対象のディレクトリ情報と移行先の公開ディレクトリの情報とに基づいて、検索範囲を設定する(S24)。即ち、移行先のファイルシステム50の全体を検索範囲とするのではなく、少なくともファイルシステム50のうち公開されるディレクトリ内で、検索範囲を設定する。これにより無駄な検索を未然に防止することができる。 【0046】 次に、調査結果ファイル30から1レコード分のデータを取得し(S25)、ファイル名やファイルサイズ等の一般的な特徴情報に基づいて、設定された検索範囲内のファイルを検索する(S26)。この第1段階のファイル検索によって、1つもファイルが検索されなかった場合は(S27:NO)、移行対象として選択されたファイルが何らかの原因で移行されなかった場合なので、エラー処理を行う(S28)。エラー処理としは、例えば、検索に失敗したファイル名等をエラーログファイルに出力する等が挙げられる。エラー処理後、次のファイルに移動する(S36)。 【0047】 ファイル名やファイルサイズ等による第1段階のファイル検索の結果、1つ以上のファイルが検索された場合は(S27:YES)、検索されたファイルが複数存在するか否かを判定する(S29)。1つのファイルのみが検索された場合は(S29:NO)、この検索された唯一のファイルを、目的とするファイルであると判断し、元のファイルに設定されていたACL情報を再び設定する(S30)。即ち、移行前に設定されていたアクセス制御と同一の(または、実質的に同一の)アクセス権を設定する。なお、移行元におけるACL情報と移行先におけるACL情報の形式が異なる場合は、例えば、予め設定された変換規則に従って、ACL情報を適宜変更するようにしてもよい。 【0048】 同名同サイズのファイルが複数検索された場合は(S29:YES)、検索された各ファイルについてハッシュ値をそれぞれ算出する(S31)。そして、移行対象の元のファイルが有するハッシュ値と同一のハッシュ値を有するファイルが1つだけ存在するか否か(逆に言えば同一ハッシュ値のファイルが複数存在するか)を判定する(S32)。同一のハッシュ値を有するファイルが1つだけ存在する場合は(S32:YES)、その同一のハッシュ値を有するファイルを、目的のファイルであると判断し、元のファイルに設定されていたACL情報を設定する(S33)。 【0049】 同一のハッシュ値を有するファイルが複数検索された場合は(S32:NO)、調査結果ファイル30に示された元のファイルパス情報と、検索されたファイルのファイルパス情報とを比較することにより、目的とするファイルを1つに特定する(S34)。このファイルパスに基づくファイルの特定については、さらに後述する。 【0050】 移行対象の全てのファイルについてそれぞれ特定され、ACL情報が設定されるまで(S35)、検索対象のファイルを移動させながら上記処理を繰り返す(S36)。移行対象の全てのファイルについて特定され、ACL情報が設定されると(S36:YES)、処理を終了する。 【0051】 このように、本実施例では、3段階の検索によってファイルを特定する。第1段階の検索では、調査結果ファイル30に記述された一般的な特徴情報(ファイル名、ファイルサイズ等)を用いて行われる。この第1段階の検索では、特別な処理を必要とせず、速やかに選別することができる。第1段階の検索では特定できない場合、ハッシュ値を用いた第2段階の検索が行われる。ハッシュ値算出のために処理を要するが、ファイル内容の同一性に基づいて、ファイルを特定することができる。さらに、ハッシュ値によってもファイルを特定できない場合、第3段階の検索では、移行前後のファイルパス情報を比較することにより、ファイルを特定する。このように、本実施例では、複数種類の検索方法を用い、かつ、徐々に検索方法が高度化するように構成している。 【0052】 次に、図8のフローチャートを参照する。図8は、図7中のS34の詳細を示す。この処理では、移行前後のファイルパス情報(以下、ファイルパスと略記)の類似度からファイルを特定する。まず、ファイルパスが類似すると判断するための判定値である文字列数Cを設定する(S41)。比較される2つのファイルパスが文字列数C以上一致する場合は、両ファイルは同一であると判断される。この一致判定用の文字列数Cは、ユーザが手動によって設定することもできるし、または、予め設定された値を用いることもできる。あるいは、移行対象のファイルの性質(例えば、移行されるファイルの総数やディレクトリの深さ等)に応じて、文字列数Cの値を適宜調整してもよい。 【0053】 次に、2つのファイルパスを比較する範囲(サイズ)を決定する。移行前のファイルパス(旧ファイルパス)の長さと、移行後のファイルパス(新ファイルパス)の長さとを比較する(S42)。旧ファイルパスの方が新ファイルパスよりも長い場合は(S42:YES)、検査するパスのサイズを短い方の新ファイルパスのサイズに一致させる(S43)。逆に、新ファイルパスの方が旧ファイルパスよりも長い場合は(S42:NO)、検査するパスのサイズを短い方の旧ファイルパスに一致させる(S44)。このようにして決定されたパスサイズ分だけ、以下に述べる類似度判定が1文字ずつ行われる。 【0054】 比較用の文字を取得するための文字取得ポインタを、新旧の各ファイルパスの末尾にそれぞれセットする(S45)。ファイルパスの先頭から1文字ずつ取り出して比較するのではなく、ファイルパスの末尾から1文字ずつ取り出して比較する。ファイルパスの上位構造は、各システムに依存する性質を有し、一方、ファイルパスの下位構造は、そのファイルを作成または利用するユーザに依存する性質を有するとの前提に立って、ファイルパスの末尾から比較している。もし逆に、ユーザ依存部分がファイルパスの上位構造に位置し、システム依存部分がファイルパスの下位構造に位置するような場合は、ファイルパスの先頭から1文字ずつ取得して比較すればよい。なお、本実施例では、ファイルパスを1文字ずつ比較する場合を例示するが、これに限らず、例えば、単語単位でファイルパスを比較してもよい。 【0055】 文字取得ポインタをファイルパスの末尾にセットした後は、各ファイルパスからそれぞれ取り出された文字が一致する回数をカウントするための判定用カウンタをリセットする(S46)。そして、新ファイルパスの末尾から1文字を取り出すと共に(S47)、旧ファイルパスの末尾からも1文字を取り出す(S48)。そして、各ファイルパスの後から取り出された文字を比較し、両文字が一致するか否かを判定する(S49)。両文字が一致する場合は(S49:YES)、判定用カウンタをインクリメントさせる(S50)。両文字が一致しない場合は(S49:NO)、判定用カウンタをインクリメントさせずS50をスキップする。 【0056】 次に、S43またはS44のいずれかで設定された検査サイズ分のパスについて、全ての文字を検査したか否かを判定する(S50)。全ての文字を比較していない場合は(S50:NO)、文字取得ポインタを次の文字に移動させて(ファイルパスの末尾から1文字だけ先頭方向に移動させて)、S47〜S50の処理を繰り返す(S52)。このようにして、検査サイズ分だけ各ファイルパスの文字列の検査が完了すると(S51:YES)、判定用カウンタのカウント値と、S41で設定された文字列数Cとを比較する(S53)。判定用カウンタのカウント値が一致判定用の文字列数C以上である場合は(S53:YES)、検査されたファイル同士が一致すると判定し、移行先ファイルシステム50内で特定されたファイルに対しACL情報を設定する(S54)。判定用カウンタのカウント値が文字列数C未満の場合は(S53:NO)、両ファイルは異なるファイルであると判断し、ACL情報を設定しない。以上のファイルパスの類似度判定処理を、同一のハッシュ値を有する全てのファイルについてそれぞれ実行する(S55)。同一のハッシュ値を有する全てのファイルについて判定を完了した場合は(S55:YES)、処理を終了する。なお、文字列数C以上の類似度を有するファイルが複数存在する場合は、判定用カウンタのカウント値が大きい方のファイルを、目的のファイルであるとして特定してもよいし、または、管理者の判断に委ねてもよい。 【0057】 図9は、移行先のファイルシステム50内に、同一のハッシュ値を有するファイルが複数存在する場合を示す模式図である。ここで、移行対象のファイルを、図4(a)に示すように、「/folder_c」の「d3.txt」とする。移行元における旧ファイルパスは、「/share/folder_c/d3.txt」となる。図9に示すように、移行先のファイルシステム50では、2カ所に「d3.txt」が存在する。この2つのファイル「d3.txt」は同一内容であり、同一のハッシュ値を有するものとする。なお、ハッシュ値以外の他の一般的な属性(ファイル名、ファイルサイズ、更新日時等)も同一であるとする。 【0058】 1つのファイルのファイルパスは、「/share/current/folder_x/d3.txt」である。もう1つのファイルのファイルパスは、「/share/current/folder_c/d3.txt」である。これら2つのファイルパスを、その末尾方向から先頭に向けて1文字ずつ比較していくと、明らかに、「/share/current/folder_c/d3.txt」の方が「/share/folder_c/d3.txt」と一致する文字数が多い。そこで、「/share/current/folder_c/d3.txt」のファイルが、移行されたファイルであると特定され、「/share/folder_c/d3.txt」に設定されていたACL情報と同一内容(あるいは実質的に同一内容)のACL情報が設定される。 【0059】 このように構成される本実施例によれば、移行対象のファイルを特徴づける情報を移行元ファイルサーバ10側で調査し、移行先ファイルサーバ40では、調査結果ファイル30に基づいてファイルを特定し、ACL情報を再設定するため、異種OS(異種ファイル共有プロトコル)間でファイルが移行された場合でも、自動的に属性情報(ACL情報)を設定することができる。従って、手動検索によってファイルを特定する手間がかからず、円滑かつ速やかにファイルを移行させることができる。 【0060】 換言すれば、本実施例では、(階層記憶構造がそれぞれ異なるファイルサーバ間において、)データファイル本体の移行と属性情報の移行とを分離し、属性情報についてはデータファイル本体の移行後に設定を行うことができる。 【0061】 また、最初は、ファイル名やファイルサイズ等のような一般的な特徴情報(あるいは簡便な特徴情報)に基づいて検索し、この検索によってファイルを特定できない場合のみ、ハッシュ値を算出して、元のファイルのハッシュ値と比較するため、ハッシュ値演算の負荷を低減でき、ファイル特定処理の処理速度を高めることができる。 【0062】 さらに、ハッシュ値の比較ではファイルを特定できない場合、移行前後のファイルパスの類似度を比較してファイルを特定するため、同一内容のファイルが移行先のファイルシステム50に複数存在する場合でも、ファイルを特定することができる。 【0063】 また、本実施例では、ファイル名やファイルサイズ等に基づく第1段階のファイル検索と、ハッシュ値に基づく第2段階のファイル検索と、ファイルパスの類似度に基づく第3段階のファイル検索との、3種類の検索方法を段階的に実行する。また、処理内容が簡単な検索方法の後で、処理内容が高度な検索方法を実行する。従って、移行先ファイルサーバ40のコンピュータ資源を効率的に使用して、検索処理の負担を軽減できる。 【0064】 さらに、ファイルパスの類似度を判定する場合は、ユーザに依存し易いファイルパスの末尾側から検査するため、ファイルパスの先頭側から検査する場合に比較して、より早くファイルを特定することができる。 【実施例2】 【0065】 次に、図10を参照して本発明の第2実施例を説明する。本実施例の特徴は、ファイル名やファイルサイズ等により検索された全てのファイルについてハッシュ値を求め、ハッシュ値による判定を行う点にある。即ち、検索されたファイルが1つのみの場合でも、ハッシュ値が検査される。 【0066】 図10に示すフローチャートのうちS61〜S68は、図7中のS21〜S28にそれぞれ対応するので、説明を割愛する。ファイル名やファイルサイズ等により検索されたファイルが1つ以上存在する場合は(S67:YES)、検索されたファイル数が複数であるか否かを問わず、ハッシュ値を算出する(S69)。即ち、該当するファイルが1つだけの場合でもハッシュ値を算出する。そして、同一のハッシュ値を有するファイルが1つだけの場合は、そのファイルを目的のファイルであると判定し、ACL情報を設定する(S70,S71)。同一のハッシュ値を有するファイルが複数存在する場合は、ファイルパスの類似度に基づいてファイルを特定する(S72)。そして、移行対象の全ファイルについて処理を繰り返す(S73,S74)。 【0067】 このように、ファイル名やファイルサイズ等による第1段階の検索によって抽出されたファイルの全てについてハッシュ値を求めるため、ファイル名等が共通するファイルが1つだけの場合でも、さらにハッシュ値による比較を行って、正確にファイルを特定することができ、ファイル特定の信頼性が高まる。 【実施例3】 【0068】 次に、図11に基づいて本発明の第3実施例を説明する。本実施例の特徴は、同一のハッシュ値を有するファイルが検索された場合に、その重複するファイルをユーザに提示し、重複したファイルの削除を行う点にある。 【0069】 図11に示すフローチャートは、重複ファイルを削除するための処理を示す。本処理は、例えば、移行元ファイルサーバ10から移行先ファイルサーバ40へのファイル移行が完了した後で実行される。 【0070】 まず最初に、図7と共に述べたファイル移行処理中に、同一のハッシュ値を有するファイルが複数検索されたか否かを判定する(S81)。同一のハッシュ値を有するファイルが複数検索されなかった場合は、処理を終了する。同一のハッシュ値を有するファイルが複数検索されたときは(S81:YES)、内容の重複する複数ファイルが移行先ファイルシステム50に存在する場合である。そこで、同一内容であるとして検索された各ファイルのファイルパスをモニタ画面に表示し(S82)、これら表示された重複ファイルのうち、ファイルパスの類似度によって特定されたファイル以外のファイルを削除してもよいかユーザに確認する(S83)。ユーザが、例えばキーボードスイッチやポインティングデバイス等を介して、重複したファイルのうち不要なファイル(最終的にACL情報が設定されなかったファイル)の削除について承諾を与えた場合は(S84:YES)、その不要な重複ファイルを削除し、記憶領域を解放させる(S85)。 【0071】 このように構成される本実施例では、検出された重複ファイルの削除手段(削除ステップ)を備えるため、ファイル移行作業に伴って検出された重複ファイルのうち不要なファイルを削除することができる。従って、無駄なファイルによって移行先ファイルシステム50の記憶領域が圧迫されるのを防止し、ユーザ使用量(QUOTA)を適切に管理することができる。 【実施例4】 【0072】 次に、図12を参照して本発明の第4実施例を説明する。本実施例の特徴は、移行対象のファイルを選択したときに、調査結果ファイル30をバックグラウンドで生成し、移行対象のファイルと同時に調査結果ファイル30を移行先ファイルサーバ40に送信する点にある。 【0073】 図12は、調査結果ファイルの転送処理を示すフローチャートである。まず、ユーザによって移行対象のファイルが選択されたか否かを判定する(S91)。移行対象のファイルが選択されると(S91:YES)、調査結果ファイル30の生成が指示される(S92)。これにより、図6と共に述べた調査結果ファイル生成処理が実行される。次に、選択されたファイルの移動(コピー)が指示されたか否かを判定する(S93)。ファイルの移動が指示された場合は(S93:YES)、調査結果ファイル30が生成されているか否かを判定する(S94)。調査結果ファイル30を生成途中の場合は(S94:NO)、調査結果ファイル30を生成中である旨をユーザに通知し(S95)、待機させる。そして、調査結果ファイル30が生成された場合は(S94:YES)、選択されたファイルと共に調査結果ファイル30を移行先ファイルサーバ40に送信させる(S96)。 【0074】 このように構成される本実施例では、移行対象のファイルと調査結果ファイル30とをペアにして同時に移動させることができる。従って、調査結果ファイル30を移行先ファイルサーバ40に送信し忘れるのを防止することができる。 【0075】 なお、本発明は、上述した各実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【0076】 【図1】本発明の実施例に係わるファイル共有システムの全体概要を示すブロック図である。 【図2】アクセス制御情報の一例を示す説明図である。 【図3】調査結果ファイルの一例を示す説明図である。 【図4】ファイルを移行させた場合のファイル管理イメージを示す模式図であって、(a)は移行元におけるファイル管理イメージ、(b)は移行先におけるファイル管理イメージ、(c)はクライアント側からの見え方をそれぞれ示す。 【図5】ファイルを移行させる場合の全体動作の概要を示すフローチャートである。 【図6】移行元ファイルサーバ側で実行される調査結果ファイルの生成処理を示すフローチャートである。 【図7】移行先ファイルサーバ側で実行されるACL情報再設定処理を示すフローチャートである。 【図8】図7中のS34の詳細を示すフローチャートである。 【図9】同一内容のファイルが複数存在する様子を示す模式図である。 【図10】本発明の第2実施例に係るACL情報再設定処理のフローチャートである。 【図11】本発明の第3実施例に係る重複ファイル削除処理のフローチャートである。 【図12】調査結果ファイルの転送処理を示すフローチャートである。 【符号の説明】 【0077】 10…移行元ファイルサーバ、12…ファイル調査機能、20…ファイルシステム、21…ファイル、30…調査結果ファイル、40…移行先ファイルサーバ、42…ACL情報設定機能、50…ファイルシステム、51…ファイル、121…ACL情報取得機能、122…ハッシュ値演算機能、123…メタ情報取得機能、124…調査結果ファイル生成機能、421…検索範囲設定機能、422…調査結果ファイル取得機能、423…ハッシュ値演算機能、424…ファイル特定機能、425…設定機能、CN…通信ネットワーク
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【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
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【出願日】 |
平成15年9月4日(2003.9.4) |
【代理人】 |
【識別番号】100095371 【弁理士】 【氏名又は名称】上村 輝之
【識別番号】100089277 【弁理士】 【氏名又は名称】宮川 長夫
【識別番号】100104891 【弁理士】 【氏名又は名称】中村 猛
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【公開番号】 |
特開2005−78612(P2005−78612A) |
【公開日】 |
平成17年3月24日(2005.3.24) |
【出願番号】 |
特願2003−312273(P2003−312273) |
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