シャンソン歌手の石井好子さんが、フランスの革命記念日(七月十四日)にちなみ、シャンソンの祭典「パリ祭」を東京で始めたのは四十五年前だ。
パリから帰国後、夢に思い描いて立ち上げたコンサートは今も続き、日本の七月はシャンソンの季節として定着した。当初は日比谷野外音楽堂で行われ、加藤登紀子さんらを世に出す場ともなった。
全国各地で開かれるこの催しを岡山に誘致したのが、昨年十月に急逝した岡山市出身のタレント木原光知子さんだ。石井さんを「東京のお母さん」と慕う間柄だった。「岡山でもぜひ」と頼んで始め、自ら司会を務めた。ふるさとへの感謝の気持ちだったのだろう。
今年で十七回目を迎える「岡山パリ祭」が十八日、岡山市の岡山シンフォニーホールで開かれる。石井さんや菅原洋一さんらおなじみの顔触れに加え、木原さんと親しかった谷村新司さんが岡山だけの特別ゲストとして出演する。チケットは完売だそうだ。
「人生を重ねていないと味が出ない。歌手一人ひとりが一冊のシナリオができるような体験をしていて、歌によって涙があふれたり、勇気づけられたりする」。木原さんは生前、シャンソンの魅力をこう話していた。
木原さんへの追悼の思いを込め、今夏はシャンソンに浸ってみようか。