文部科学省が、2011年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に、「集団自決」(強制集団死)など多くの犠牲者を出した沖縄戦や連合国軍(米軍)の無差別爆撃、原爆投下といった事例を初めて明記することが分かった。正しい史実の継承へ向けて一歩前進であり、歓迎したい。
文科省はこれまで、第2次世界大戦の被害などを小学校の授業でどのように教えるかは一定程度現場の裁量に任せていた。
学習指導要領は、学校が児童・生徒に教えなければならない学習内容など教育課程の最低基準で、ほぼ10年ごとに改定されている。新学習指導要領で日本国民が受けた被害について、学習する機会を充実させるとしている。
昨年3月、文科省は高校歴史教科書から沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)を日本軍が強制したとする記述を削除した検定意見を公表。これに納得しない県民は11万6000人(主催者発表)が9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加し抗議した。
県民大会実行委員会などの要請に対し、渡海紀三朗文科相が「沖縄戦に関する学習がより一層充実するよう努めたい」としていたことの具体的な表れだろう。
学習指導要領の内容を補足する解説書は、文科省が各教科ごとに編集している。教諭の授業指導の指針になっており、教科書もそれを参考に作成されることから、学校現場に与える影響は大きい。
先の大戦で米軍は、沖縄の10・10空襲をはじめ、東京や名古屋などで国際法に反する無差別爆撃を展開。東京空襲では約10万人の市民が死亡したといわれる。広島と長崎に「悪魔の申し子」と言うべき原子爆弾を投下した。これら歴史的事実は、思想的解釈などはひとまず脇に置いて、正確に後世へ伝えていかねばならない。
望むべきは、解説書にとどまらず、小中高校の社会科(日本史)に正確な史実を掲載してほしいということだ。特に「集団自決」に関しては、昨年の教科書検定をきっかけに、危機感を覚えた体験者が重い口を開き「正しい事実を残したい」と体験を語り、手記を残すなどの行動に出た。
教科書検定審議会は、沖縄戦の体験者や研究者の意見を求めることはもとより、沖縄戦の記録を記した県史や市町村史、住民の体験記なども参考にしてほしい。
むろん被害ばかりでなく、日本が行った中国や朝鮮半島などへの戦争加害の事実もきっちりと伝えたい。
きょうという日は過去の上に成り立ち、あすはきょうの結果という。史実は正しく継承されてこそ、確かな未来は約束される。
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