経営破綻(はたん)した英会話学校最大手「NOVA」(大阪市、破産手続き中)の社員積立金流用事件で、同社が資金繰りに窮していた昨年8~9月、計約10億円に上る使途不明の出金が帳簿に記載されていたことが分かった。出金の中には「猿橋仮払い」といった名目での支出もあり、一連の使途不明金については元社長の猿橋望容疑者(56)=業務上横領容疑で逮捕=だけが知っていた可能性が高い。大阪府警捜査2課もこうした金の流れを調べている。
関係者によると、同社の会計帳簿では昨年8月上旬、NOVA口座から約7億円が出金された。同9月ごろには、約14億円の入金がある一方で「猿橋仮払い」として約17億円が支出され、差し引き約3億円の支出超過だった。いずれも原資や使途が不明という。
猿橋容疑者は、社員互助組織「社友会」の積立金を流用したとされる同7月中旬から、株を使った資金調達に傾斜していったが、他の取締役らには知らせていなかった。使途不明の出金も独断で行っていたとみられる。
また、資金調達に絡み、猿橋容疑者らが破綻直前に「駅前留学」の教室などの賃借物件について、億単位の保証金回収に動いていたことも判明した。
関係会社の元社員らによると、NOVAは駅前好立地のビルで教室を展開するため、保証金数億円で賃貸契約することもあった。教室は1000店目前まで増えたが、昨年6月の経済産業省の一部業務停止命令などの影響で賃借料を滞納するようになり、同10月ごろ、滞納額を除いた保証金返還交渉を貸主と本格化させた。猿橋容疑者自身も、賃貸契約のあった大手消費者金融からの返還を目指し、知人に「上の立場の人に口をきいてもらえないか」などと訪ね歩いたという。【田辺一城、山口朋辰、牧野宏美】
毎日新聞 2008年6月26日 15時00分(最終更新 6月26日 15時00分)