オリンピックの季節がまたやって来た。いつも楽しみにしているが、今回は福山ゆかりの平岡拓晃選手(近大福山高出)が北京で柔道男子60キロ級に出場するということで、がぜん力の入りようが違ってきた。
平岡選手の壮行式が六月、同高で開かれ、後輩らを前に金メダルとりを力強く誓った。会見では「ここで過ごした三年間があったからこそ、今がある」と振り返り、持ち味のスピードを生かし、「常に攻めている状況をつくり、自分の柔道をやりたい」と語った。
近大福山高時代に国際大会を経験し、「高校でオリンピックを意識し始めた」という平岡選手。同高柔道部関係者は、当時から技の切れ、スピードは抜群で、神経の図太さに舌を巻いたという。厳しい指導に耐えかね、一度だけ実家に逃げ帰ったこともあった。同級生は、柔道に打ち込みすぎて、一時的に“切れた”のではと推測する。今でもそうだが、減量には当時から苦しんでいたそうだ。
オリンピックの柔道で印象に残るのは、力が充実していた時のモスクワがボイコットとなりロサンゼルスでけがをしながら頂点に立った山下泰裕選手の万感の涙、日本の選手が次々敗れる中で最後に金を取って号泣したソウルの斉藤仁選手、シドニーの井上康生選手の亡き母にささげた金…ときりがない。
日本のお家芸・柔道だけに勝って当たり前というプレッシャーの中で戦う壮絶さは想像を絶するものがあるだろうが、皆の応援を力に代えて、頑張れ! 平岡選手。熱いドラマを期待している。
(福山支社・鳥越聖寿)