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【社説】

日本年金機構 どう引き継ぐ記録問題

2008年7月4日

 社会保険庁の年金部門の後継組織「日本年金機構」が二〇一〇年に発足する。国民が心配するのは、記録問題がうやむやになりはしないかだ。政府は問題解決に向けた展望を明らかにする必要がある。

 政府の有識者会議「年金業務・組織再生会議」が先にまとめた社保庁の解体・再編に関する最終報告書を受けて「機構」設立の基本計画が閣議決定される運びだ。

 年金記録ののぞき見、国民年金保険料の不正免除、さらに年金記録不備問題など相次ぐ不祥事で国民の信用を失ったことを振り返れば、解体して組織をつくり直すのは当然である。

 計画によれば、内部監査機能を強化し、厚生労働省からの腰掛け的な幹部の異動を禁止、電話による年金相談や保険料の納付督励、各種申請書の届け出業務などを民間委託する。遅すぎたぐらいだ。

 職員については、本年度末の正規、非常勤合わせて約二万一千人を「機構」発足時までに一万八千人に減員し、その三年後にさらに一万四千人にまで減らす。

 不祥事で国家公務員法による戒告以上の懲戒処分を受けた約九百人の職員は「機構」の正規職員としては採用せず、有期雇用にとどめ退職金の給付水準も下げる。

 腐敗した社保庁の体質を断ち切って出直すには、正規職員数を限定するのはやむを得ないだろう。

 問題は、この体制で記録問題を解決できるかだ。

 政府が先週公表した資料によれば、厚生年金の紙台帳とコンピューターオンラインシステムに入力されている記録との不一致がサンプル調査の結果、1・4%も見つかった。厚生年金全体で五百六十万件にものぼる計算になる。

 従来の記録問題は、オンライン入力されたまま持ち主不明の記録をいかに基礎年金番号と統合し、給付に結びつけるかだった。

 そのオンラインの記録自体に入力ミスがあることがわかり、紙台帳と一件一件照合して記録の確認・修正を行う必要がでてきた。

 こうした手間のかかる作業を、減員体制の中で、日常業務をこなしながらできるだろうか。

 年金知識が乏しいアルバイトに任せることにも無理がある。

 今のままではいつ作業を終えられるのか全く見当がつかない。

 国民の不満を和らげるあまり人員削減を急いでは、かえって国民が不利益を受けることにもなる。

 政府はどれだけの予算と人員を投入すればいつまでに解決できるかの明確な工程表を示すべきだ。

 

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